編集:ライター ゴジラ太田
●13年越しのクオリティーアップ
2015年9月3日発売の週刊ファミ通では、サバイバルホラーシリーズの原点が描かれる『バイオハザード0 HDリマスター』(以下、『バイオ0HD』)の第2報を掲載した。開発の中心となるのは、多くの『バイオハザード』シリーズに関わる竹中司氏と、オリジナル版『バイオハザード0』の開発にも携わっていた小田晃嗣氏。HDリマスター化に懸ける想いを語っていただいた。
【画像17点】「『バイオハザード0 HDリマスター』インタビュー完全版 13年前の思い出や、HDリマスター版ならではの思い出を訊く」をファミ通.comで読む(※画像などが全てある完全版です)
ディレクター
プロデューサー
●机の中には当時の企画書が!?
――小田さんは、13年前のオリジナル版ではどのように関わられていたのでしょうか?
小田 当時もディレクターという立場でした。ちなみに、初代『バイオハザード』のときも、企画として参加させていただきました。
竹中 僕の大先輩ですよ。初代『バイオハザード』のときは、三上さん(ゲームデザイナーの三上真司氏。現Tango Gameworks代表)がこれからゲームを組み立てるぞという段階で、すでに小田が現場にいました。彼の机をあさってみると、当時書かれた手書きの企画書が出てきておもしろいんですよ(笑)。
小田 読み返してみると、誌面にはお出しできない生々しいことが書かれていますね(笑)。クリスやジルといった名前も決まっていないころなので、キャラクターの名称もA子さん、B子さんといった感じで。
竹中 『バイオハザード0』のクリアー後に楽しめる“リーチハンター”というモードがあり、このモードのコードネームが“とれとれダイヤモンド”というらしいのですが、『バイオ0HD』の開発中にそれで話をするので、「この人たちは、何の話をしているんだろう?」と戸惑っています(苦笑)。
小田 私も当時のデベロッパー(開発会社)にいたディレクターも、ネーミングセンスがあるとは言えないほうだったので。ムカデとかサソリとかストレートな仮称で進めていたこともあって、スティンガーと決めた後も、「それなんだっけ?」と思ったり(笑)。攻略本用の設定をまとめていたときも、「こいつの仮称は“太郎”だったけど……このままじゃマズイよね。正式の名前は何がいい?」と、当時翻訳をお願いしていた外国人メンバーに聞いてみたこともありました。
●当時の環境から生まれたシステム
――おふたりにとっての『バイオハザード0』は、どんな作品でしょうか?
竹中 初代『バイオハザード』は、僕にとってすごくおもしろいゲームでしたが、疑問に感じる設定もたくさんあったのを覚えていますよ。たとえば、「最初のゾンビに食われていたのは誰?」とか、「毒蛇に咬まれていた人はどんな人物?」とか。そういった疑問の答えがすべて入っているので、洋館事件と合わせてひとつの作品として完成すると思っています。
小田 『バイオハザード0』は、ふたりの主人公を任意に切り換える“リアルタイムザッピングシステム”や、アイテムを床に置ける仕組みなど、挑戦的なシステムも多く組み込んでいる作品です。。シナリオだけでなく、プレイヤー側の遊びで怖さを体感してもらうという。じつは、この仕組みは容量的な問題を解消するために試行錯誤しているときに生まれたんですよ。
――そう言えば、オリジナル版はニンテンドーゲームキューブですが、最初はニンテンドウ64で発表されていましたよね?
小田 『バイオハザード』シリーズをさまざまなハードで展開していくという構想があり、当時任天堂さんのハードで最新の環境だった、64DDで開発する動きがありました。その後、ハードをニンテンドーゲームキューブに移行したのは容量の問題というわけではなく、社内の方針です。2000年春のゲームショウでは、プロトタイプ版(ニンテンドウ64版)をプレイアブル出展し、お客様にお見せできる段階まで進んでいたのですが……。移行が決まった後は、「どうすれば各要素を容量内に収めることができるか?」から、「どうやって広げていくか?」というスタンスに切り換えたのを覚えています。
――急に思い出しましたが、プロトタイプ版が発表されたときのビリーは、完全に悪人ぽい面構えでしたね。
小田 そうですね。プロトタイプ版では、ビリーが終盤まで敵か味方かわからない作りになっていまして、プロトタイプ版のときのビリーは人相が悪かったですね。そのころの名残が、ビリーが自分の素性をあまり明かさないという設定につながっていると思います。じつはもっとも初期段階の案では、どちらか一方でも生き残っていればエンディングを迎えられるという仕組みになっていました。どんなダーティーな手段を使ってでも生き延びようとするビリー、捜査官としての任務を踏まえつつ行動するレベッカ、どちらに共感しながら進める? という感じでしたが、これも容量の面から実現し得ませんでした。
HDリマスターならではの新要素も!
