昨年、上海の食肉業者から納入された賞味期限切れの“ゴミ鶏肉”を使用していたとして、マクドナルドやピザハットとともに信頼が大きく失墜した中国ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)が今月、起死回生の商品を投入したという。
<画像はこちら>
その名も「ローズ・チーズ・ローストチキンレッグ・バーガー(玫瑰芝士烤鶏腿堡)」と「ブラック・ダイヤモンド・ベーコン・スパイシー・チキンレッグ・バーガー(黒鉆培根辣鶏腿堡)」。バラ色と黒という、商品写真からしてまったくもって食欲の湧かないこの商品だが、そこは全国に4,000店舗以上を展開する中国最大の外食チェーンだけに、自信があるに違いない。早速、実食してみた。
商品写真と実物が乖離しているのは中国のレストランではよくあることだが、ローズ・バーガーはかなり開きがあった。提供された商品は作ってからだいぶ時間が経過しているようで、パンはパサパサ。まるで蒸しパンのようだ。パンだけで食べてみたが、バラの風味はまったく感じられない。よくよく商品説明を見てみると、「ピンク色の美しい花をかたどったパンを焼き上げた」とあるだけで、バラを使用しているとはひと言も書いていない。味付けはニューオーリンズ風味となっているが、中の肉は、レギュラーメニューにあるニューオーリンズ・バーガーのそれそのものだ。そこに、マヨネーズがパンからはみ出るくらいふんだんにかけられ、世の中の健康志向とは真逆を行く高カロリーバーガーに仕上がっている。
ブラック・バーガーはパンがふっくらしているので幾分マシたが、メキシコ風のチリソースがたっぷり塗られ、辛いものが苦手の人にはきつい。中のフライドチキンは、やはり既存メニューのものを使っている。衣が厚くてかなり脂っこいのだが、ベーコンがプラスされることで、そのしつこさは倍増している。
ブラックはそれなりに好評のようで、品切れ店も多く、3軒目でようやくゲットすることができた。一方、ローズはどの店にも置いてあり、在庫がダブついているようだ。
筆者が気になったのは、一体どんな着色料を使用しているのかということ。箱の容器には「天然の色」と強調されているが、本当かどうかは怪しい。食品不信高まる中国で、バラ色と黒というドぎつすぎる着色は、逆効果に思えるが……。
旧暦の七夕に当たる8月20日は、中国では「情人節」といわれ、男性が恋人に花やプレゼントを贈るバレンタインのような日。企業にとっては商戦となるわけだが、KFCはそこを狙って、この限定メニューを打ち出したようだ。しかし、KFCの店舗がロマンチックな場になりうるのだろうか? KFCによく行くという、日本人の主婦(36)はこう説明する。
「KFCの多くの店舗には子ども用の遊び場が設けられ、家のエアコンを使いたくない人が、子どもや孫を遊ばせながらダラダラと涼んでいる姿を多く目にします。子どもが騒いでも注意する大人は皆無で、恋人同士がロマンチックな時間を過ごす場所とは思えません」
ゴミ鶏肉事件以来、低迷を続けている中国KFCだが、今回の新メニューは起死回生に結びつくとは言いがたい。さらに気の毒なことに、中国では大した話題にすらなっていない。KFCの迷走は、しばらく続きそうだ。
(取材・文=中山介石)