フレンチ・ハウスの黎明(れいめい)期を駆け抜けたDJの夢と挫折を描いた映画『EDEN/エデン』の共同脚本を務めたスヴェン・ハンセン=ラヴがインタビューに応じ、世界的な人気を博すダフト・パンクがクラブで門前払いされるシーンは実話に基づいていることを明かした。
1990年代のフランスを舞台にした本作は、エレクトロ・ミュージックが台頭する頃に親友とDJ活動を始めて成功に酔いしれるポールが、次第に理想と乖離(かいり)していく現実に苦悩するさまを描いた青春映画。メガホンを取ったのは、『グッバイ・ファーストラブ』などの新鋭ミア・ハンセン=ラヴ。スヴェンはミアの実の兄で、主人公ポールのモデルでもある。
タイトルの『EDEN』は、当時のファン雑誌の名前に由来すると同時に、楽園を意味する言葉だ。スヴェンは、「ミアは第2章のタイトルでもある『ロスト・イン・ミュージック』とエデンの二つで迷っていた。過ぎ去ってしまった1990年代を描いた映画、もう戻れない若い時代についての映画なので、より深みがあると思いこちらに決めたんだ」と作品のテーマが「失われた青春時代」であることを強調した。
また、本作では神秘的な存在として知られるダフト・パンクを演じる役者も登場し、マスクをかぶっていない素の彼らがクラブで門前払いされる姿が描かれる。「あれは実際に彼らが経験したことで、それは映画に入れてもいいという含みを持たせながら、彼らがわたしたちに語ってくれたんだ」というスヴェン。キャスティングについても、「実在の人がベースになっている役が多いけれど、かなり(モデルの人物に)近い役者さんが見つかったと思う」と実際のモデルを知っているからこその自信を見せた。
お気に入りのシーンは友人の葬式の後にダフト・パンクの「Veridis Quo」が流れるメランコリーな場面だという。音楽が重要な役割を持つ映画であるだけに、選曲は慎重に行ったそうで、「ミアと一緒に選曲したよ。1年くらい時間をかけて曲を選んで、はじめに200曲くらいリスティングした。それから『これはちょっとやめとこう』というのを削っていった結果が、劇中の音楽なんだ」とこだわりをのぞかせた。最近再びDJを始めたというスヴェンが、「いってみれば登場人物の一人みたいなもの」と並々ならぬ思い入れで厳選した楽曲にも注目だ。(編集部・吉田唯)
映画『EDEN/エデン』は9月5日より新宿シネマカリテ、大阪ステーションシティシネマほか全国順次公開