放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、『めざましテレビ』の“お天気キャスター問題”に迫る!
* * *
生放送の生活情報番組の中で、もっとも失敗してはいけないのは、ニュース読みと天気予報ではないだろうか。
忙しい朝、ながら視聴でテレビを見ている人たちが、もっとも聞き耳をたてる瞬間が“お天気コーナー”だ。予報が当たる、当たらないはもちろんだが、できることなら爽やかに、元気に、キチンと伝えてほしいものである。
が、私がこの1年半ほど、気になって気になってしかたがないのが、『めざましテレビ』(フジテレビ系)の“お天気キャスター”小野彩香の“資質”なのである。
『めざまし~』の場合、キャスターに気象予報士の資格はなく、「予報を読む」のがお仕事。
にもかかわらず、彼女はとにかく、よく噛むし、間違える。たとえば「北部」と「南部」といった致命的な言い間違いを度々するのだ。
鼻にかかった声も、朝の番組には不向きだし、動きが“もっさり”していて、視聴者プレゼントの花束を抱えたり、傘を差したりするなど、ちょっとしたポーズも決まる日が少ない。
「雨がパラついてきた」とか「風が冷たい」というとき、空を見上げたり、手のひらをかざすなどの動作をすると、他のことがおろそかになり、コメントや段取りを間違えがちだ。
彼女が昨年3月末、お天気キャスターに就いたとき、「『めざましテレビ』歴代のお天気キャスター初のハズレではないか」とTwitterで呟いたところ、関係者の方なのか、「新人なので、もう少し待ってあげてほしい」とリプライがあった。
待ってみた。もう1年半近くになる。が、件の“問題”はほとんど成長していない。
なぜ彼女が起用されたのか。そこには当時、“リケジョの星”として一世を風靡した理研(当時)の小保方晴子さんが関係していたのではないか。
その頃、『めざましテレビ』は確かに「あなたの周りの美人リケジョ」を募集していたのである。その昔、夕方の『スーパーニュース』内にあった「南ちゃんをさがせ」(中高の部活の美人マネジャーの“数珠つなぎ”企画)のように話題にして、スポンサーをつけたりする狙いもあっただろう。
だが、STAP細胞と共に消えた小保方さん。そのコーナーは立ち上がることはなく、募集も、なかったことになった。
実は小野彩香は歯科衛生士の資格をもつ“リケジョ”なのである。コーナー共々、盛り上げ要員として起用したと言ったら深読みが過ぎるだろうか。
さて、歴代のお天気キャスターが“めざましアナウンサー”や番組スタッフから溺愛されていることは視聴者にも伝わっていたと思う。が、キャラ薄で、かわいらしいタイプではない小野彩香に、彼らが萌えているという話は入ってこないし、“女子アナマニア”からも「なんかピンとこない」という評価が聞こえてくる。
スタッフも、この状況を打破しようと思ったのか、5時台の天気枠に助っ人として立本信吾アナを加入させた。
当然、二人で打ち合わせをして掛け合いに臨んでいると思うのだが、キレイにオチたことは皆無。クロストークをしてしまったり、時間切れになってしまったり、グダグダ感が増してしまったように感じる。立本アナ、いわゆる“もらい事故”状態だ。
そんな「彩香ちゃん」が夏休みで、代わりにフジテレビの新人アナウンサー3人が担当したお天気。私が見ていた限り、新美有加アナ、宮司愛海アナ、小澤陽子アナの順に登場したと思う。
新美アナは朝にしては落ち着きすぎている以外、トークは完璧。宮司アナはカミカミとは言わないまでも、間違いが目立った。最悪だったのは小澤アナである。どうしちゃったの? というぐらいグダグダで、原稿のどこを読んでいるかわからなくなってしまったり、「じゃんけん」にいく時間を読み間違えてしまったりしていた。
あろうことか、そのとき彼女は、片手を大きく挙げ、笑ってごまかしたのである。怒られただろうなぁ…。そういえば、日テレの豊田順子アナのような厳しい指導者がフジテレビにはいるのだろうか。同番組の女子アナとして最年長(ナレーターは別)の加藤綾子アナには、ぜひ厳しく指導してもらいたいものである。
番組開始以来、初めて勃発した『めざましテレビ』の“お天気キャスター問題”…。「カムバック! 美郷ちゃん」と思わずにはいられない。
そう、小野彩香が入る前の5年間、『めざましテレビ』のお天気キャスターをつとめていた長野美郷ちゃんである。
アナウンスの技術関連資格である「DJ・MDライセンス」を取得しているからなのか、彼女が噛んでいるのを私は聞いたことがない。
ルックスも朝に相応しく、「美郷ちゃん」と呼ばれるのが似合う明るいキャラクター。現在、『めざましどようび』を佐野瑞樹アナと仕切っているが、特に大物芸能人とツーショットでトークする「ハイ&ロー」の仕切りが見事だ。
媚びるでもなく、もちろん失礼な言動もなく、街中の「ロー」な意見を聞いた後も芸能人が気持ちよく帰っていくのは、長野美郷の実力の賜物であると思う。
美郷ちゃんの出現以来、気温や湿度の電光掲示板を手の甲で差すのは他局でも定着した。恐らく、趣味のネイルアートをカメラに向けて見せるための策だったと思うが、上品でチャーミングな美郷ちゃんのネイルアートを見るのも『めざましテレビ』の楽しみの一つだった。
そんな美郷ちゃんは、SMAPの木村拓哉主演の映画『HERO』に重要な役で出演している。監督さんにとっても、「お天気」と言えばいまだに「美郷ちゃん」だったのだろう。
中学時代からドラマ『HERO』の大ファンだったという美郷ちゃんが、同い年で同映画のヒロイン・北川景子と“HERO愛”を語った際も、出しゃばりすぎず、しかし、マニアぶりはしっかり視聴者に伝わるVTRだった。
同い年と言えば、新卒でNHKとフジテレビのアナウンスを受けるも不採用となった美郷ちゃんの“同期”は、松村未央アナであり、いまも交流があるそうだ。
長野美郷が落ちて、松村未央が入る…。やや理解に苦しむが、恐らく美郷ちゃんのことが惜しくなったフジテレビ幹部が、新卒後すぐに『めざましテレビ』の“お天気”を用意。セント・フォースも紹介したのではないか。実は在京局を受験中、そういう声のかけられ方をする女性キャスターは少なくないのである。
まぁ、彼女の実力や人気を考えると、ずっと“お天気”ばかりを担当させておくワケにもいかないだろうが、『めざましどようび』だけを担当しているということは、まだ“フジテレビ縛り”が解けていないのだろう。
だが、そうこうしている内に、フリーアナにも確実に押し寄せてくるのが“30才定年説”だ。同じプロセスを経ていまにいたる皆藤愛子が他局でそれほど活躍できていないことを考えると、美郷ちゃんの今後も心配でならない。
平日の朝はいいけれど、午後帯や夕方のニュースで苦戦が続いているフジテレビにあって、長野美郷は必ずや武器になる。もっともっと美郷ちゃんの活躍の場が広がってほしい。