バンドからメンバーが脱退する際の、最も一般的な理由はおそらく「音楽性の違い」だろう。しかし現在、「ベーシストがバンド活動より女性関係を優先したため」という理由で、ベーシスト以外が全員脱退したビジュアル系バンドが話題になっている。
そのバンドとは「アポロ計画」。4月から始動し、今月5日にファーストシングルを発売したばかりだった。オフィシャルブログによると、ベーシストと女性との関係が原因で「バンドや会社の情報流出」「会社の売上金の管理問題」などの問題が起こっているという。それでもベーシストは女性との関係継続を望み、これ以上のバンド活動は困難と判断したようだ。
アイドルグループの場合、「解雇理由」として“ファンとつながりを持ったため”など詳細が明かされることは少なくないが、バンドで女性問題が原因だと公表されることは珍しく、ネット上では「バンドは知らないけど、理由に笑った」「ここまで明かすなんてすがすがしい」と注目を集め、バンドにそれほど知名度がないにもかかわらず、スポーツ紙でも報じられるほどの騒ぎになっている。
ただ、メンバー1人を残して全員脱退するという事例は、ビジュアル系界隈では前例があるようだ。事情に詳しいライターは、こう話す。
「『彩冷える』はボーカルを残して全員脱退しています。その後、抜けたメンバーだけで新バンド『AYABIE』を結成。脱退の事情は明かされませんでしたが、ボーカルが『大人げなく涙が止まらなかった』とコメントしていることから、ファンの間では『いじめでは』と話題になりました。また、ボーカリストのKAMIJOが初めて結成したバンド『LAREINE』も、KAMIJO以外は全員脱退。その後、結成した『Versailles』も紆余曲折を経て活動休止したのち、KAMIJO以外のメンバーでバンドを結成。“2回もハブられたボーカリスト”として、もはや伝説のように語られています」
バンドにモメ事はつきものだが、中でもヴィジュアル系はモメやすい傾向があるようだ。
「V系は普通のバンドよりコンセプトが重要なので、そこで衝突が生じやすいんです。またビジュアルの問題もあって、今のスタイルのままでいつまでも続けたいという意識はほかのバンドマンより薄いですし、自分たちの“寿命”にも敏感。我慢してひとつのバンドにこだわるより、衣装やメイクが似合ううちにさっさと別のバンドで好きなことをして成功したい、という意思が強いんだと思います。また、いわゆる“バンギャ”と密な交流をすることも多いので、それが原因となることも多いのでしょう。地下アイドルのグループでは“太客”をめぐってメンバー同士が争うことが珍しくないようですが、それと同じ構造がV系バンドにもあるのかもしれません」(同)
アポロ計画は今後、ベーシストひとりで活動していくという。ほかのメンバーの動向は知らされていないが、元メンバー同士でバンド結成……という未来もありえるかもしれない。
(文=東條有華)