2016年はVRゲーム元年になる、と言われています。さて、VRゲームと聞いてどんなものを思い浮かべるでしょうか?「VRって何?ビデオレコーダー?」という人もいれば、「『ソードアート・オンライン』のあれでしょ」と思う人もいるかもしれません。VRとはバーチャルリアリティの略で「仮想現実」などと訳されますが、コンピューターで作り出された仮想世界に入り込んだような体験をできるのがVRゲーム。遠い未来のゲームと思われていたVRゲームが2016年には続々と発売されます。そこで今回はVRゲームとはどんなものなのか、2016年にはどんなものが発売されるのかをご紹介したいと思います。
■ VRゲームとは
◎ VR=Virtual Reality
改めてVRゲームとは何なのかについてわかりやすくご紹介します。先ほどの説明を聞いて、テレビゲームはほとんど「コンピューターで作り出された仮想世界」で遊ぶものじゃないか、と思った人もいると思います。「ポケモン」も「ドラクエ」も仮想世界といえば仮想世界ですよね。ただ、重要なのは「入り込んだような体験をできる」という部分で、あたかも自分がその世界にいるかのような気になるのがVRゲームなのです。
◎ どのような仕組みなのか
先ほど名前の出た大人気のライトノベルでアニメ化もされた『ソードアート・オンライン』では、「ナーヴギア」というヘルメットのようなものを被ることで脳へ直接信号を送り、仮想世界を現実と同じような感覚で行動していました。しかし、もちろん現在はそのような技術はないので仕組みはまったく違います。現在作られているVRゲームは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)と呼ばれる頭部に装着するディスプレイ装置を使います。ゴーグルのようなHMDを装着することで外界からは遮断され、目の前にゲームの世界が広がることになるのです。
◎ 最大の特徴はヘッドトラッキング機能
とはいえ、HMDはずいぶん前からありました。では何が変わったのかというと、ヘッドトラッキング機能がついたことです。ヘッドトラッキング機能とは、頭を動かすとゲームの中でも同じように視界が動くというもの。つまり上を向けばゲームの視界も上に動き、右を向けばゲームでも右を見ることができるのです。これがほとんど時間差なく機能することで、よりゲームの世界にいるような没入感を味わうことができます。
■ 克服された問題点
以前からあったHMDがこれまで注目されてこなかったのには、ヘッドトラッキング以外にもいくつかの問題点があったからです。しかし、それも克服されてきました。
◎ 立体感
仮想現実に入り込んだような体験をするには映像を3Dの立体として見られなくてはいけません。平面的な映像では、ただ目の前の画面に映像が映っているだけにしか感じられませんからね。これは『アバター』などの3D映画やゲーム機ニンテンドー3DSなどが出てきていることからもわかるように、技術の進歩により解決されました。特に小さなゲーム機でも高い情報処理能力を持てるようになったことが、HMDを使ったVRゲームへとつながっていきます。
◎ 狭い視野
過去のHMDでは映像を映す画面が小さく、HMDをつけると真っ暗な空間にポツンを四角い画面が浮かんでいるような感覚でした。それが現在では、当然裸眼の状態と同じとはいかないものの、素潜りをする際の水中メガネくらいの視野にはなってきています。例えると、90代後半の携帯電話の画面がスマホの画面になったようなイメージです。
◎ 装着の快適さ
HMDを装着してゲームをするためには、つけていても苦にならないことが条件になりますよね。しかし以前はHMDが重く、長時間装着しているのはつらいものでした。しかし、こちらも技術の発展によって小型化・軽量化が可能になり、つけ心地が改善されました。また、かつては眼鏡をかけている人は外さなければHMDを装着できなかったのが、現在ではそれも改良され、眼鏡をしたままでも装着できるようになってきています。
■ 2016年にVR対応型HMDが続々発売
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このようにして、これまでの問題点を克服したことで実用化が可能になり、さまざまな企業が新たなVR対応型HMDを開発しています。そして、2016年にはいくつかの企業が一般向けの製品を発売すると発表しています。ここからは、特に注目をされているHMDを紹介していきます
◎ Oculus Rift製品版/Oculus VR社
