来春に公開されるドラえもんの新作映画が、『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』となることが明らかになった。1989年に映画版ドラえもん10作目として製作公開され、400万人を超えるシリーズ最高の動員数を記録した『のび太の日本誕生』のリメイクとなる。
『のび太の日本誕生』は、家出を企てたのび太たちが、空き地は私有地、裏山は国有地で「行き場がない」と嘆くところから始まる。そして、人がいない時代へ行けば、あらゆる土地が使い放題だと思い立ち、タイムマシンに乗って7万年前の日本へ向かう。
しかしその時、時空のゆがみが発生し、7万年前に中国大陸にいた原始人の子ども「ククル」が現代へ放り出されてしまう。原始時代から現代へ戻ったのび太はククルと出会った。そして「翻訳こんにゃく」を食べ、意思の疎通が可能になったのび太たち。ククルはヒカリ族の村で暮らしていたが、北方から攻め入ったクラヤミ族に村を破壊され、家族や仲間を人質に取られていることを知る。クラヤミ族を取り仕切るギガゾンビは、嵐や雷を自由に操り、人々を威嚇し、村を蹂躙していた。しかもその正体は、未来から訪れ高度な科学技術を悪用する時間犯罪者であった。このギガゾンビの圧政に、ククルとのび太たちが立ち向かっていくというのがストーリーの骨子だ。
アニメ『ドラえもん』を語るブロガーやネット民たちの意見の中には、真偽は別として、放送された内容から左翼的思想を見出す者も少なくない。あえてそうした目線で見返すと、『のび太の日本誕生』には反ネトウヨ、反ヘイト映画的要素がないとはいえないのだ。
まず、「製作スタッフ」を見るとさまざまなことに気が付く。
原作-藤子・F・不二雄
監督・脚本-八鍬新之介
制作-藤子プロ、小学館、テレビ朝日、シンエイ動画、ADK、ShoPro
配給-東宝
■制作スタッフは左翼!?
さて、まずは制作である。そもそも中心になっているのがテレビ朝日だ。テレビ朝日といえば、朝日新聞とグループ関係を結んでいるテレビ局で、『報道ステーション』をはじめ「反ネトウヨ・反ヘイト」的な報道を行っていることで知られる。その一方で、ネトウヨに対して厳しい論調ながらも、ほぼ同様の活動を繰り広げいる反原発デモや沖縄での運動家たちは擁護するという「ダブルスタンダード」を行っている放送局でもある。
だが、『ドラえもん』がテレビ朝日で放送されたというだけでは、この映画が「反ネトウヨ・反ヘイト」と認定するのはかなり無理がある。そこで、次に注目したいのが「シンエイ動画」だ。「シンエイ動画」はアニメーション制作の老舗で、『巨人の星』や『ルパン三世』『ど根性ガエル』などを手掛けている。しかし、2003年にテレビ朝日が資本参加し、2010年には100%子会社になった。つまり、今は社長がテレビ朝日から天下りできる状態なのである。現在の社長である梅沢道彦氏は、テレビ朝日からの出向で、アニメーションによる反戦や反政府・親中親韓を訴える手法を行ったことで有名になった人物である。2007年には、『戦争童話 二つの胡桃』を終戦の日である8月15日に放送し、物議をかもしたこともある。このように考えれば、テレビ朝日の別動隊で、アニメーションを通して「反ネトウヨ・反ヘイト」の陰謀を画策するのが「シンエイ動画」ではないかというような疑問が生まれてくる。
そして今回リメイクされる作品の監督は、八鍬新之介だ。1981年生まれの彼は「シンエイ動画」の出身で、2005年から『ドラえもん』の映画製作班に入っている。そして、彼の母親は八鍬祐子という帯広教育委員会の教育長だ。
北海道教職員組合、いわゆる北教組は、反自民として有名で、なおかつ選挙でもさまざまな事件を起こしている。民主党の小林千代美(北海道第5区選出)の選挙運動の中核となり、札幌地検が「政治資金規正法第21条違反の疑いがある」として、組合本部や選挙対策委員長を務めた本組合委員長代理の自宅マンションなどへの家宅捜索を行ったほど、民主党との関係が密接だ。
