もしオフィスに猫がいたら。ついつい気をとられ、仕事が進まないのではないだろうか? 猫好きにはうれしいオフィスであることは想像できるが、猫初心者にとってはどんな使い心地だろう? そんな疑問を抱きつつ猫付きシェアオフィスを取材した。
シェアオフィス兼保護猫シェルター
シェアオフィス「Qstudio」。リノベーションの企画・施行、シェアハウスの企画・運営などを行っている株式会社福岡リノベースが運営する、猫付きのシェアオフィスだ。福岡市中央区に7月にオープンした。
「もともとは自分のオフィスが欲しいと思ったのがきっかけでした」と話すのは運営・管理を担当し、入居者でもある江頭聖子さん。もちろん、自身も大の猫好きだ。取材当日も2匹の猫が元気に走り回っていたが、実はこの猫たち、ただ癒やしのために飼っているわけではない。
「保健所に送られた猫の救出から里親探しまでを行っている団体『福ねこハウス』から預かっている猫たちなんです。引き取り手がないと殺処分されてしまうという現状を入居者や来客の方に知っていただくことも運営の目的としています」と江頭さん。なるほど、「Qstudio」は、オフィスとして活用しながら殺処分を減らすための猫のシェルターにもなっているというわけだ。平日はオフィスとして稼働し、土日は猫を引き取りたいという方を対象とした保護猫の見学会も行っているという。
【画像1】3階まではテナント、4階以上は猫飼育OKの賃貸住宅。キャットステップが設置された部屋もある(写真撮影:アポロ計画)
【画像2】デスクスペース。壁には棚を付けるなど自由にDIYできる(写真撮影:アポロ計画)
【画像3】打ち合わせスペース。壁にはキャットステップを設置予定(写真撮影:アポロ計画)
利用しやすい料金でスタートアップ支援「保護活動と聞くとどうしても構えてしまう部分がありますが、シェアオフィスを利用して普通に猫のお世話をするだけで十分活動に参加していると言えます。ここでは1日2回のエサやりとトイレの処理、仕事の合間に猫をなでるといったできる範囲のことでOK」とのこと。
天神エリアのシェアオフィスの多くは月3万円前後という相場だが、ここでは「猫のお世話」という入居条件があるため、賃料と管理費で月2万円(税別:固定デスク会員の場合)。「スタートアップ支援」と銘打ち、これから起業しようとしている人、ここから巣立っていく猫を応援したいという意味を込めて借りやすい料金に設定されている。
【画像4】保護団体のスタッフが健康チェックやトイレのしつけをしており、手を焼くことはほとんどない(写真撮影:アポロ計画)
【画像5】猫が飛び出さないように、ドアの内側にガードフェンスを設置。ドアを開けておくと風通りも抜群(写真撮影:アポロ計画)
【画像6】猫は苦手な植物が多く、置くだけで死んでしまうことも。江頭さんが調べに調べ、アレカヤシを置いている(写真撮影:アポロ計画)
意外とはかどる!?仕事にもメリハリシェアオフィスを利用している入居者の男性(20代)は、普段は会社員として働き、ボランティア活動の業務を進めるために「Qstudio」を利用している。猫との暮らしは今回が初めてだ。「以前は自宅で作業していましたが、一人だとどうしても根詰めてしまって、仕事が終わるころにはぐったりしていました。でも、猫がいる環境で作業していると不思議とメリハリがつくんです。猫が遊んでほしそうだったらちょっと撫でて自分もだら〜っとゆるんで、猫が一人遊びを始めたら『今だ!』と自分の作業に集中します(笑)」。
アニマルセラピーという治療法があるように、動物が近くにいると、心が癒やされる効果も。働きながら生き物の温もりに触れ、同時に猫の保護活動にも貢献できる。まさに、人にも猫にも優しい新たなシェアオフィスのカタチが始まっている。
【画像7】ちょっと一休み(写真撮影:アポロ計画)
【画像8】たまにパソコンの上にのっていたずらすることも(写真撮影:アポロ計画)
【画像9】おもちゃに興味津々の2匹。好奇心旺盛な子猫だ(写真撮影:アポロ計画)
【画像10】人懐っこく、膝の上でもおとなしくしている猫たち。遊び疲れてデスクの上で眠ってしまった(写真撮影:アポロ計画)
●取材協力