反政府アイドル・制服向上委員会インタビュー「会場まで殺しに行くぞと脅された」 | ニコニコニュース

話題の制服向上委員会に突撃インタビューを敢行(写真/永山あるみ)
デイリーニュースオンライン

 6月13日、神奈川県大和市の主催するイベントにて、自民党や安倍晋三首相を批判する歌詞を含む曲を披露したところ、市から後援名義を取り消される事態に発展したアイドル「制服向上委員会」。

 この騒動をキッカケに名前を知った方も多いかもしれないが、23年もの歴史を持つ由緒正しきグループだ。しかも突然、こうした社会運動を始めたわけではなく、結成当初から今に至るまで、「ボランティア」とアイドル活動を両立させてきたという。2011年には脱原発ソングを披露し、その際にも話題となっている。

安倍政権を批判する歌を披露

 そんな制服向上委員会が、8月29日、渋谷のライブハウスに出演するというので潜入してみた。この日の制服向上委員会は富士急ハイランドで行われた『夢フェス』という、施設で暮らす方や不登校の子ども達、障がいのある方々を対象とした1泊2日のボランティアイベントからそのまま東京に戻ってライブに出演するという強行スケジュールだった。

 白を基調とした制服姿がトレードマークで、流行りのミニスカートではなく、膝丈のスカートを着こなしたいつも通りの姿で登場。年齢は13歳から18歳までと10代のメンバーばかり。

 まさにその名前通りの清楚なイメージで、一曲目の『走れSKi』を歌い上げる。客が自己紹介でメンバーの名前を叫んだり、オリジナルの口上を入れたりするところは、他のアイドルと変わらない。

 しかし、2曲目、齋藤優里彩が「続いての曲は今の安倍政権について歌った曲です。フォスター作曲の『おおスザンナ』の替え歌で『Ohズサンナ』と曲紹介をするとその大胆なタイトルに会場からはかすかな笑いが沸き起こる。

「諸悪の根源 自民党♪ Oh ズサンナ その政治♪ 戦後から 何も変わらない♪」

『おお スザンナ』のメロディーに合わせ、自民党議員から猛反発を食らった替え歌を披露。アイドルならではの可憐な雰囲気で、この硬派な歌詞をかわいらしく歌うというギャップが新鮮だった。

 更に、曲の合間でメンバーの1人が前方に出て「脱原発、戦争法案廃案、辺野古基地施設反対といった、多くの国民が声を挙げて思いを伝えているのにも関わらず、政府は何も聞いていないなと私は思います。政府はもっと国民の声に耳を傾けるべきなんじゃないかなって思います!」といった具合に政治的主張を語ることもあり、そのときばかりは、ファンもアイドルのノリから外れ、「そうだそうだ!」と喝采が沸き起こる。まるで何かのデモのようである。

 コーラスを綺麗にハモったり、アイドルらしい振付けだったり、メンバーが終始笑顔でかわいらしかったりと、アイドルとしての完成度は高いだけに、その異様さが際立っていた。

 ライブ終了後、制服向上委員会のメンバーにインタビューした。インタビューに応じてくれたのは、齋藤優里彩(18)、木梨夏菜(17)、西野莉奈(16)、齋藤乃愛(15)の4人だ。

 6月13日の騒動は、彼女たちにどういう影響をもたらしたのだろうか。

「私たちは月に一回定期公演をやっていて6月13日の翌日にも定期公演があったんですが、事務所に『会場まで殺しに行くぞ』っていうメールが来たりして、警察の方もずっと待機してくださっていましたが、とても怖かったです」(木梨夏菜)

 いきなり物騒な話が飛び出してきた。当初はメンバーたちもかなり戸惑っていたようだ。

「ひどい言葉はたくさん受けすぎて、最初から私たちも強い意志だったわけではなくて、“子どものくせに”とか“大人に操られている”だとか、“制服向上委員会解散しろ”って言われたりしました」(齋藤乃愛)

 中には「ブサヨ」とか、「売国奴」といった言葉も浴びせかけられたようだ。しかし、その一方で応援コメントもたくさん受けるようになった。

 そんな中、7月以降、安保法案の賛否が世間で渦巻くようになり、彼女たちも高校生グループの「ティーンズ ソウル」が主催する反安保デモなどに参加した。

 安保法案の話となると、俄然とメンバーの口調も熱くなる。

「7割以上の人が安保法案に反対しているのにその意見を聞かずに強行採決するのは本当に許せないなって思います」(齋藤優里彩)

「私のおばあちゃんも実際の戦争体験者でよく戦争の話をしてくれるんですけど、毎回言うのが“次の世代までずっと平和を守って”って言うんです。私たち世代が平和を守っていかなきゃいけないし、歌で少しでも伝えていければいいなって思いますね」(齋藤乃愛)

 歌で平和を伝えていきたいと語った彼女たちの目には迷いがない。彼女たちは10代とは思えないような、しっかりとした意見を述べた。

 実は、今回インタビューするまでは、政治的な主張は事務所が用意したもので、全て言わされているのではないかという先入観も持っていた。しかし、彼女たちは自分の頭で考え行動することをモットーに、練習以外にも毎週、「勉強会」なども催し、日々、社会勉強に励んでいるようである。

 その勉強会の際には、メンバーの何人かがあえて安保賛成派の意見に回り、討論するという試みも行い、多様な視点から物事を考えるように心がけているのだという。

 アイドルならではのかわいらしさに加え、社会と対峙する少女たち──制服向上委員会の今後の活躍に期待したい。

(取材・文/永山あるみ)