編集部が注目する声優に目指したきっかけや印象的なお仕事、そしてプライベートまで、気になるあれこれについてインタビューを行い、さらに撮り下ろしのグラビアも交えて紹介する人気企画「声優図鑑」。
第82回となる今回は、テレビアニメ「干物妹!うまるちゃん」土間うまる役、「わしも」ひより役などを演じる田中あいみさんです。
――「干物妹!うまるちゃん」のうまるちゃんは、あっという間に人気キャラクターになりましたね。役が決まったとき、どんな気持ちだった?
田中:(他作品で)なかなかオーディションで役が決まらず、落ち込んでいたときにやっと受かった役だったんです。だから、外で電話を受けたとき、周りのことを気にせず叫びまくってしまったくらい嬉しかったです(笑)。その後すぐ家に帰ったんですけど、扉をパタンと閉めた後にあらためて「私がうまるちゃんだ」と実感がわいてきて、泣いてしまいました。お仕事で泣いたのは初めて。それまで悔しいことばっかりだったので。
――じゃあ、うまるちゃんへの思い入れも強い?
田中:オーディション前に原作を読んだとき、うまるちゃんのことをすごく気に入ってしまって。この役ができたら絶対楽しいだろうなって思ってたんです。オーディションのとき、思い入れが強くなりすぎないように気を付けたくらいです。
――オープニングテーマ「かくしん的☆めたまるふぉ〜ぜっ!」は、うまるちゃんの魅力全開ですね!
田中:「家うまるちゃん」「外うまるちゃん」が交互に出てくるような曲なので、そのギャップを表現できたらおもしろいかな、と思いながら歌いました。実際にオンエアされてから、みんなが「UMAぢゃないよ、うまる!」とか「ハイ!ハイ!」っていう間の手にすごく注目してくれて。それに、スタッフさんのこだわりで入っているゲームっぽい音声にも気づいてくれて。みんなの意見を聞きながら、あらためていい曲だな、愛されている曲なんだなって感じています。
――「うまるが家でかぶっているアレ(ハムスターのフード)」とか、ネコロンブスBigぬいぐるみにも注目が集まっています。
田中:ネコロンブスは、作中のじゃんけん大会でゲットしたぬいぐるみなんですけど…じつは私も予約しました(笑)。原寸大で130cmくらいあって持ち歩くのは大変なので、ネットで予約を(笑)。
――自宅で「うまる化」しそう(笑)。そして、昨年から演じている「わしも」のひより役は、どんな女の子ですか?
田中:「わしも」は、去年の特別版の評判がよくて、今年からレギュラーになったアニメです。ひよりちゃんは、誰にでもかわいいって思ってもらえるような、天真爛漫で元気な女の子ですね。おばあちゃんがいなくなったことが本当に寂しくて、パパが作ってくれたおばあちゃん型ロボットが大好きになるっていうお話です。
――「ラジオどっとあい 田中あいみのよ〜い、ドン!」や「月刊ガガガチャンネル」ではラジオのパーソナリティも担当されていますね。
田中:「ラジオどっとあい」は、2年くらい前、事務所に所属してすぐに担当したので、右も左もわからないまま…。できれば、もう一度やり直したいです(笑)。「ガガガチャンネル」は毎回ゲストの方がいらして、ときどきムチャブリもあるので、鍛えられています(笑)。
――ところで、声優を目指したきっかけは?
田中:真剣に声優になるぞって決めたのは、養成所に入った後でした。母の友人がすすめてくれまして。それまで、声優という職業は知ってましたけど、部活みたいな感じでバンドのギターボーカルをしていたし、絵を描くのも好きだったので、進路を決めるときに挑戦したいことがいくつかあったんです。
――養成所で、声優になりたい気持ちが高まったと。
田中:声優の専門学校に通ってから養成所に来た方とか、とにかく絶対に声優になりたい! っていう熱意をもっている方が周りに多くて、私もお芝居をする人になれるかもしれない、と思って。そのあたりから、真剣に「81プロデュースに絶対に所属するぞ!」って思いました。いろいろあったんですけど2年間頑張ってよかったなって思います。
――所属後、いくつかのオーディションに落ちてしまったときは、くじけそうなこともあった?
田中:ありましたね。特に、原作が好きな作品は思い入れがあるし、ファンでもあるから、オーディションに受からないと本当に落ち込んでしまって。でも、お母さんがいつも励ましてくれました。「あなたにしかできない役が絶対にあるから」と。お母さんの励ましって、たとえ根拠がなくても納得するんですよね。「うまるちゃん」が決まったときも、お母さんが「やっと出会えたね!」って喜んでくれたから、私も「うまるちゃんに出会えたんだ」って思えました。
――いいお話ですね…。所属後しばらくは、アルバイトもしていましたか?
田中:カルディっていう輸入食品のお店で働いていました。コーヒーをたくさん売っているお店で、コーヒーって、一つ一つ酸味があったり、マイルドだったり、味が違うんですよね。最初は飲めなかったんですけど、飲み比べをしているうちに好きになりました(笑)。
――では、小さいときに見ていたアニメは?
