FIFA(国際サッカー連盟)の汚職事件を捜査しているアメリカのロレッタ・リンチ司法長官と、スイスのミヒャエル・ラウバー検事総長が14日、同事件の捜査状況に関する記者会見を行なった。イギリス紙『デイリーメール』が14日に伝えている。
会見では、さらに逮捕者が出る可能性があることを表明。汚職事件に関わった人物を徹底的に追及し、不正な手段で手にいれた財産を突きとめると強く主張した。また、スイス・アルプスの山中にあるアパートメントを含む金融資産を差し押さえていることも公表。金融資産は資金洗浄の目的で使われた疑いがあり、家宅捜査が行なわれ、関係者に嫌疑がかけられているという。
新たな情報に基づく追加の告発があった場合には、FIFAなどのサッカー協会に捜査が及ぶ可能性もある。 リンチ司法長官の会見は5月に14人が1億ポンド(約185億円)に上る不正疑惑で逮捕された時以来となったが、「現在も捜査は進行中であり、5月の時点より拡大しています。新たな証拠に基づき、個人や団体がさらに起訴される見込みがあります」と語った。
一方で、FIFAゼップ・ブラッター会長が起訴の対象になっているかどうかについてはコメントを避けた。しかし、偶然にもブラッター会長は先月、オランダ紙『Volkskrant』にスイス・アルプスのシエールとクラン・モンタナの間に位置しているヴォントーヌに2軒の別荘を所有していると明言していた。
さらに13日には、スイスのテレビ局『SRF』が、FIFAの最新スキャンダルをスクープ。ブラッター会長が2回のワールドカップ・テレビ放映権をFIFA元副会長のジャック・ワーナー氏に破格値で売却した契約書の存在を明らかしていた。ワーナー氏はこの契約により1100万ポンド(約20億円)の利益を受けたという。
スイスでワールドカップ開催地を巡る汚職事件とアメリカでテレビ放映権とマーケティング契約について別個に捜査が行なわれているが、いずれも長期戦になる見込み。リンチ司法長官は、14人全員を同時に起訴したいという意向を持っているが、11人がアメリカへの送還に応じていない。
また、ラウバー検事総長は捜査には時間がかかると明言。スイス金融情報機関が121の不正な銀行口座の情報やFIFA本部で差し押さえたコンピューターから得た11テラバイト(約9億ページ相当)に上る電子データを分析中だという。「捜査の性質上、時間がかかるものです。まだハーフタイムにも達していません。あらゆる報告に関して個別に、新たに立件するべきなにか、すでに捜査中のものに該当するのか判断し、また、その財産を凍結すべきかどうかも決定しなければならないのです」と話している。
さらに、リンチ司法長官はスイスで行なわれた定例の国際司法会議で、「協力の精神でスイスとアメリカはサッカー界の収賄事件を捜査していきます。世界中の司法がともに立ち上がり、汚職を根絶し、犯罪者に法の裁きを受けさせることを再び明確にしました。犯罪者がどこにいようと、どれだけ複雑な犯罪であり、どれだけの権力を持っていようと関係ありません」と、スイスとアメリカが協力してサッカー界の汚職と戦っていくと断言。
「我々のメッセージ明確です。法を免れることができる人はいません。不正を働いた組織が法の手から逃れることはできません。正義のために全員で協力し献身的に戦っています。我々から逃れることができる犯罪は存在していません」と力強く語っていた。