宮城県大崎市で11日午前に起きた渋井川の堤防決壊。押し寄せる水を逃れた住民らは、「他県での出来事」と思っていた濁流による被害を目の当たりにし、息をのんだ。
決壊した堤防の近くにある鹿嶋神社の宮司・渋谷康盛さん(86)は午前4時ごろ、激しい雨音で目を覚ました。近くの田んぼにはあふれるほどの水。「こんな簡単に水が入って不思議だったが、堤防が切れるとは思わなかった」
社務所は床上まで浸水し、隣の自宅近くにも一時、水が迫った。茨城県常総市などの水害を「よそさまの話」と感じていたが、「まさかきょうはこちらを直撃するとは」と驚きを隠せない様子だった。
避難所となった市立古川第五小学校には、午前中に乳児から高齢者まで100人以上が訪れた。中瀬浩子教頭らによると、体調不良を訴える人はいないが、避難した住民らはいずれも疲れた様子で横になったり、不安そうに携帯電話で連絡を取り合ったりしていた。
胸まで水に漬かったり、消防隊員に抱えられたりした人もおり、凍えないよう暖房をつけ、隣の中学校から集めた運動着を提供したという。
近くには孤立し助けを待つ人が20〜30人いる地区もあり、救助の自衛隊ヘリコプターが離着陸できるよう、職員らが運動場からサッカーゴールなどを移して場所を空けた。「無事に来てもらえれば…」。男性職員は祈るようにつぶやいた。