田中:「鋼の錬金術師」です。小学校のとき、友達からマンガを貸してもらったらすごくおもしろくて、アニメも見始めて、声優という職業を知るきっかけにもなりました。主人公のエド役は少年が演じていると思っていたんですけど、本に紹介されているキャストさんを見たら、すごくきれいなお姉さんで。それが朴璐美さんでした。
――他にもありますか?
田中:「おおきく振りかぶって」は今でも大好きです。最初は野球のルールさえ知らなかったんですけど、野球のドキドキ感が伝わるような世界観がすごく好きになって。ルールがなんとなくわかってくると、すごく忠実に作ってあることもわかってきて、このアニメをきっかけに高校野球が好きになったくらいです(笑)。
――高校野球のどんなところがおもしろい?
田中:こんなにドラマがあるんだなって。「おお振り」では、モノローグがしっかりあって、たとえば捕手が何を考えているのか、投手が何を不安に思っているのか、わかるんです。それを知ってから高校野球を見ると、投手が首を振ったときに、何を要求しているのかまでは私にはわからないですけど、「何がなんでもキメたい!」という気持ちが伝わってくるし、嬉しいときはめっちゃ笑顔だし。
――応援しているチームはいる?
田中:試合によって違うんです。本当は全部勝ってほしいですけど、そういうわけにもいかないので(笑)。勝敗というよりは、球をこぼしちゃった内野手とか、ちょっと焦っている投手とか、一人一人に注目して応援したくなっちゃいますね(笑)。
――では、ジャンルに関係なく「好きなもの」を3つ教えてください!
田中:1つ目は、猫です。基本的に、Twitterとかでも写真を載せているマンチカンのヤックルのことなんですけど。うちにいる猫たちのうち、ヤックルは最近飼い始めたばかりの子猫で、まだやんちゃだから、唯一、一緒にあそんでくれるんですよ(笑)。だから、ヤックルのことばっかりかまってしまう(笑)。
――2つ目は?
田中:おやつの時間、です。帰りがけに「今日はこれを食べる!」とデザートを選んで帰って、お風呂上がりとかに、準備をしておやつを食べるんです。基本は甘いもので、最近はアイスが好きです!
――3つ目は?
田中:夏! 季節のなかでいちばん好きです。まぶしくて、楽しくて、ずうっと前向きでいられるというか。冬は寒くて、指とかも痛くなっちゃうから(笑)。今年はちょうど「うまるちゃん」が夏アニメだったのもあって、「夏が始まった!」という気持ちになりました。
――夏らしい場所には出かけた?
田中:花火大会に行きました! 川辺に座って見られる場所があって、毎年、養成所とかで一緒だった同期の子と行ってるんです。その子たちとは、年に4回くらい集まるくらい仲が良くて、みんながみんなのことを大好きなんです。今度プールにも行く予定です!
――仲のいい声優はいますか?
田中:同じ事務所の高橋李依ちゃんとは、よくご飯を食べに行きますね。伊達朱里紗ちゃんとは、家に泊まりに行くくらい仲がいいです。
――休日の過ごし方は?
田中:まず、目覚ましをかけません! 起きたいときに起きようと思っていて。起きた後は、まずヤックルのことを全力でかわいがります。しばらく遊んでいないと、スネちゃうんですよね。ムッとして、名前を呼んでも来ないし(笑)。その後は、あまり計画を立てることはなく、ギターを弾いたり、友達と鎌倉の海を見にドライブに行ったりします。
――趣味は読書ということですが、おすすめの本はある?
田中:タイムスリップするような物語が好きで、最近読んでおもしろかったのは、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」。不思議なタイトルに惹かれて読んだんですけど、本当に感動できるお話なので、おすすめです。
――これから演じてみたい役はありますか?
田中:男の子を演じたいです! 事務所に所属してすぐの頃は、男の子役が多くて私にヒロインが演じられるとは思っていなかったんですけど。最近はうまるちゃんとか、ひよりちゃんとか、かわいい女の子も演じさせていただいているので、いつかメインで男の子の役をやりたいですね。
――ある意味では、今がスタートラインですね。これから新たな挑戦が増えていくと思いますが、「これだけは変わらないでいたい!」というこだわりはある?
田中:作品に対する愛情です。役が決まると、その作品のことが大好きになっちゃうんです。自分が演じるキャラクターのことも、誰よりも好きって言えるくらい。もし作品が増えたとしても、うまるちゃんやひよりちゃんと同じくらい、キャラクターのことを大事に思っていたいです。
――この記事を読んでくれた読者にメッセージをお願いします!
田中:まだまだ駆け出しですが、お芝居も歌もお話も、さらにうまくなれるよう、少しずつ成長していけるよう、今の私にできる精一杯で取り組んでいこうと思います。そして、私が演じることで、そのキャラクターのことをもっと好きになってもらえたら嬉しいです。田中あいみという名前や、演じたキャラクターが、誰かの記憶にずっと残るといいなと。これからも頑張りますので、よろしくお願いします!
――ありがとうございました!
次回の「声優図鑑」をお楽しみに!
◆撮影協力
取材・文=麻布たぬ、撮影=山本哲也、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト」