<カプセルトイ>今年で国内流通50周年 第3次ブーム到来 | ニコニコニュース

1995年に登場したカプセルトイのマシン「スリムボーイ」=タカラトミー提供
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 “ガチャガチャ”などの呼び名で親しまれ、1965年に米国から輸入されて今年で50周年を迎えるカプセルトイ。83年に「キン肉マン消しゴム(キン消し)」などの登場によりブームが到来し、98年にはさらに大人を巻き込み第2次ブームを迎えた。各メーカーがカプセルトイの概念を変えるサービスや商品開発に取り組んだ結果、昨年のカプセル玩具市場の売り上げは前年対比約115%だったという。現在“第3次ブーム”といわれるカプセルトイの現状と展望を探った。

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 カプセルトイは、米国で流行していたガムボールの小型自販機に、小さな玩具を入れて販売を始めたことが起源とされ、65年に製造販売商社「ぺニイ商会」が輸入し、日本に上陸。初期は10円機が主流で、73年のオイルショックを機に20円以上が登場、以降は商品の品質を確保するために100円機が定着し、現在では200円以上が相場で、大きな商品を扱う500円機も登場している。

 ◇主要メーカーの歩み

 カプセルトイを取り扱う主なメーカーは「バンダイ」と「タカラトミーアーツ」で、国内では2社のほか、ミニフィギュア「コップのフチ子」がヒットした「奇譚クラブ」、シュールな玩具を多数開発する「エポック社」などが代表的だ。

 国内シェアの大半を占める「バンダイ」は、77年に「ガシャポン」という名称で参入。83年に「キン消し」などが話題になり、第1次ブームをけん引した。近年は「ガンダム」「ドラゴンボール」「妖怪ウォッチ」の商品が人気という。また、20〜30代向けに、90年代の作品「美少女戦士セーラームーン」や「幽遊☆白書」などのリバイバル商品を販売し、改めて注目を集めるきっかけを作った。97年から2014年3月まで、累計約30億8353万個を売上げ、現在は月間約30種の商品を販売し、マシンは国内で約47万台を出荷している。

 一方、「タカラトミーアーツ」は、「Gacha(ガチャ)」という名称で1986年に参入。95年にはマシンを刷新し、特定の場所以外にも設置できる扱いやすくスリムなマシン「スリムボーイ」を開発。流通やオペレーション面でカプセルトイの普及に貢献した。現在はバンダイと同じく月間約30種を販売し、マシンは世界に約50万台を出荷している。商品は「ポケットモンスター」「ディズニー」「サンリオ」などの商品のほか、リアルさを追究したフィギュア「立体カプセル百科事典」、26周年を迎える日本製の虫のフィギュアが缶に入った「こむしちゃんのかんづめ」などが人気を博している。さらに、男性向けマンガやアニメを好む女性の“乙女”層を開拓し、女性向けのカプセルトイの開発も積極的に行ってきた。

 両社とも影響力のあるコンテンツを強みに開発を行い、子どもだけでなく大人もとりこにする商品を生み出してきた。

 ◇大人を巻き込むことに成功した理由

 カプセルトイは、各社が大人向けの商品開発で活路を見いだした。開発者や企画者は、「当時は子どものユーザーだったが現在は大人になっている。自分たち自身にも響き、当時を懐かしめて楽しめる“等身大の企画”」を追求した結果、大人層の獲得に成功した。

 さらに、カプセルトイの価値観が変わってきていることも理由の一つで、バンダイの広報・鷲頭知美さんによると「玩具を大人が持つ(自分用に買う)なんて……という時代が終わり、キャラクターものに抵抗がない世代が大人になったことが大きい」と分析している。

 また、鷲頭さんは「大人がおもちゃを買いやすい環境が整っているため、とりわけ手軽に購入できるガシャポンは人気」とコメントしており、各社が“大人が遊びやすい環境作り”を整えたこともヒットの要因といえる。それまではカプセルトイの設置箇所といえば、おもちゃ売り場やゲームセンターが主流で、主に子どもが遊ぶものという感覚だったが、大人に訴求するために、ファッションビルなどに大人向けの商品だけを置き、落ち着いた配色で装飾されたコーナーを設けるなどして、大人が遊びやすい空間にした。

 また、サービス面でも、設置場所をすぐに把握できるネットサービス「おしえて!ガチャ検索」(タカラトミーアーツ)などを提供し、どこに設置しているか積極的に探しにいくことをしないライトユーザーに対しても、手軽にカプセルトイを楽しめる対策を講じた。

 ◇カプセルトイの今後の展望

 今後カプセルトイはどう進化していくのか。バンダイは今後の展望について「現行のサービスをしっかり遂行しつつ、新しい切り口で驚かせていきたい」と話す。昨年は、アーケードゲームと融合したカプセルトイ「くじガシャポン」、大きな商品を取り扱うことが可能になった「ガシャポンカン」などを展開しており、業界に大きく影響を与えた。

 ベンダー事業部の亀井俊治さんは「昨年1年間は勝負の年でした。妖怪ウォッチのブームや、新たなサービスの展開により、結果的に販売は過去最大となった」と話す。また今年の夏からはインターネットを通して遠隔で遊ぶことができる「ネットdeカプセル」を発表し、欲しい商品が設置されていない地域に住む人や、実機で遊ぶことに抵抗がある人へも訴求できるようになった。

 タカラトミーアーツは、設置場所やコンテンツの開拓をさらに進めるという。企画部の市川睦さんは「本来ターゲットではない層へ浸透を狙っている。これまではアパレル店、博物館、駅の構内や空港など、どんな化学変化が起きるかというところで、ガチャとは無縁のところに設置した。商品はアニメグッズだけではないというアピールも含め、今までに興味がなかった人にも興味を持ってもらいたい」と意欲的だ。

 また、コンテンツでは、外部と共同で商品開発をすることにも注力している。お菓子メーカーや、アパレルブランドなどとの“企業コラボ”や、特殊な分野で活躍する“スペシャリスト”とのコラボも行う。例えば、南極に実際に行った隊員が、基地や南極にいる動物など再現し、監修したという異色コラボを過去に実施しており、新たな層の獲得に余念がない。

 さらに各社は、国内にとどまらず海外進出も今後の展望として見据えている。現在ではアニメやマンガなど日本のコンテンツを好む台湾、香港、韓国のアジア圏で人気を得ているほか、国内でも、インバウンド消費(来日した外国人の日本国内での消費)が多いという。だが、アジア圏以外の海外展開についてはまだ課題が残されており、タカラトミーアーツは「特に欧米はまだ子供向けの商品という認識。日本も大人が楽しむようになったのは長い時間がかかったので、外国人の意識改革を含めて今後の課題」と話し、可能性を探っている。

 あらゆる層に向け新たな可能性に挑戦していくカプセルトイ業界。今後もユーザーを楽しませるサービスや商品に注目したい。