美味しい食べ物に美味しいお酒、みんなで集まっているとつい食べ過ぎたり飲み過ぎたり……楽しいならなおさら、やっちゃったと思うつつも、また集まって食べたり飲んだりするのが楽しみみたいな。
だれだってそう思いますよね?
でも忙しい毎日、平日のご飯は1人で済ますビジネスマンも多いのではないでしょうか? 家族がいても食卓を囲む機会はどんどん減り、今では個食が問題視されているそうです。
食物や酒の起源を、およそ700万年前までさかのぼり、人間との関わりや人間性の起源などについて探っているのが、京都大学総長の山極壽一氏。今回の「無限大(mugendai)」で、山極氏は「個食は人間がサル化している現象」だと言います。一体どういうことなんでしょう?
チンパンジーやゴリラは食べ物を利用して良好な関係を築くという行動を起こしますが、サルには起こらないそうです。山極氏はここに「人間の食事の起源を見た」と言います。
そして人間とサルの間には、大きなギャップがある。そこには、「運搬」「肉食」「調理」「生産」という4つの革命があるそうです。
「無限大(mugendai)」の中で山極氏はこう語ります。「こうして4つの革命を経て食文化が発達することにより、食事は人間の日々の社会行動にとって非常に重要な位置を占めるようになったのです」。
また山極氏は、自著で「『食』は政治や経済を動かすジオポリティクス(地政学)の対象である」と書いており、「誰かと一緒に食べるという行為は、コミュニケーションを促進し、和解とか和平の成立を意味」しているとも言っています。
2002年に小泉純一郎首相が北朝鮮を訪問し、金正日総書記と会談した際には握手はしたが食事をしなかったという事例や、アフリカの難民キャンプでは、必ずみな与えられた食物を調理して食べる事例などを挙げ、食のジオポリティクスについて語っています。
食だけに限らず酒もまた、ジオポリティクスに使われてきたと語る山極氏。
「酒は昔から人間が天上界とつながるコミュニケーションの手段でした」と言い、日本では儀式で必ず酒が飲まれたという事例、またアフリカのコンゴ共和国でのビール工場の事例、欧米の禁酒法、日本の酒税法などの事例、果ては日本酒の類稀なる存在価値などを挙げ、酒のジオポリティクスについて解説しています。
「サルは自分の利益のために群れを作りますが、人間は自分の利益を捨てても集団のために尽くしたいと考える。
この思いをうまく生かしてきたからこそ社会が発展し、人間社会は地球の隅々まで広がって繁栄することができました」と語り、個食から想定される未来の問題を憂う山極氏。
無限大(mugendai)を読んでいたら、なんか仲間を呼んでワイワイ食卓を囲みたくなりました。
source: 無限大(mugendai)
(ホシデトモタカ)