ニセ札にニセATM、ニセ大学、ニセ警察と、当サイトだけでも中国のさまざまなニセモノのニュースをお伝えしてきたが、ついにというか、やっぱりというか、8月に入ってニセ銀行のニュースが飛び込んできた。
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中国東部にある山東臨沂市の田舎町で7月下旬、爆竹とともに「中国建設銀行」の支店が華々しくオープンした。中国建設銀行はメガバンクで、中国四大商業銀行の一つ。中国各地はもちろん、東京にも支店があり、香港市場に上場しているほどの大銀行だ。
オープンしてすぐに、地元の男性が事業費4万元(約80万円)を窓口で預けたのだが、後日引き出そうとすると、「今日は本店から金の供給がない」という理由で、金を受け取ることができなかった。
後日、どうしても金が必要になり、中国建設銀行の別の支店に行ってみると、4万元を預けた時の預り証がニセモノだったことが判明。銀行が警察に通報すると、田舎町の支店がニセモノ銀行であることが発覚し、オープンから半月とたたないうちに、支店長を名乗っていた男が逮捕されたのだった。
警察がニセ銀行を調べてみると、銀行の看板から窓口、紙幣カウンター、パソコン、プリンター、監視カメラ、はたまた偽札を見分ける方法を伝えるポスターまで、素人には見分けがつかないほど本物の銀行とそっくり。
取り調べに対し犯人は、看板やハンコなどは手作りで、このニセ銀行をつくり上げるのに、たったの4,000元(約8万円)しか使っていないと供述。窓口にいた女性行員たちは犯人の娘とその同級生たちで、にわかには信じがたいが、彼女たちはてっきり本物の銀行に勤めているのだと思っていたという。
それにしても、たったの8万円でニセ銀行を“開設”できてしまうとは、さすがニセモノ大国である。
ちなみに、このニセ銀行で被害に遭ったのは、最初の男性たったひとりだったという。オープンした場所が田舎すぎて、金を預ける人がいなかったのだろうか。
このようなニセ銀行事件は、実は今年1月にも南京で摘発されている。こちらはさらにスケールが大きく、1年間で約200人から合計2億元(約39億円)もの預金をだまして取っていたという。
このニセ銀行の場合は、上記の事件のような大手銀行の名前をかたらず、「南京盟信 農村経済情報専業合作社」というオリジナルの地味な名前。銀行内部は本物そっくりで、ホームページまで持っていた。
そんな無名のニセ銀行がどうやって預金を集めていたかというと、通常の定期預金の金利3.3%に加え、さらに週2%の金利を加えることをうたっていたという。結局カモになったのは、欲の皮が突っ張りすぎて、よく調べもせずに虎の子の金を預けた人たちだったというわけだ。
新たなニセモノ出現は、まだまだ続きそうだ。
(文=佐久間賢三)