北海道教職員組合は、2008年11月28日に機関紙「北教」で、「文科省が中学校歴史の解説書に『竹島(独島)の領有権』を明記したことは、韓国にとっては、侵略・植民地支配を日本が正当化する不当極まりないものになるのです。歴史事実を冷静に紐解けば、韓国の主張が事実にのっとっていることが明らかなだけに、事は極めて重大です」と非難するなどした。また2010年3月には、国旗・国歌の一方的な入学式や卒業式への実施に反対する立場を取り、「『日の丸君が代』強制に反対するとりくみについて」というマニュアルを配布していたことが発覚。当時の川端達夫文部科学省が注意しても、活動が続けられたといった経緯もある。
教育委員会と北教組はまったく違うという人もいるだろうが、その教育委員会は平成27年の活動方針の中で「小学校における社会科副読本の活用や、社会教育施設と連携した郷土体験学習、自然体験学習などを通じて、ふるさとの自然や産業、アイヌ民族の文化や歴史に関する学習を充実させます」と、民主党や共産党と同様の主張を行い、さらに「副読本で小学校教育に取り込む」としているため、北教組と全く変わらない。ちなみに、沖縄県における琉球独立論も、教育委員会による「琉球民族の独自性」を主張することから始まったことを考えれば、今後このような教育がどのように発展するかは心配である。
2005年5月の十勝毎日新聞社のコラム「なるほど十勝」の中には「帯広・十勝の中学生はいつから、なぜジャージーで通学しているのでしょうか。」という記事が出されており、その中で『市内の元中学校長(61)は、「帯広の教職員組合は、北教組(北海道教職員組合)の中でも御三家といわれるほどの組織力を持っていた。組合員(教職員)の中からは、詰め襟の学生服は海軍の軍服を連想させるから廃止すべきという声が上がっていた」と説明する』とある。まさに、教育委員会と北教組の連携が見て取れるのである。
これらのことから、映画を見ると、さまざまな点が気になり始める。
■起源説をひとつにする誘導も?
原始時代へ戻ったのび太たちは、ドラえもんのひみつ道具で作り上げた空飛ぶ動物に乗って中国大陸へ向かう。途中、海の上を飛ぶため疲労困憊に陥るのではないかと心配するのび太にドラえもんが渡した地図は、日本列島と朝鮮半島、中国大陸が地続きになったものであった。
物語の舞台となる7万年前は氷河期であり、海水が凍り水位が下がったため、日本と大陸は地続きとなっている。後に温暖化が進み、水位が上昇することで現在の日本列島の形ができあがるのが、およそ1万3千年前である。そこから日本史に描かれる縄文時代が始まる。
海が干上がり、大陸とつながった場所を眺めながら、ハンバーガーを食べるククルとのび太たちの間で以下のような会話が交わされる。「日本人の先祖って氷河期にここを通って中国から引っ越してきたんだ」という会話にはじまり、何万年も朝鮮やシベリア、南の島なんかからも移住してきたらしいという会話が繰り広げられる。
本来ならば、日本人の起源に関しては、「南方海洋民族説」「騎馬民族説」のふたつが存在している。にもかかわらず、片方の学説しか取り入れず、しかも中国や韓国が言う「日本王の家(皇室)はこちらから渡っていった家なので、我々の下だ」という主張に合わせて、アニメーション映画を作ること自体が、まさに、朝日新聞や北教組の考える内容を「ドラえもんを通して刷り込む」という陰謀が入っていることが推測されるポイントだ。
民主党政権崩壊以降、安倍政権は抜本的な教育改革を行い、同時にネトウヨも日教組に対して強い攻撃をしかけ始めた。それに対抗すべく、ドラえもんの中に自分たちの主張を入れて、反ネトウヨ・反ヘイトの陰謀をめぐらし、そして今、公開に至るのではないだろうか?
では、そもそも原作者の藤子・F・不二雄はどうなのか。もちろんすでに亡くなってしまっているので、何とも言いようがない。しかし、『のび太の日本誕生』には最後にこんな台詞がある。
「みなさん、よかったら僕らの国へ来ませんか。ギガゾンビも手の届かない楽園です」(ドラえもん)
藤子・F・不二雄の言葉、そこには他者を受け入れる寛容さが描かれている。ドラえもんが言う「僕らの国」が指すものは、自然が豊かで争いごとのない平和な国「日本」であることは言うまでもない。来春公開される映画のラスト、「みなさん、よかったら僕らの国へ来ませんか」という台詞が残っているのかどうか......? 子どもに愛される素晴らしいシリーズだけに、注目していきたい。
※イメージ画像:テレビ朝日「ドラえもん」公式サイトより