TVアニメで人気を博した後は劇場へ――そんな流れがアニメ業界では大流行だが、どんな人気作でもTV放送終了後から時間が少し経ってしまうと、熱心なファン以外からは忘れられてしまいがち。企画が進行してから、少し時間が経っているそんな劇場版アニメを、ピックアップして紹介してみる。
まずはシリーズの第4弾・最終章、『#4 Winter of Rebirth』の公開が2016年1月23日と決定、さらに最終章の公開を記念して16年3月5日にフィナーレイベント「PERSONA 3 THE MOVIE Finale Event」の開催も発表された『PERSONA3 THE MOVIE』。
いわずと知れた名作『女神転生』シリーズを源流とする、人気RPG『ペルソナ3』が原作で、2013年11月からスタートした劇場アニメシリーズ。私立月光館学園に転校してきた主人公・結城理が、異能の力“ペルソナ”に覚醒。そのペルソナを用いて、仲間とともに“影時間”にいる“シャドウ”と戦っていくという物語だ。
故・田の中勇氏の音声をサンプリングして大事に使用するなど、原作ゲームへのリスペクト、スタイリッシュな演出や印象的な悪魔の妖しい美麗さといった魅力が、シリーズのファンから好評。シリーズ第1弾『#1 Spring of Birth』は、全国26スクリーンと小規模ながら映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第7位と健闘。ミニシアターランキング(公開館30以下)では1位を獲得している。
『#4 Winter of Rebirth』のポスターも公開し、早速ファンからの期待を高めているようだ。 ついに迎えた最終章ではどんな物語を見せてくれるのか、また、どんなスタッフが起用されるのか。最後まで続報を楽しみにしていきたい。
そして8月29日にOVA完結編の第2部『響 -ひびき-』のイベント上映が始まった『たまゆら~卒業写真~』から、劇場版第3弾『憧 -あこがれ-』の新ビジュアルが公開された。
『たまゆら』は、2010年11月、12月にOVA全4話が発売以後、2度のTVアニメシリーズ化を果たし、イベント上映までこぎつけた息の長いシリーズだ。『美少女戦士セーラームーン』シリーズ、『カレイドスター』、『ARIA』シリーズなど、幾多の名作で監督を務めた佐藤順一によるオリジナル作で、瀬戸内海に面する広島県・竹原市を舞台に、写真好きの高校生・沢渡楓とその友人たちが織り成す日常と、それぞれの“夢”について描くハートフルストーリー。
2度のTVシリーズを経て、楓たちは高校1年から3年生へ進級している。全4話で構成されるOVA完結編では、高校3年生の1年間と彼女たちの卒業が描かれるとあって、彼女たちとともに時間を過ごしてきたファンたちの涙腺は早くも決壊寸前。残るは上映中の第2部も含めてあと3話のみ。のどかで心癒してくれる竹原の風景を、しっかりと胸に刻んでほしい。
なお、『たまゆら』は物語の舞台・竹原市ともがっちりとコラボし、数々のイベントを展開。登場するマスコットキャラ、“ももねこ”を起用した「ももねこ様祭」が12年から4年連続で開催され、さらに地元Jリーグチーム・サンフレッチェ広島ともコラボするなど、数少ない“アニメの聖地”の成功例としても知られている。
そして最後に紹介するのが『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』シリーズ。近未来の世界を舞台に、独自の意思を持ち、世界中の海を支配する謎の艦艇たち「霧の艦隊」に対して、人類側についた潜水艦・イ401と、メンタルモデルである(意思を持つ艦艇たちの人型インターフェイス)・イオナが、艦長・千早群像らとともに立ち向かっていくという、海洋SF戦記ドラマだ。
当時はまだアニメ放送前だった『艦これ』ブームも後押しとなったのか、TVシリーズ放送後に、内容を再構成した『劇場版 蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- DC』が劇場公開され、さらに完全新作となる『劇場版 蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- Cadenza』が10月3日公開となっている。
アニメでは艦艇のみならず、2次元のアニメキャラクターらしいビジュアルを残しつつ、キャラクターたちまで3DCGで描写するなどアグレッシブな表現と、手に汗握る艦艇バトルを展開。マンガ原作からかなりの変更点があったにも関わらず支持を得たのは、業界を代表する名コンビ、監督・岸誠二と構成、脚本・上江洲誠の手腕による部分も多そうだ。
“映画館ならでは、大スクリーンで展開される迫力アクション”という決まり文句が、今回挙げた作品の中では一番期待できる作品なので、ドラマとあわせて3CGによる艦船バトルも楽しめそうだ。
3作品ともTVシリーズを経てきているので、一見敷居が高そうに見えるが、人気があったからこそ劇場版までたどり着いたわけで、見直すとファン以外の人でもやっぱりおもしろい。劇場版に向け、ニコニコ動画などの動画配信サイトでの配信や、再放送なども各作品で仕掛けてきているので、まだまだ復習も間に合うはず。見逃していた名作を見直すチャンスととらえて、映画館へ足を運んでみてはいかがだろうか。