日本にあって、ヨーロッパにないもの。それは「かわいいモノ」です。日本の文房具屋さんに入ると、キャラクター入りのものなど、本当にかわいいものが多いですよね。反対に、例えばドイツの文房具屋さんは、いかにも「大人のオフィス」といった雰囲気の品揃えで「かわいい」ものは少ないですね。
日本では子どものみならず大人もかわいいものを使ったり、キャラクター入りのものを持ち歩いていたりするのがヨーロッパ人には不思議にうつるようです。
たとえば日本の銀行で通帳を作る際、銀行によってはキャラクター入りの通帳を選ぶことも可能です。筆者は来日当初、「銀行の通帳は子どもではなく、大人が作るものなのに、通帳に『キャラクター』が入ってるんだ!」と衝撃を受けました。でもしばらくすると、キャラクターの入った通帳のほうが自分で保管している際に目立つから使いやすいですし、かわいいしで、最近は無地のものよりもキャラクター入りの通帳を進んで選ぶようになりました。
日本では銀行のみならず多くの企業で「キャラクター」を使っていますよね。ヨーロッパだとキャラクターがあまりありませんし、そもそもヨーロッパにおいて「キャラクター」はイコール「子どもを対象」にしたものです。でも日本では対象が決して子どもではなく、大人向けのサービスを提供している企業であっても、語学学校や銀行、保険会社などが各自キャラクターを持っていたりするのですね。
企業のみならず、流行の「ふなっしー」(船橋市)や「くまモン」(熊本県)などの「ご当地キャラクター」も流行っています。もっとも必ずしも市や県から公認されたキャラクターだとは限らないようですが、それは措いておくとしても、ここまでご当地キャラが流行るのは「日本ならでは」なのかもしれません。全国ご当地キャラクターグッズガイド( http://www.axcpark.com/shop/characters/ )には全国のお茶目なキャラクターがズラリと並んでいて「こんなにたくさんキャラクターがあるんだ!」と驚くとともに、茨城県の「つちまる」や長野県の「アルプちゃん」など愛嬌のあるキャラたちに癒されました。
ちなみに筆者はドイツに住んでいた子ども時代、「キティちゃん」が大好きでしたが、日本に来て初めて「ご当地キティちゃん」なるものを知って感激したものです。
■ヨーロッパではキャラクターグッズの持ち歩きは注意?
そんなこんなで、通帳や通帳入れ、ポーチなど日本国内ではキャラクター入りのものも好んで使う筆者ですが、ヨーロッパに行く時はなるべくキャラクター入りのポーチなどを周囲の人に見られないよう極力注意しております。そう、ヨーロッパは「大人の趣味」こそが正解だとされている社会。ですので、キャラクター入りのものを持ち歩いていると周りにナメられやすかったりします。現にうっかり見られてしまった際には周りの人の「あの人、大人なのに、なに子どもっぽいモノ、持っちゃってるの……」と言いたげな視線が痛いです。
基本的にヨーロッパではキャラクターものは「10歳以下」の子どものためのもの、というような雰囲気があるため、ヨーロッパでは10代前半の子さえ「子どもモノは卒業!」といわんばかりに大きくセクシーなイヤリングをつけ、パーマをかけ、デコルテの見える服を着て闊歩しています。10代前半であっても、20代後半ぐらいの女性に見えるようにと一生懸命です。若くても「自分がいかに大人であるか」を演出する人がヨーロッパには多いです。10代になっても20代になっても、筆者のようにもうじき四十路になってもキャラクター入りのものを「わー、かわいい!」とやるのとはだいぶ雰囲気が違います。
既に10代前半からキャラクターなど「かわいいモノ」とは縁を切り「大人っぽい容姿」を演出することをヨシとするのか、日本のようにいくつになってもキャラクターをかわいいと思うことをヨシとするのか。--- そこに答えはありませんが、キャラクターにもTPOがあることは確かのようです。TPOとは日本やアジアではキャラクター入りの持ち物はオッケー、ヨーロッパでは要注意、といったところでしょうか。
それにしても最近はキティの“提出できる"婚姻届も登場したとのこと、キャラクターに囲まれた大人が多い日本はつくづく平和だと感じます!
サンドラ・ヘフェリン
プロフィール/ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴17年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフといじめ問題」「バイリンガル教育について」など、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。