学校の勉強の成績はたいしたことはないが、ビデオゲームを巧みに攻略して遊ぶ子どもたちがいる。こういう子どもは実際には知能が高く、勉強をしていないだけなのだろうか? これまではなかなか判然としなかったこの案件へ最新科学研究が切り込んだ。それによれば、やはりこのような子どもたちは“やればできる子”だったのだ。
■ビデオゲームがうまい子どもは知能が高い
先月にスペイン・マドリッドの研究チームが科学誌『Science Direct』に発表した学術論文のテーマはなんと、「ビデオゲームでIQが測れるのか?」であった。そしてその研究の結果は……、イエスということだ。
研究チームが行なった実験では、188人の大学生に実験室で12種類のビデオゲームをプレイしてもらい、その後11種類の知能テストが課された。それぞれのゲームプレイで見せたパフォーマンスと、知能テストの成績を詳しく分析した結果、市販されている特定のビデオゲームはプレイしている個人の知能を計測できることがわかったのだ。つまりビデオゲームがうまい子どもは知能が高いということになる。「ビデオゲームで示される能力と知能には極めて高い関係があることが明らかになりました」と論文では結論づけられている。
コアなゲーマーであれば、FPSの『コール オブ デューティー』や『クエイク』、リアルタイムシミュレーションゲームの『スタークラフト』などが、まさにプレイヤーの持てる知恵も運動神経もフルに発揮して楽しむゲームであることは周知の事実だろうが、残念ながらこれらの人気のゲームは今回の研究には使われていないようだ。
実験では主にニンテンドーのWiiが用いられ、『Wii Party』、『Wiiでやわらかあたま塾(Big Brain Academy: Wii Degree)』の中の11種類のゲームに加えて、PCゲームが1種類使われたのだ。これらのソフトに収録されたミニゲームの「Garden Gridlock」や「Reverse Retention」などを、それぞれの知能の働きに対応させ、記憶、計算、分析、視覚化の4種類に分類して知能テストとの関連性を研究したということだ。
もちろんすべてのビデオゲームが知能に関係していることにはならないが、ゲームばかりやっていて学校の成績が悪い子はやはり勉強をしていないということになるわけで、ゲーム好きの子どもたちにとってはちょっとばかり迷惑な研究だったかもしれない……!?
■ビデオゲームで運動神経も向上する!?
今回はビデオゲームと知能の関係が明らかになったのだが、昨今の研究ではビデオゲームをプレイすることの様々なメリットが判明している。認知機能や動体視力のアップばかりでなく、なんと運動神経も向上させることができるという研究が2012年に発表されているのだ。
オーストラリアのディーキン大学の研究によれば、3歳から6歳の児童でスポーツゲームや格闘ゲームなどのアクションゲームを遊んでいる子どもは、まったくビデオゲームを遊ばない子どもよりも運動技能に優れている傾向があることが分かったのだ。
格闘ゲームなど、瞬時の判断でコマンド入力を求められるビデオゲームは、視覚と手の動きを連動させる神経回路が鍛えられ、結果的に運動神経の向上に結びつくのだ。そしてビデオゲームを通じて向上した運動技能によって、現実の身体運動である「蹴る」、「投げる」、「捕球する」、「ボールをドリブルする」という身体能力が実際に高まるという。
子どもだけではない。ゲームは高齢者の認知機能の改善、動体視力の向上、集中力持続時間の延長、環境適応能力の向上にも効果を発揮するという。遊びを通じて様々な能力が開発できるかもしれないビデオゲームの効能に大きな注目が集まっていると言えるだろう。
(文/仲田しんじ)
【参考】
・The Daly Dot
http://www.dailydot.com/geek/commercial-video-games-measure-intelligence-research/
・Business Insider
http://www.businessinsider.com/video-game-health-benefits-2014-9?op=1