Oculus Rift(オキュラス・リフト)はすでに2013年と2014年に開発者向けキットが発売されていて、一般の人でも買うことができますが、ついに2016年には製品版が発売となります。正確な発売日は決まっていませんが、2016年第1四半期に発売すると発表されています。Oculus Riftの特徴は解像度の高いことと軽さです。開発者キットと比べると映像は格段にクリアになり、軽量化もされています。また、トラッキングシステムはマイクのような見た目の赤外線センサーと組み合わせることで、遅延もなく正確に作動します。さらに、専用のコントローラーも開発していますが、こちらは発売が2016年上半期となっています。なのでRift製品版とは別売りで、Rift製品版にはXbox Oneのワイヤレスコントローラーが付属されるとのことです。
◎ Project Morpheus/ソニー・コンピュータエンタテインメント
Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)はプレイステーション4の魅力を高め、ゲーム体験をさらに豊かにするVRシステムとして開発が進められています。開発キットなどは発売されていませんが、ゲームの見本市などでは出展されていて、そのたびに大きな注目を浴びています。プレイステーション4と接続して使うため、パソコンでやるOculus Riftに比べると解像度は若干落ちてしまいますが、トラッキングの精度はMorpheusのほうが高いようです。また、ゲームに特化しているため、デモの段階でもかなりゲームの種類が豊富になっています。発売日はまだ未定で「2016年上半期の発売に向け開発中」とのこと。見本市などに出ているのは試作機なので、今後さらに解像度なども改善されるかもしれません。
◎ HTC Vive/Valve・HTC
VR対応型HMDの2トップはOculus RiftとProject Morpheusですが、それ以外に第三勢力ともいうべきHMDがいくつかあります。その筆頭がHTC Viveで、PCゲーム販売プラットフォームのSteamに対応するということでSteamVRとも呼ばれています。HTC Viveの特徴はLighthouseという手法を使ったトラッキングシステムです。これはほかのHMDのトラッキングが、HMDから出される赤外線を1つ赤外線センサーでとらえているのに対し、Lighthouseは部屋の2ヶ所にベースステーションを設置して、そこから出される特殊なレーザーをHMD側にある光センサーがとらえるというもの。つまり、まったく正反対の発想なのです。この手法のメリットは部屋全体をカバーできることとトラッキングの精度が高いこと。この手法はいずれスタンダードになっていくのではないかと言われています。また、HTC Viveも独自のコントローラーがあり、これにも光センサーがついています。こちらも開発者向けがすでに出ていて、一般向けは2015年末に一部先行販売し、実際に出回るのは2016年初めになるようです。
◎ Gear VR/サムスン・Oculus VR社
Gear VRはサムスンとOculus VR社が共同で開発したHMDで、すでに発売されています。Gear VRの最大の特徴は、ほかのHMDとは違ってパソコンやゲーム機は必要なく、スマートフォンを装着して使うことです。パソコンなどに繋ぐコードがないため、頭を動かしてもコードが邪魔になるようなことはありません。また、コントローラーはなく側面についたタッチパネルで操作ができるので、Gear VRとスマートフォンさえあればどこでも使うことが可能です。海外で先に発売されたこともありVR用のアプリは海外製が多いですが、コロプラの「白猫プロジェクト」など日本製のものもいくつかあります。スマートフォンで行うためスマートフォンの電池がなくなると使えなくなることが難点です。満タンに充電しても連続で2〜3時間ほどのようです。また、サムスンの製品なのでスマートフォンもサムスンのGalaxy S6かGalaxy S6 edgeでしか使えません。価格は税込2万6770円~で、大手家電量販店のオンラインショップにて買うことができます。
◎ StarVR/Starbreeze
StarVRはスウェーデンのゲームスタジオStarbreezeが開発しているHMDですが、とにかく機能が他を圧倒しています。視野角はほかのHMDが100度前後であるにもかかわらず210度、解像度もOculus Riftが2160×1200ドットなのに対して5160×1440ドットもあるのです。どうしてそこまで違いが出るかというと、ほかにHMDが1枚のディスプレイパネルを使っているのに対して、StarVRは左右1枚ずつの計2枚使われているから。ただ、そのぶんHMDは当然大きくなり、重くなってしまいます。しかし、その弱みを補って余りあるほどの視野の広さと映像の美しさがStarVRにはあります。ちなみに水平方向210度というのは人間の視野の75%ほどなのだとか。こちらはまだ試作機なので、今後改良していけば重さという難点も改善していくかもしれません。発売時期は2016年後期を目標にしているとのことです。
