そろそろ夏も終盤ですし、はっきりさせましょうか。地球温暖化にまつわる諸説について。
一時は氷河期説があったかと思いきや、今年の夏は観測史上最高の数値が記録されました。もちろん自然界のことは神のみぞ知る部分もあるのですが、人間界でここ数年のあいだ議論されていたのは、地球温暖化が一時的に休止しているというハイエイタス現象についてでした。
これまでハイエイタスの主たる原因として考えられていたのは、とりわけ2000年代初頭から太平洋における海洋表面温度の低下ではないかという説。しかし結論を出すうえでは、もっとディープな海の世界を見る必要があったのだとか。一体どういうことなのでしょうか?
米科学誌サイエンスが報じるところ、NASAジェット推進研究所の科学者らによる過去20年分の観察データが決定的な証拠を掴んだといいます。
Image via NASA Earth Observatory
縦軸は水深、横軸は年代を表す上のグラフ。なにやら近年、水深100〜300メートルのあたりが、赤い...。
では、コンクルージョンファーストで(結論から先に!)いきましょう。温暖化の原因となる熱。これが、太平洋とインド洋の海底にこの10年のあいだ停滞していたのだといいます。
ポイントは、熱が海の表面でなく、海のなかで発生していたということ(ちなみに海は大気よりも熱を溜め込むほか、水面だけでなく深い海のなかでも熱吸収できるといわれています)。
海と地球温暖化の関係については、これまでに様々なデータ分析が行なわれてきました。そのひとつが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)。
2003年以降、海洋表面の平均温度は0.001度/年ずつ上昇していました。これは1880年以降に0.006度/年ずつ上昇していたのと比較すると、温暖化の進行が大幅に減速しているのではないかと考えられたのです。気候科学者たちはさらに詳しく、海面あるいは深海のどちらが熱を吸収しているのか解明に努めていました。
また他方でNature Climate Changeで紹介された最近の研究によると、太平洋からインド洋にかけて、過去10年で活発的に熱が増えていることがわかりました。明らかに熱の経路は変化しているのだとか。
こうした様々なリサーチに対して、NASAジェット推進研究所による新たな研究は包括的で決定的な分析だといわれています。
同研究によると、過去20年以上のあいだ、インド洋と太平洋の0〜300メートル水深が地球全体の表面温度を標準化していたのだそうです。...つまり、太平洋の表面温度が低い部分に対して、深い海のなかで発生している熱がバランスをとって、一時的に温暖化を喰い止めていたというもの。
じつは以前にも同様の説があったものの、過去20年分のデータが活用された今回の研究によって、これまでの長いハイエイタス(一時休止)について十分説明できると裏付けされたのでした。
さて、地球温暖化一時休止説の謎が解けた今、非科学的な議論は避けて、CO2排出量の規制をはじめとする現実的なタスクについて、いま一度、具体的な一歩踏み出すべきだと米Gizmodoでは提唱されています。温暖化が進行する未来に向けて、人々の意識や社会のあり方はこれからどう変われるでしょうか。
※トップ画像は2003年〜2012年のあいだ、さまざまな水深で計測された海洋温度のトレンド。赤いエリアは温暖傾向、青いエリアは寒冷傾向にあることが摂氏温度で示されています。
Image by NASA Earth Observatory
Maddie Stone – Gizmodo US[原文]
(Rina Fukazu)