東芝は8月5日、Windows 10プリイントールのAtomプロセッサ搭載2-in-1を2機種発表した。10.1型と8.9型のモデルの内、編集部から後者が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。
東芝が8月5日に発表したのは10.1型の「dynabook N40」と、8.9型の「dynabook N29」。パネルのサイズを除くと、両モデルの一番の違いはプロセッサだ。どちらもAtomであるものの、dynabook N40は、コードネーム“Cherry Trail”と呼ばれているAtom x5-Z8300(4コア、1.44GHz)を搭載している(2GBメモリ、64GBストレージモデルで9万円前後)。14nmプロセスとなり、“Bay Trail”と比較して内蔵GPUの演算ユニットが増え、より省電力化が進み加えてパワーアップした。
筆者は当初、Bay TrailからCherry Trailへは直ぐに移行するものとばかり思っていたが、実際にはCherry Trailを搭載しているのはMicrosoftのSurface 3など数が少ない。同じアーキテクチャのBraswell搭載機を試用しても、Bay Trailとの差を感じ、もっとCherry Trailを採用したタブレットや2-in-1が出て欲しいところだ。
そして今回紹介する8.9型の「dynabook N29」は、ポピュラーなBay TrailのAtom Z3735Fを搭載したモデルとなる。主な仕様は以下の通り。
東芝「dynabook N29」の仕様 | |
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プロセッサ | Intel Atom Z3735F(4コア、1.33GHz、キャッシュ 2MB、SDP 2.2W) |
メモリ | 2GB(DDR3L-1333) |
ストレージ | 64GB SSD |
OS | Windows 10 Home(32bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics |
ディスプレイ | 8.9型WUXGA(1,920×1,200ドット)、10点タッチ対応、Micro HDMI |
ネットワーク | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス(本体) | システムコネクタ、音声入出力、前面200万/背面500万画素カメラ、Micro USB、microSDカードスロット |
インターフェイス(キーボードドック) | システムコネクタ、USB 2.0、SDカードスロット |
センサー(本体) | 電子コンパス、加速度センサー、ジャイロセンサー |
サイズ/重量(本体) | 235×161×9.8mm(幅×奥行き×高さ)/約479g |
サイズ/重量(キーボードドック込み) | 235×170.6×19.9mm(同)/約989g |
バッテリ駆動時間(本体) | 約6時間 |
バッテリ駆動時間(キーボードドック込み) | 約12時間 |
価格 | 8万円前後 |
プロセッサは8型前後のタブレットでお馴染みのSKU、Intel Atom Z3735F。4コア4スレッドで、クロックは1.33GHzから最大1.83GHz。キャッシュは2MBで、SDPは2.2W。メモリはDDR3L-1333の2GB、ストレージは64GBのSSDを搭載。OSは32bit版のWindows 10 Homeで、大手メーカーとしては中々早いタイミングでの搭載となった。
ディスプレイは光沢のある10点タッチ対応8.9型WUXGA(1,920×1,200ドット)液晶。このクラスのタブレットで縦が1,080ドットでないのは珍しい。ポートレート時にWebなどが間延びせず表示できるため、ポイントが高い。
本体のインターフェイスは、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 4.0、システムコネクタ、音声入出力、前面200万/背面500万画素カメラ、Micro USB、microSDカードスロットを搭載。センサーとして電子コンパス、加速度センサー、ジャイロセンサーを備え、単独ではタブレットとして作動する。
キーボードドックはバッテリを内蔵し、USB 2.0、SDカードスロット、システムコネクタを備え、本体と合体できる2-in-1となっている。
サイズは本体のみで235×161×9.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約479g。キーボードドック込みでは235×170.6×19.9mm(同)で、重量は約989g。8.9型だけあって、単体にしても合体時にしても中々軽い。
バッテリ駆動時間は、本体のみで約6時間、キーボードドック込みで約12時間。本体のみでは多くのAtom Z3735F搭載機と変わらないものの、合体時の12時間駆動は魅力的だ。
価格は8万円前後。ほぼ同じ構成の8型タブレットが2万円前後から購入可能なのを考えると、大手メーカー製で高品質な1,920×1,200ドットパネル搭載の2-in-1と言えども、高価なのは否めない。
【お詫びと訂正】初出時に、写真の説明において本体とキーボードドックの重量が逆になっておりました。お詫びして訂正させていただきます。
筐体は8.9型というだけあって、単体時も合体時も小さくて軽い。タブレット時はキーボードドックとバランスをとるためフチが広いこともあり、(個人差はあるだろうが)片手で握るのは難しいものの、片手でつまんで持つのは大丈夫だ。色はトップカバー/キーボード周辺がゴールド、キーボードドックの裏は白でまとめられ、ビジネス用途でも個人用途でもマッチする。
前面中央上に200万画素前面カメラ、背面右上に500万画素背面カメラ、本体左側面にWindowsボタン、Micro HDMI、音声入出力、Micro USB、スピーカーを備える。下側面にドックコネクタと固定用の凹み、右側面に電源ボタンと音量ボタンが配置され、上側面には何もない。充電は本体側にあるMicro USBを使用する。
