【QUESTION】親が「自宅で死にたい」と言うのですが可能ですか?
高齢者の半数以上が「最期は自宅で迎えたい」と考えている(内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」平成19年)。実際には多くが医療機関で亡くなっているが、厚生労働省の推定(図参照)によれば、今後は病院でも、自宅でも、介護施設でも死ねない人が増え続け、2030年には年間47万人に達するという。
「国は、民間の高齢者向け住宅を増設して受け皿づくりを図っていますが、死亡者の増加に追いつく気配はありません。『どこで死ぬか、どこで看取るか』を考えておかなければならない時代になっているのです」(おちさん)
本人が納得した最期を迎え、看取る側も後悔しないためには、本人の意識がはっきりしているうちに意思や望みを確認し、財産記録や死亡時の連絡リストなどとあわせて「エンディングノート」にまとめておくといい。
「特に終末期医療に対する意思は看取りの重要な課題です。家族はともすると『できるだけのことをしてください』と言いたくなります。その気持ちは当然でしょうが、それが本人にとっていいことなのかは別問題です」(おちさん)
医療技術が進歩した今日、人工呼吸器につないだり、胃ろうやIVF(高カロリー輸液)点滴などの経管栄養を用いたりすれば患者を「生かす」ことは可能だ。だが、衰弱した体には負担が重く、辛い時間が長引くことにもなる。
「終末期にはこうした治療法が次々と提案され、家族はその都度決断を迫られます。本人の意思を記した『リビングウィル』はもちろん、細かな治療法についても本人の確認をとっておくことが大切です」(おちさん)
一般的にはこうした状況を迎える前に、長い介護生活がある。治療を伴う介護の場合は在宅では限界があるので、医療ケアの手厚い介護療養型医療施設や病院・診療所併設のサービス付き高齢者向け住宅、医療スタッフ上乗せの介護付き有料老人ホームなどが安心だ。
「どこで介護・医療サービスを受けるにしても、終末期は介護休業制度などを上手に利用して、残された時間を一緒に過ごしてほしいと思います」と話すおちさんは「逆在宅」を勧める。死期が迫ってきたら、医療・介護施設などの入所先から自宅に引き取って、訪問看護・介護のプロの力を借りながら家族で看取るやり方だ。死亡時には医師の「死亡診断書」が必要になるため、在宅での看取りの場合、24時間往診ができる「在宅療養支援診療所」の医師との連携が欠かせない。
「どんな医療・介護のプロであっても、家族の代わりに心のケアはできません。看取りは命のバトンをつなぐ大切な瞬間です。親との最期の時間は無形の遺産だと考えて、しっかり受け取ってほしいですね」(おちさん)
【ANSWER】介護は施設、最期は自宅。「逆在宅」がおすすめです。
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ジャーナリスト・高齢者問題研究家 おちとよこ----------