今夜が、大きな分岐点になるかもしれません。
90年代のMac専門雑誌を読むと、そこには独特の熱気があります。編集者の情熱も読者の関心も、向く先はハードウェアの進化にあり、そこにテクノロジーへのロマンを感じる時代でした。私も幼い頃、自宅にApple IIciが来た日のことを覚えています。「未来が来た」と、幼心に感じたものでした。
時は過ぎて2012年2月、OS X「Mountain Lion」が発表されました。すでに「Lion」からiOSの搭載が始まっていましたが、このバージョンから本格的にiOSの機能がMac OS Xに搭載されるようになります。それは、Mac OS XとiOSがシームレスになるということで、デスクトップメインの時代に終わりを告げる象徴的な出来事でした。
当時発表された統計を見ると、アップルが28年間販売してきたMacは1億2200万台。ですが、iOSデバイスの販売台数は1年間で1億5600万台でした。単価の違いがあるとはいっても、たった1年間でiOSデバイスが28年分のMacの販売台数を抜いています。
ユーザーが求めるものの変化をこの数字が示すなら、それはどんな風に変化したんでしょうか?
リーアンダー・ケイニ―の著書「ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー」に、次のようなくだりがあります。
デザイナーが正しい仕事をすれば、ユーザーは対象により近づき、より没頭するようになる。たとえば、新しいiPadのiPhotoアプリにユーザーは我を忘れて没頭し、iPadを使っていることなど忘れてしまうんだ。
誰もがiPhoneや他のスマホを持つのが当たり前になった今、私たちはSNSやニュース、ゲームといった体験する対象に没頭してしまい、ふだんはスマホを使っていること自体を忘れてしまっているはずです。
もはや多くのユーザーがハードウェアやソフトウェア、コンテンツを所有することへの関心から離れています。そして今、テクノロジーは、ハードウェアベースのものから、よりユーザーエクスペリエンスを重視した概念的なものへとシフトしています。その分岐点がiPhoneの登場と普及ではないでしょうか。iPhoneはIT黎明期の遺産を受け継ぎながらも、それに引導を渡す存在にもなったのだと思います。
今晩、9月9日(日本時間9月10日午前2時)にアップルの新製品発表会があります。これまでとは比べものにならない規模だそうですから、きっとテクノロジーの次なる時代が始まるのを、そこで目撃できるはずです。
ギズモードは、
9月10日午前2時から
アップルの新製品発表会の情報をリアルタイムで更新します。iPhone 6sや新型iPad、新型Apple TVなどが発表されるかも。
リアルタイム更新はこちらのページと@gizmodojapanで。今夜は一緒に楽しみましょう!
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source: Wall Street Journal,Asymco
(高橋ミレイ)