パッと見は骨組みだけしかないように見えるこの謎の構造物は、ウェールズのニューポートにあるNewport Transporter Bridgeです。名前からも分かるようにこれは実は「橋」で、一応メンテナンス(と勇気のある観光客)用に歩いて渡ることのできる部分も存在します。でもこの橋の主な使い方は、上部から吊るされたケーブルにより、人や車を乗せたゴンドラを川岸から川岸へと移動させることにあります。「フェリーを使ったほうが簡単じゃないの?というかそもそも普通の橋を掛けたらいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、実はこの橋がこの形状で作られたのにはそれなりのワケがあったんです。
この橋のかかっているアスク川の干満の差は世界で最大級。そのため干潮の時に川に存在するのはほとんど泥のみで水が無いためフェリーを使うことができません。じゃあ普通の高さの橋を掛けたらどうかというと、この橋が作られた100年前には船の背丈が巨大だったため、現在のような高さのものになったのです。
また、川岸が低いため、一般的な橋の形でなおかつその下を船が通れるものを作るには、全長が何キロにもなる長い橋にしなければなりません。そうするとニューポートの街なかまでを橋の建設の土地として使わなくてはならない上に、当時の技術では非常に高価なものになってしまいます。
旋回橋や昇開橋を作るには深くて幅広い川の中にしっかりとした支柱を作らなければならず、これもまたとてもお金がかかる上に、川の流れが早いため、もし建てたとしても船が支柱にぶつかる危険性があります。
こうして様々な理由と制約の中からできたのが、このゴンドラを吊って動かす運搬橋なわけです。今でこそ技術の発展によりもっと便利な橋を建てたり、車でブーンとこの橋を迂回して別の橋を使うことも、もしくは川の下にトンネルを掘ることだってできます。でもこれが作られた当時なら馬車などを使って移動するために長距離を移動するのも大変で、橋を建てるとなったらこれ以外の選択肢がなかったんですね。
こうして建てられた歴史あるNewport Transporter Bridgeは、今ではニューポートの観光地のひとつとなっているそうです。
source: YouTube
Chris Mills - Gizmodo US[原文]
(abcxyz)