ライドシェアリングで人の流れが変わる?
以前からアメリカの公共交通機関をもっと充実させるべき!と訴えている米GizmodoのAlissa Walker記者。最新の調査結果から、Uberと電車を組み合わせた最適な使い方があるのかも、と考えて始めています。
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Uberがタクシー業界に与えている影響は相当なもの。最近ニューヨークではタクシーを呼べるアプリが登場し、なんとかUberに対抗しようとする動きも出てきました。
さて、Uberの登場で他の交通手段はどのような影響を受けたのでしょうか? 先週私は、Uberがあまり便利になりすぎると、公共交通機関を使う人が少なくなるのでは...と心配する記事を書きました。しかし、WEBメディアのFiveThirtyEightによる調査結果はそうはならない、と主張しているのです。
FiveThirtyEightのチームは、ニューヨーク市内の人々の自家用車、タクシー、公共交通機関、そしてUberの利用動向を、国勢調査と情報公開法に基づく要求で開示されたUber利用者のデータを組み合わせて調査しました。この調査はニューヨークの人口を、収入、交通機関へのアクセスのしやすさによって5つのグループに分割しました。
ニューヨークの人口を5つに分割したもの。収入がふつう〜多く、公共交通機関へのアクセスがしづらい人がUberを使っているようです。
公共交通機関のみを使っている、というニューヨーカーももちろんいます。地下鉄の駅に行きづらい場所に住んでいて、車を買うお金もないという人は、Uberも使えません。収入に応じて車の所有率が増えるだろう、と思うかもしれませんが、ニューヨーク市内に限っていえば、収入が多い人たちが住んでいるエリアは公共交通機関へのアクセスもよく、車を買う必要がありません。こういう人たちは、Uberとタクシー、公共交通機関を組み合わせて使っています。
ここでひとつカギとなる発見がありますね。公共交通機関を使いやすい環境に住んでいる人たちは、収入に関わらず、公共交通機関をよく使う、ということです。Uberは移動手段を補完するものなのです。
この調査はニューヨーク市に限ったもので、少し問題もはらんでいます。というのも、ニューヨークは公共交通機関がしっかり整備されていて利用客も多く、Uberよりも電車が便利な場合も多々あるため、アメリカの他の地域とは状況が異なるからです。一方で、ニューヨークは、アメリカ国内でもっとも公共交通機関の利用者が多く、サンプリング対象となる層も幅広いため、調査対象として最適という見方もできるでしょう。利用者は交通手段に選択肢がある場合、公共交通機関だけを使うのではなく、組み合わせて利用するということがわかります。
公共交通機関がそれほど行き届いていない街についても、このロジックを適用してみましょう。Uber(やLyft、タクシー)だけを使うという人は、お金の面からきっと少ないと思います。しかし公共交通機関とUberを組み合わせることで、通勤などの長距離移動の費用が安くなります。それを実験しているのが、現在フロリダのタンパで行われているUberやLyftと組んで公共交通機関にアクセスをしやすくする「HART」プログラム。駅やバスの停留所、駅から目的地への「ファースト/ラスト・ワンマイル」を結ぶこのプログラムでは、Uberは公共交通機関の利用を増やすのに貢献しているかもしれません。
最後に大事なポイントを。今回の調査では、多くの人がUberを使うことで、自家用車はいらないと答えています。自分の時間を持てることは価値があると答える人も多くいますが、常に公共交通機関を使う方が金銭的にお得だというのです。
以下のグラフは、ニューヨーク市内において、公共交通機関とUberの組み合わせと、車を買う費用を比べたものです。
縦軸が費用、横軸が公共交通機関の利用割合。移動の85%は公共交通機関、残り15%は20ドル以下のUberを利用した場合、車を買うより支出が安くなります。
私のようにUberを使うのに悩んでしまう人が、どのような割合で交通手段を選べばいいか目安がわかりますね。ほとんどの場合(85%)は公共交通機関を使い、たまにUberやLyft、タクシーを使うという組み合わせなら、車を買うよりお得になるということです。
Uberのようなサービスがどんどん安くなることで、公共交通機関を使う人が減り、多くの街が必要としている交通機関のインフラへの資金が集まらなくなる懸念は引き続き残ります。しかし、多くの人がが先ほどの計算をして車を持たないようになれば、渋滞の緩和や大気汚染の改善、駐車場向けスペース削減など、たくさんの恩恵が受けられるようになるでしょう。
以前私が書いた記事に、Uberは「ドライブのアウトソーシング」という素晴らしいコメントがありました。Uberも車ですが、自家用車を持つのをやめて、電車の駅までUberを使うという方法は大きな違いでしょう。一部の都市、そして一部の人たちにとっては、Uberは公共交通機関を使いやすくするものなのかもしれません。
source: FiveThirtyEight
Alissa Walker - Gizmodo US[原文]
(conejo)