中国メディア・証券時報網は17日、ドイツが掲げた製造業の高度化戦略「インダストリー4.0」に対して中国がもっとも熱をあげているとしたうえで、これを単に自国に「移植」するようなことがあれば中国の製造業は大きな落とし穴にはまる可能性があるとする評論記事を掲載した。
記事はまず、「インダストリー4.0」が打ち出されるに至った背景について紹介。まず、200年間の経験からなる工業体系、厳しい態度、職人気質、高い品質を誇るドイツの製造業が、中国など発展途上国の技術力や品質の向上によって世界シェアを落としていることを示し、途上国の技術力が「ドイツなど最高峰の品質に比べれば依然として大きな差があるものの、途上国の大部分の消費者ニーズを満たせるレベルになった」と解説した。
また、米国が自国企業の強みであるIT技術を生かして最先端の製造技術開発を加速、世界の製造業における競争力を取り戻すべく、国家戦略「AMP2.0」打ち出したことも背景として挙げた。そして、「米国など先進国との全面競争と、中国など発展途上国の急追に直面」したドイツが、「主導的なサプライヤー戦略」、「主導的な市場戦略」を掲げる「インダストリー4.0」を提起したと論じた。
そのうえで、世界において「インダストリー4.0」にもっとも熱をあげているのはおそらく中国であるとし、中国企業が米国やドイツの戦略に学ぼうとしていると指摘。これに対して、米国やドイツの戦略が「自国の製造業の未来を確保するために制定された戦略」であり、すべての国にマッチするものではないことを十分に認識しなければならないとした。そして「中国製造業の実情を鑑み、実際に即した実行可能な中国製造業のモデルチェンジに向けたロードマップを制定する必要がある」と説明した。
記事は、「中国は現状、米国のような最先端製造技術も持っていないし、ドイツのように200年の歴史を持つ工業文明のソフトパワーもない」とする一方、中国の持つ強みは「世界で唯一すべての健全な工業体系を持ち、米国に次ぐIT企業を有し、そして世界最大の消費市場」という点にあると説明。企業の実情を顧みず、盲目的にハイテク設備を導入するようでは、ドイツ人の「主導的なサプライヤー戦略」の落とし穴にはまってしまうと呼びかけた。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)