テクノロジーが取り払う、障がい者と健常者の垣根

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まさにテクノロジーキモ

2020年に迫る東京オリンピック、来たるべきその日が待ち遠しいのは間違いありません。これにともない開催がおなじみとなったパラリンピック。さまざまなレベルで障がいを持った世界中のアスリートたちが、オリンピック同様にメダルを競います。

そんな中ある日、オリンピアンに勝るほどのパラリンピアンが登場し、きっとこんな議論が交わされるんで「果たして彼は障がい者にカテゴライズすべきか?」と。今回の「無限大(mugendai)」を読んでいると、「そんなことが起こってしまうの?いや、ホントに起こるかも!」とそんな信じられない現実を垣間見ることができるんです。

足がないことでの運動機能低下は技術で補える


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「無限大(mugendai)」で、2020年の東京パラリンピックは「そんな議論が起こる最初の機会であってほしい」と語るのは、ソニーコンピュータサイエンス研究所(以下、ソニーCSL)の遠藤謙さん。現在は義足研究の第一人者として国内外を問わず活動領域を広げています。

もともとロボット工学を志していた遠藤氏。後輩の足の切断という出来事と、ロボット技術を応用した義足を研究しているマサチューセッツ工科大学(以下、MIT)のヒュー・ハー教授との出会いが重なり、義足研究のスタートとなったそうです。そして2004年にはMITに入学し、ハー教授の元で学ぶことになります。

遠藤さんによれば、ハー教授から「ロボット技術に対するポジティブな姿勢ですね。足がないことにともなう運動機能の低下は、技術で必ず補える考え方」を学んだことがもっとも大きかったと語ります。

技術、そう「テクノロジー」のことです。今では軽量化と価格という大きなハードルを乗り越えるべく、ロボット工学の技術を応用したロボット義足の研究に取り組んでいる氏。同時に途上国向けに安価な義足に生産にも携わったいるそうです。

介護分野のアシスト器具まで徐々に汎用化させたい


そんな安価な義足の生産に協力しているのが、訳あって知り合った、国内はおろか世界でもほとんど類を見ない「股義足」(股関節部を離断)アスリートとして注目を集める野田隼平さん。

安価で製作しなければならない途上国の義足事情や、厳密に見ると自分のクラスは競技人口が1人になってしまう、パラリンピックにおけるクラス分けの難しさなど、普段我々が知ることができない義足について、「無限大(mugendai)」で語っています。

元陸上のオリンピック選手である為末大さんらと株式会社Xiborg(サイボーグ)という会社を立ち上げ、競技用義足の研究開発に取り組んでいる遠藤さん。

「障がい者は技術が未熟だから障がい者なのであって、体をサポートする技術が十分であればもはや障がい者とは呼べない」というハー教授の理論を展開し、「障害の度合いが高ければ高いほど、テクノロジーが介入しうる余地もそれだけ大きい」と今後の義足テクノロジーについて語ります。

F1のコアな技術が民間乗用車の技術を高くしているように、「ロボット工学で培った義足のコアな技術を医療やスポーツの現場で応用しながら」、スポーツパフォーマンスの向上、強いては介護分野におけるアシスト器具まで徐々に汎用化させたいという遠藤氏。「無限大(mugendai)」を読んでいたら、2020年の東京パラリンピックで、テクノロジーがホントにありえない勝負を見せてくれる、そんな気がしてきました。


source : 無限大(mugendai)

(ホシデトモタカ)