物欲をむき出しに金に物を言わせるその姿に批判が集まる一方、日本経済への恩恵も期待されている中国人による爆買いだが、そう長くは続かないかもしれない。
中国税関当局が、密輸や代理購買を厳しく取り締まる新政策をまとめ、9月1日より海外から旅客によって持ち込まれる手荷物や、郵送品の開封検査を厳格化することを決定したのだ。
同時に罰則も強化される。手荷物や郵便物の税関申告書に書かれた内容物の金額に5%以上の誤りや虚偽があった場合、高額な罰金が科せられることとなる。さらに10%以上で、密輸品として没収される可能性もあるという。
中国からの団体ツアーに添乗するガイドの男性は、この新政策の衝撃の大きさについてこう話す。
「中国人が日本で爆買いしている商品の多くは、実は国内でも買うことができる。それでもみんなこぞって日本で買っていたのは、“同じ商品でも、日本で売られている物のほうが品質がいい”と信じられていたこともありますが、やはり日本で買ったほうが安いから。送料や中間マージンに加え、中国輸入時に課せられる関税で、商品によっては日本と中国で2倍以上の価格差がある場合も少なくない。これまでも、消費財を海外から郵送や手荷物として持ち込む場合は、申告して関税を納める義務があったのですが、そのルールは形骸化されていた。新政策により、中国人旅行者にとって日本で物を買うお得感は半減することとなります」
中国版LINEともいえるチャットアプリ「微信」を利用し、日本の商品を中国人に転売している在日中国人の女性(27)はこう話す。
「紙おむつや化粧品、日本の米はもちろんのこと、今は医療関係者しか手に入らないダイエットの薬などが売れ筋で、過去1年間で500万円分くらい売りました。利益はそのうち約4割くらいですね。しかし新政策がスタートすれば、例えば化粧品なら50%の関税がかかるようになる。課税されるのは商品の受け取り側ですが、誰も買わなくなるでしょう。私も、新しい収入源を探さなければなりませんね」
こうした税関検査の厳格化の狙いについて、中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏は話す。
「税関検査の厳格化の一方で、今年6月から当局は輸入品に対する関税率を平均50%減税させている。これによって、正規輸入品の価格は過去に比べ安くなっている。つまり、中国当局は海外にそのまま資金が流出するだけの転売品ではなく、国内にも金が落ちる正規輸入品を国民に買わせたいということ。昨年の海外からの転売品市場は1兆5,000億円にも達しており、その一部を国内に還流させるのが政府の狙いです」
中国当局にとって見れば、「日本にばかり爆買いの恩恵は受けさせないぞ!」ということなのだろうか……。