キーボードドック側は、右側面にUSB 2.0とSDカードリーダがあるのみ。着脱は簡単で用途に応じて使い分けも容易。付属のACアダプタは、実測でサイズ約42×40×25mm(同)、重量47gと小型だ。
8.9型WUXGAの液晶パネルは「高輝度・高視野角液晶」と明記しているだけあって、明るさ/コントラスト/発色、そして視野角も良好で、かなり品質の高いパネルを採用してると思われる。10点タッチもスムーズだ。だたしこの画面サイズにWUXGAの解像度なので、デスクトップ使用時は文字や各パーツが小さい。
キーボードはテンキーレスのアイソレーションタイプ。フットプリントが狭いだけに、キーピッチは約17mmだが、キーはしっかりしており快適に入力できる。ただ[DEL]キーが[Fn]+[BS]になっているなど部分的に歪な並びになっているのが残念なところ。タッチパッドは物理的なボタンの無い1枚プレートだ。
振動やノイズは皆無だが、発熱は本体の裏、(ランドスケープ時)左側が全体的に暖かくなるため、タブレットとして使う際には少し気になるかも知れない。スピーカーは左側のみのモノラルなので、とりあえず音が出るというレベルだ。本格的に楽しむならBluetoothスピーカーなど、外部デバイスと併用するのが望ましい。
OSは32bit版のWindows 10 Homeを搭載。2-in-1なので、単独使用時は自動的にタブレットモード、キーボードドック装着時はデスクトップモードへ切り替わる。なおタブレットモード時、Windows 8.xと違いスタート画面が縦方向へスクロールする(Windows 8.xは横にスクロール)。2画面目にあるアプリがプリインストールとなる。
デスクトップは、最近シンプルになっている海外製とは対照的に、ショートカットを多数配置。いかにも国産機という雰囲気だ。
ストレージには64GBの東芝製SSD「064GE2」を搭載し、実質Cドライブのみの1パーティション。BitLockerで暗号化されており、約57.5GBが割り当てられ、空きは45.3GB。Wi-FiはReltek製だ。
プリインストールのWindowsストアアプリは、TripAdvisor、TVコネクトスイート、あんしんWeb、シュフー チラシアプリ、ぱらちゃんカフェ、思い出フォトビューア、思い出フォトビューア クッキングプラス、TruCapture、TruRecorder。これらは8.x系ストアアプリで、Office Mobile(Word/Excel/PowerPoint/OneNote)はUWPアプリだ。
「TruCapture」はホワイトボードに書かれた情報を斜めから撮った際に傾きを補正したり、書類を撮った際により文字を見やすくするソフトウェア。傾き補正に関しては、以前紹介したHP「Elite x2 1011 G1」も「HP Pagelift」というアプリを搭載しており、ビジネス用途向け端末の中で少し流行りなのかも知れない。
「TruRecorder」は音声を分析して話者を識別でき、トラックを分離して表示、トラック毎にオン/オフする機能を持つ録音アプリ。議事録作成などに便利そうだ。
「TVコネクトスイート」は、DTCP-IPに対応し、録画した地デジの再生/リモート視聴/ダビングなどができる。手持ちのnasneでチェックしたが、問題なく作動した。
プリインストールのデスクトップアプリは、i-フィルター6.0、PC引越ナビ、ウィルスバスタークラウド、ぱらちゃん、動画で学ぶシリーズ、筆ぐるめ22などのほか、PCシステム情報、Service Station、システムモニタ、パスワードユーティリティ、WinZip、アプリケーションの再インストール、バックアップナビ クラウド、東芝お客様登などのツール/管理系だ。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchと、CrystalMark(4コア4スレッドで条件的には問題ない)を実行した。
winsat formalの結果は、総合スコア4.1で、プロセッサ6.1、メモリ5.5、グラフィックス4.1、ゲーム用グラフィックスn/a、プライマリハードディスク7.1。なおメモリのスコアは搭載メモリが3GBに満たない場合は強制的に5.5となってしまうが、Bandwidthは7275.02197MB/sだった。Atom Z3735F搭載機としてみると、3台のスコアがなく少し速めといえる。
PCMark 8 バージョン2はHome(accelerated)テストを実行。スコアは1015だった。CrystalMarkの結果はALUが20919、FPUが17280、MEMが18535、HDDが15208、GDIが3783、D2Dが2706、OGLが2553。CrystalMarkのALUとFPUのスコアが若干高めだが、PCMark 8の結果は気持ち低い。
BBenchは、本体単独で電源オプション/バランス、バックライト/最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンで測定。結果はバッテリ残2%で24,630秒/6.8時間、残5%で23,930/6.6時間となった。キーボードドック装着時は、バッテリの残1%で48,325秒/13.4時間(残5%で46,584秒/12.9時間)となった。Atom Z3735F搭載機としては平均的であるものの、公称通りキーボードドック装着時で12時間超えはなかなか魅力的と言えよう。
以上のように東芝「dynabook N29」は、8.9型1,920×1,200ドットのパネルとAtom Z3735Fを搭載した2-in-1だ。小型で軽く、キッチリ作られた筐体はさすがと言える。パフォーマンスはAtomなのであまり期待できないものの、合体時のバッテリ駆動時間が12時間なのは魅力的だ。
価格が約8万円と、同クラスのタブレットと比較した場合、明らかに高価だが、大手メーカー製で気楽に持ち運べる2-in-1を探しているユーザーにお勧めの1台だ。