女優の常盤貴子が22日、都内で行われた映画『向日葵の丘 1983年・夏』の初日舞台あいさつに出席。主演作そっちのけで塚本晋也監督の最新作『野火』をアピールし、共に登壇した田中美里、藤田朋子、芳根京子、藤井武美、百川晴香、太田隆文監督をあ然とさせた。
本作は、日本版『ニュー・シネマ・パラダイス』といった趣の作品。1983年のバブル景気前夜、田舎町で青春時代を過ごしながら、町を巻き込んで8ミリ映画を作り、友情を深める女子高生3人組。その後、悲しい出来事が起こり、離れ離れになった3人が、30年後に故郷で再会を果たす姿が感動的に描かれる。
開口一番、「この間、塚本晋也監督の『野火』という映画を観たんですけど」と語り始めた常盤は、「今、よくぞ撮ってくださったという、戦争を追体験できるような素晴らしい映画だったので、皆さんぜひご覧になってください」と力強くアピール。「宣伝!?」と驚く太田監督に、「本当によかったから、きっと映画がお好きな皆さんがお集まりだと思ったので、これを伝えておきたいと思った」と釈明する常盤だが、突然の出来事に会場はのっけから爆笑に包まれ、大いに盛り上がった。
その後、撮影時の苦労などエピソードを語る面々だが、常盤だけは終始『野火』の話に徹し、再び口を開くと『野火』を話題に出した理由を説明。常盤は、「わたしたちは戦争を知らない世代で、戦争体験のある方々が少なくなってきてしまった。それに、そのこと(戦争)を知らないといけないのに、それは体験だから知ることはできない。でも『野火』は、さも自分が戦争を体験したかのような気分になって映画館を出ることができる」と力説。
しかし、この話は本作を語る上でのリードであり、常盤は「映画は、その時代を知らなくてもその時代に連れて行ってくれる力がある。だから、この『向日葵の丘』も80年代を知らない人を80年代に連れて行ってくれて、80年代を知っている世代の人はその時代を懐かしむことができると思った、ということが言いたかった」と吐露。そして「それだけ映画ってすごいものだなと実感した」と映画が持つ魅力に触れると共に、『野火』に負けず劣らずの本作に自信を見せた。(取材・文:鶴見菜美子)
映画『向日葵の丘 1983年・夏』は公開中