中国人観光客が各地を訪れ、大量の土産品などを購入するいわゆる“爆買い”は、日本でも見慣れた光景となった。その中国人観光客は韓国にも多く訪れており、韓国政府にとっても貴重な“お得意さま”になっている。
日本人も多く訪れる観光名所・明洞には、過去5年間で約800万人の中国人観光客が訪れたといわれている。明洞の店々には中国語表記の案内板が数多く掲げられており、中国語をしゃべるスタッフによる呼び込みも盛んに行われている。最近、日本からの観光客が減っているせいもあるのだろう。金払いのよい中国人観光客をつかまえようと奔走する韓国人スタッフの姿を、あちこちで見かけることができる。
ただ、その趨勢に変化の兆しが。というのも、韓国人の不誠実な対応に不満を募らせた中国人観光客が、「もう来たくない」と話すケースが増え始めているという。
韓国メディアの取材に答えた20代の中国人女性は「タクシーに乗ると目的地に行くのではなく、あちこちを連れ回された。無理やり店に連れていかれたこともある」と証言。また、40代の男性は「家族で来ているのに、飲み屋のキャッチにしつこく勧誘されて恥ずかしかった」などと話している。
さらに最近では、中国人を“釣る”ために有名芸能人の名を利用することが増えているという。例えば、明洞のハナ銀行は、自社の広告モデルであるキム・スヒョンの名を冠した博物館をオープンした。といっても名ばかりで、入り口にキム・スヒョンの広告写真と、撮影時に着用した服を着せたマネキンがいくつかあるだけ。とても博物館とはいえない、貧相な造りである。キム・スヒョンは、出演したドラマ『星から来たあなた』が中国で成功し、大人気を得ているのだが、博物館を楽しみに訪れた中国人の多くが失望してその場を後にするという。
「中国人が韓国に押し寄せるのを、好意的に見ている韓国人は少なくない。ただ落とす金額が大きいので、商売上よい顔をしているだけです。大勢の日本人が韓国に来ていた時にも同じような不満が多かった。そのため、観光地としての人気も下がっている。単純に円安の問題じゃないと思いますよ。外国人に対する“おもてなし”の精神が希薄なので、いつか中国人観光客にも愛想を尽かされるかもしれませんね」(韓国人実業家)
韓国文化観光研究院が発表したアンケート調査によると、韓国を訪れた16カ国の外国人観光客のうち、中国人観光客の満足度は14位、再訪問したいかという質問の答えも14位にとどまった。むしろ旅行をした後、韓国に対するイメージが悪くなり、他人に推薦する気がしないという答えも増えているのだとか。MERSや人民元の切り下げで中国人観光客の減少を懸念している韓国だが、その本当の理由は別のところにあるのかもしれない。
(取材・文=河鐘基)