言い換えるなら、人の感情を読み取るテクノロジーなんです。
9月9日にiPhone 6s/6s Plusとともに発表した3D Touchは、アップルにとって重要なテクノロジーでした。しかし、その開発の道のりは長く、決して平坦なものではなかったようです。
ジョニー・アイブを始めとするアップルのエグゼクティブたちは、多くの課題を乗り越えながら3D Touchの開発をしてきた舞台裏について、ブルームバーグのインタビューに答えました。
その中で、ユーザーインターフェース設計の責任者Alan Dye氏は、「必然性のある設計」ことを何度も話し合った、と語っています。ユーザーが無意識のうちに3D Touchを使うような設計にしたいという意図が、そこにあったからです。
ワールドワイド・プロダクトマーケティング担当上級副社長のフィル・シラー氏は、3D Touchはアップルがこれまでに開発したテクノロジーの中で最も難しいものだった、と語ります。しかもそれは、すぐに飽きられてしまうようなものはでなく、ずっと使われ続けるものでなければいけませんでした。開発には、多くの才能あるエンジニアをふくめた膨大な資産が長い期間にわたって投じられます。もし、ローンチした1カ月後に忘れ去られてしまうようなことがあれば、それらが全てムダになってしまいます。
ソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏は、決して妥協することなく、誰もにとって、そのすばらしさを納得できるデザインであることを求めました。使った瞬間に「こういうものが、欲しかった!」と言えるようなものでなければならなかった、と語っています。
フェデリギ氏は、そのようなデザインが完成した後、今度は逆転の発想が求められたことについて語ります。
最初は、この薄いデバイスが圧力を検出するように設計したいと考えてきましたが、実際に検出するべきなのは、圧力をかける人間の意志や感情なのです。ですが、機械が直接心を読み取ることはできません。
私たちは、感情が人の指の動きに、どのように結びつくかという仕組みを理解した上で、技術的なハードルを越えながら3D Touchを設計しなければいけませんでした。たとえば、力のかけかたによって感知する圧力を減算できるセンサーも、そのひとつです。
3D Touchの開発意図についてのジョニー・アイブの言葉は、アップルのデザイン思想を端的に表しているのではないでしょうか。
この開発には、気が遠くなるほどの年月がかかりました。物理ボタンでもこと足りるところを、どうしてわざわざ3D Touchにする必要があると思いますか?
まあ、その答えはでなくても、いざそれを使えば、自然とそれが日常の一部になります。本当に便利なものや、世の中を進歩させる製品は、そういうものですから。
誰も、それに関心を持たなくても、自然と生活の中で使うようになる。それこそが、私たちの目指すデザインなのです。
source: Bloomberg
(高橋ミレイ)