こんにちは。日本と欧米の優れた点を取り入れたしつけを提唱している平川裕貴です。
「叱らない子育て」は将来の成功に結びつくのか。親にとって都合のいい“子育て論”の落とし穴
皆さんは、子どもと一緒にいる時に、「いいお子さんですね」とか「お宅のお子さんはよくおできになるから…」などと他の人から褒められた時、どんな返事をしていますか?
おそらく、「いえいえうちの子なんて…」とか「とんでもない。全然できませんよ」などというような返事ではないでしょうか?
いつもいつも親が子どもの前でこんな風に答えていたら、たとえ本心で言っていなくても、子どもの心には刷り込まれてしまいますよね。
「自分は全然ダメなんだ…」と。
世界のママたちは、どう返事する?
世界のママたちは、どう返事する?
さて、もう30年近く前になりますが、私は外国人講師を使った子どものために英会話教室を経営して、大学生や大学を卒業したばかりの若い外国人を採用していました。
彼らは、だいたい1年の滞在で帰国することが多かったのですが、中にはその間に親が日本に遊びに来るということもありました。
オーストラリアのママの場合
ある時、オーストラリア人のリエンという若い講師の母親が、娘が日本にいる間にと来日しました。
休暇を取ったリエンが母親を連れて教室にやってきたので、私は挨拶をかわし、「彼女がとても真面目でよくやってくれている」と母親に話しました。
「いえいえ、ふつつかな娘です」などという母親からの返事を予想しながら…
でも、その時のリエンの母親の返答に私は少なからず驚きました。
彼女はこう言ったのです。
「ええ、リエンはとってもいい子です。私は彼女を誇りに思います」
“I’m proud of her.”
当時の日本では、自分の子どもが他人から褒められた時に、「ええ、うちの子はいい子です」と肯定するような親は100%と言っていいほどいなかったでしょう。
ですから、私は、リエンの母親の予想に反する答えに衝撃を受けたのでした。
でも、きっとそれはリエンの母親だけなのだろうと、その時は思っていました。
アメリカのママの場合
その後、今度はアメリカ人のエイミーの両親が日本にやってくることになり、食事に招待することにしました。
レストランにやってきたエイミーの両親に、やはり「エイミーがとっても真面目で子ども達にも人気のあるいい先生だ」と話しました。
すると、エイミーの両親も「そうだと思います。彼女は素晴らしい子です。私達は彼女を誇りに思っています」と答えたのです。
耳の残ったのは、やはり ”I’m proud of her.” という言葉でした。
それ以来、意識して見聞きしているとアメリカ人もカナダ人もオーストラリアやイギリス人も、自分の子どものことをよく ”I’m proud of him.” とか “I’m proud of her.” と言うことに気付きました。
しかも、他人から褒められた場合だけでなく、本人に向かって直接、”I’m proud of you.”と言って褒めることも多いのです。
日本の親は、まず言いませんよね。
「ええ、うちの子はいい子です。私はこの子を誇りに思っています」とか「あなたを誇りに思っているわ」なんて。
返事に現れるのは親の「○○○○」
返事に現れるのは親の「○○○○」
謙遜を美徳とする日本の文化ですから、もし、よその子を褒めて「ええ、私もそう思います」という返事がその子の親から返ってきたら、褒めた方も一瞬戸惑うかもしれませんね。
でも、私は、欧米の親が自分の子どものことを謙遜することなく、人前で堂々と褒めるのだということを知ってから、“I’m proud of her (him you).” が、とっても素敵な表現だなと思うようになりました。
この表現は、単に子どもを褒めるというだけでなく、あなたを育てたのは親である自分なのだと暗に伝えていますよね。
子どもを褒めると同時に、親自身のプライドも感じられる表現です。
未来の危機!? 世界に比べて、若者の「意欲」が低い日本
今日本では、若者の自己肯定感が、世界の他の国の若者に比べて低いことが問題になっています。
内閣府が平成25年に行った、7か国の満13歳~29歳の若者を対象とした意識調査によると、日本の若者は、「自分自身に満足している」が他国の若者に比べてとても低く、逆に、「悲しいとか憂鬱だと感じたことがある」の割合が高かったのです。
また、「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」という割合は低く、「つまらない、やる気が出ないと感じたこと」があるという割合がとても高いのです。
このことは、日本の若者が、「自分には価値がある」という自尊心や自己肯定感が持てず、若者らしい夢や希望、チャレンジ精神や意欲に乏しいということを表しています。
日本の若者の自己肯定感が乏しいのは、日本の文化や社会や教育の在り方など、様々な原因が考えられますが、親の在り方もその一つかもしれないのです。
一番身近な存在である親に認めてもらえるのが、子どもにとっては何よりも大きな励みになるはずです。
もし日本でも、親達が「お陰様でうちの子はいい子に育っています」とか「誇りに思っています」と、子どもの前で言うようになれば、日本の若者の自己肯定感ももう少し高くなるかもしれません。
まずは簡単な言葉から
まずは「ありがとうございます」から
いかがですか?
社会全体で意識を変えていきませんか?
せめて、褒められたら「ありがとうございます」と言ってみてはいかがでしょうか?
これは、間接的に肯定しているようにも聞こえますから、子どももきっと内心喜ぶと
思います。
参考:内閣府『今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~』