元プロボクサーで法科大学院生の小番一騎(こつがい・いっき)容疑者(24)が、妻との関係を疑った弁護士男性(42)の局部を切断した事件は、大きな注目を集めた。ところで被害者のペニスは再生できるのだろうか。切断されたペニスの接合は可能だが、それは次のような条件が整っている必要がある。
「切断されたペニスをすぐに氷で冷やし、一刻も早く接合手術を受けることが必要です。時間が経つと切り離されたペニスの組織が壊死に陥り、接合しても生着しません。
尿道をつなぐのは比較的簡単ですが、大変なのは血管や神経の接合です。それが成功して亀頭部の神経が回復してくれば、ある程度は感覚が戻ってくるし、勃起機能も戻る可能性があります。射精の神経はまた別ですが、陰茎の根元が残っていれば、その部分を刺激することで射精も可能になると思われます」(川崎医科大学泌尿器科・永井敦医師)
だが、今回の事件では切断されたペニスはトイレに流され回収は不可能とされる。事件後には、いったいどんな処置が取られたのか。
「排尿機能を確保しなければいけないので、尿道断端を形成しているはずです。後はペニス状のものを形成するかどうかによって治療が変わってきます。単に余っている皮膚で傷口を覆って縫合するのが断端形成手術です。ペニス状のものをぶら下げるとすれば、後日に陰茎形成手術を行なうことになります」(永井医師)
陰茎形成手術とは、前腕や鼠径部の皮膚を切り取ってロール状にして陰茎状のものを形成し、切断面に接合する方法だ。
「ペニスに残った神経と移植した皮膚の神経を接合することで、ある程度の感度は得ることができます。ただし、そのままでは勃起機能を伴わないので、セックスで挿入することは難しい」(同前)
その場合にはこんな方法が考えられるという。
「“支柱”として、肋軟骨(肋骨の一部)を埋め込めば、挿入も可能になります。しかし今度はずっと“勃起状態”になってしまう。上向きで下着の中に収納するしかなく、排尿にも不便が生じます」(同前)
いずれにしろ、被害者が被った精神的、肉体的な苦痛が癒えることはないだろう。
※週刊ポスト2015年9月4日号