戦後70年を迎えて発表された安倍談話は、最も口うるさい韓国にどのような影響を与えたのだろうか? 読売新聞によれば、与党のセヌリ党が談話を肯定的に捉えており、また「韓国主要紙で対日関係の改善を求める論調が多くを占めた」という。
確かに、8月15日に行われた「光復節演説」でパク・クネ大統領は、「昨日発表された安倍総理の戦後70周年談話は、私たちとしては残念な部分が少なくないのが事実です」と前置きしながらも、歴代内閣の立場を引き継いだことは評価している。だが、韓国の世論はあくまで否定的だ。
実際に15日、ソウルの駐韓日本大使館前では、安倍首相の戦後70年談話文に向かって、靴を投げるパフォーマンスも。安倍談話の全文が掲載された大きな掲示物には、「植民地支配、侵略戦争、謝罪なき安倍談話」という大きな文字が上書きされ、その不満を爆発させたわけだ。
保守主要紙以外の韓国メディアでも、批判的な論調が目立つ。世界日報は、「米政治圏“安倍談話に失望”、米政府と違う反応」という記事を掲載。米政府は安倍談話を歓迎したが、「米の政治家や北東アジア問題専門家たちは談話の内容を酷評した」と報じて、彼らの声を紹介している。「安倍総理が去る4月の米上・下院合同演説のときよりも、より明確で直接的な用語で歴史問題を解決することを最後に期待したが、その期待が充足されなかった」「それほど驚くことでもないが、安倍総理の談話が日本軍の性奴隷を強要された20万人の慰安婦被害者に対する明確な謝罪の意を伝えることはなかった」などと、米政治家のコメントを伝えた。
ハンギョレ新聞も「安倍談話に隠された“危険な歴史観”」という関連記事を掲載して、「談話が間接的であれ反省・謝罪したのは満州事変から太平洋戦争につながる“昭和の戦争”だけで、朝鮮を強制併合する過程で行われた“明治の戦争”については、むしろ美化した。談話は“昭和の戦争”相手だった米・中に対する遺憾表明ではあっても、韓国に対する謝罪ではなく、韓半島(朝鮮半島)強制併合を正当化しようとする危険な歴史観を隠している」と非難している。
また京郷新聞は、「日王(天皇)初“戦争に深い反省”、安倍とは対照的」という関連記事を報道。日本主要紙が安倍談話をどう評価したかを報じながら、15日の「全国戦没者追悼式」における天皇の発言を紹介。「明仁日王が戦没者追悼式で“さきの大戦に対する深い反省”という言葉を使ったのは初めてのこと」と強調している。
もちろん、韓国の野党も安倍談話に批判的だ。安倍首相の靖国神社参拝に反対するために来日したこともある、イ・ジョンゴル議員は、「安倍談話は巧妙な文章の裏に本心を隠した談話だった」とし、「戦争被害者に対する哀悼という表現があるが、植民地被害に対するものではなかった。日本は反省と謝罪をしたとするが、それは一般的な主張にすぎず、その主張に戦争被害者や被害国は同意できない」などと指摘した。
日本では安倍談話を支持する声が多いようだが、隣国・韓国ではどうも否定的な世論が目立つ。「談話をきっかけに日韓関係が悪化する事態は避けられた」(読売新聞)と判断するのは、若干早いのかもしれない。