◎ FOVE/FOVE社
FOVE社は2014年5月に創業したばかりのスタートアップ企業で、FOVEを作るために立ち上げた企業です。FOVE社は一歩先を見ていて、ここまで紹介してきたようなHMDを第2世代のVRと呼び、自分たちは第3世代のものを作ると宣言しています。では、FOVEがほかと何が違うのかというと、最も大きな違いは視線追跡技術です。ヘッドトラッキングの場合は常に頭を動かしている必要があり、長時間使用すると疲れたり気分が悪くなったりしてしまいますが、視線で操作ができれば長い時間使ってもそのようなことは起きません。ほかにも視線追跡技術で多くのことが可能になるようですが、FOVEはまだ開発段階。今後さらに改良していき、2016年の春に開発者向けキットを出すことを目標にしているとのことなので、ほかのHMDより少し遅れての発売になるかもしれません。
■ 注目のゲーム6選
開発が進んでいるのはハードの部分だけではありません。ソフトでもさまざまな新しいゲームが生まれてきています。まだデモとして出てきているだけですが、面白そうなものがたくさんありますよ。
◎ EVE Valkyrie(Oculus Rift・Project Morpheus)
VRゲームでまずやってみたいのは大迫力の銃撃戦が行われるシューティングゲームではないでしょうか?HMDをつければ、あたかも自分がコックピットに入っているかのような臨場感が味わえるはずです。
◎ SEGA feat. HATSUNE MIKU Project: VR Tech(Project Morpheus)
ボーカロイドである初音ミクのライブに参加しているかのような気分が味わえるこのゲーム。バーチャルな存在である初音ミクとVRゲームは相性抜群で、初音ミクファンは熱狂できること間違いなしです。
◎ Oculus Oculus Revolution(Oculus Rift)
名前を見てもわかる通り、かつて大流行した「ダンス・ダンス・レボシューション」のVR版です。ただ、これは個人で作ったもののようなので実際に製品化されるのかはわかりません。
◎ KITCHEN(Project Morpheus)
KITCHENという題名ですが料理ゲームなどではなくホラーです。臨場感、没入感を味わえるということでホラーゲームはより恐怖を感じることに…。怖すぎるせいなのか撮影禁止で、探しても動画どころか写真すらありませんでした。どれだけ怖いのかは実際にプレーしてみてのお楽しみですね。
◎ Hover Junkers(HTC Vive)
こちらはゲーム内に自分のペットを登場させることができるというゲーム。あくまで制作過程で作ってみただけでゲームの本筋とは関係ないようですが、仮想世界にペットも連れていけるような時代もいずれ来るかもしれません。
◎ Summer Lesson(Project Morpheus)
サマーレッスンはデモが公開されて以来、大きな話題になりました。アメリカからホームステイに来た女の子に日本語を教えるという設定なのですが、「本当にそこにいるみたいで緊張した」「恋をしてしまった」という人が続出。これが発売されたら現実世界に戻って来られなくなる人が出てくるかもしれません。
■ 待ちきれない人は秋葉原と名古屋へ
ここまで読んで、今すぐにでもやりたい!と思った方もきっといますよね。しかし、先にも書いたようにGear VRを除けばまだ一般向けの発売はされていません。ただ、2016年まで待たなければいけないかというと、実はVRゲームを体験できる場所があります。PCショップのG-Tuneでは、秋葉原にある「G-Tune:Garage」と「名古屋ダイレクトショップ」にてOculus Rift DK2(開発者向け第2弾)の展示と体験が常時行われています。全13種類のゲームから選んで遊べるので、発売が待ちきれないという人は一度行ってみてはいかがでしょうか?
■ 仮想世界はすぐそこに
ここまで書いてきたように、まだ正確な発売日が未定であったり試作機の段階であったりとわかっていないことも多いですが、2016年がゲームの大きな転換点になるというのは間違いなさそうです。ゲームが大好きな人はもちろん、日々の仕事や人間関係で現実世界に少し疲れてしまっている人、現実に嫌気がさしている人も、もう少しの辛抱です。仮想世界に逃げ込める2016年はすぐそこまで来ていますよ。
(著&編集:nanapi編集部)