●日本語キャスト配役の経緯
――日本語キャストが発表になりましたが、オファーの経緯をお聞かせください。
竹中 『バイオハザード』シリーズって、初期のころから映画っぽいイメージが強くて、それがファンの方々に受け入れられた要因のひとつだと思うんですよね。そのことから、日本語ボイスを導入するときも、アニメっぽさではなく、映画の吹き替えや海外ドラマを意識したキャスティングにしています。
小田 小清水さん、中田さん、関さんについては、シリーズ続投でお願いすることになりました。ビリーに関しては、オーディションのときに大勢の候補の中からいろいろ聞かせていただいたとき、小西さんの声からやさしさと鋭さが同居した“ビリーらしさ”を強く感じました。また、謎の青年は、ビリーと対照的にやさしさと狂気が入り混じった演技が必要でしたが、じつは、平川さんはオーディションのとき、違うキャラクターの声だったんですよ。でも、この方の声が謎の青年にピッタリだと感じてお願いしました。
竹中 ちなみにこのキャラクター、13年前は“謎の美青年”という呼び名でしたが、いまの時代に合わせて表現を変えているんですよ。
小田 ビリーとレベッカは、出会ったばかりのときから、物語が進むにつれて演技を変える必要があるのですが、見事に演じていただいています。収録現場では別々に収録しているため、最初は心配でしたが、聴いてみると掛け合いがピッタリハマっていましたね。
●HDリマスター版ならではの要素
――『バイオ0HD』の企画は、いつごろから立ち上がったのでしょうか?
竹中 きっかけは、現在発売中の『バイオハザード HDリマスター』ですね。こちらを開発していた段階から『バイオ0HD』も検討していまして、1作目のHDリマスター版がお客様から高評価をいただけたことで開発がスタートしました。
――『バイオハザード HDリマスター』では、アナログ操作が好評でしたね。
竹中 そうですね。僕自身、それまではラジコン操作派だったのですが、実際にアレンジ操作で動かしてみて驚きました。そもそも、当時は慣れていたラジコン操作で動かそうとしても、いまやると思うように動けないんですよ(笑)。ちなみに『バイオハザード HDリマスター』のときに、お客様からひとつだけご指摘を受けたことがあります。
――それはどういった内容でしょうか?
竹中 “プレイステーション版の操作が入っていない”という意見です。ニンテンドーゲームキューブ版がもとなので、もともとないものでしたが、プレイステーション版の初代『バイオハザード』を遊んでいただいたお客様にとっては、R1ボタンで構えて□ボタンで撃つという操作というのが『バイオハザード』のイメージなんですよ。そこで、『バイオ0HD』では、その操作もプラスしています。
――HDリマスター化で苦労されたことや、開発中のエピソードをお聞かせください。
竹中 小田以外にも、オリジナル版に関わっていたスタッフが何人も参加しているので、当時のデータなどが綺麗に残っているんですよ。そこから当時の素材をサルベージできたのはよかったですね。
小田 もちろん素材をそのまま使うのではなく、全部再レンダリングして質感を向上させています。細かいところだと、排莢時に出る煙などもクオリティーを向上させていますので、オリジナル版をプレイした方も、期待以上の感触を得ていただけると思います。
――薬莢から煙が! オリジナル版の時点でグラフィックはかなり凝っていたのですね。
竹中 ただ、HD化することで、当時の解像度では見えなかった部分も見てくるんですよ。じつは、オリジナル版では食堂車じゃない車両へ行く扉に“RESTAURANT CAR”って書いてあることが判明して(笑)。当時はテレビに映る画面ではぼやけて読めなかったのですが、HDリマスター版ではハッキリわかるので修正しています。ほかにも、飾っている写真に当時のプログラマーが写っていたり……。
小田 そういった部分もありますが、オリジナル版では見えない部分まで細かく描き込んだデータが、13年経った現在になって活きてきましたね。まるで、13年前にHDリマスター化を予期していたのかというくらい(笑)。
――(笑)。新エクストラゲーム“ウェスカーモード”についてもお聞きしたいです。
小田 クリアー後にもう一度遊んでいただきたいという想いから導入したモードです。“マーセナリーズ”のようなものではなく、本編のアクション部分を、超人的な体術とパワーを使って、いかに早くクリアーできるかという観点で楽しんでいただければと。
――タイムアタック的な遊びかたということですね。
小田 はい。このモードを導入した発端は、小林(小林裕幸氏。『バイオハザード4』のプロデューサー、『バイオハザード6』のエグゼクティブプロデューサーなどを務めた)の「ウェスカーを入れてよ」というひと言からです。とは言え、ウェスカーを入れるためにシナリオを変えるわけにもいかず……そもそも、本編にウェスカー登場しますし。その矛盾をどうするかというところですが、単純にコスチュームチェンジがひとつ増えましたよ、というだけではおもしろみがないので、ちゃんとウェスカーならではの技も使えるようにしてみようと。強い武器で周回プレイを楽しむというのはこれまでもありましたが、『バイオハザード5』時代を思わせるコスチュームのウェスカーなら、1周目の本編とはまったく異なる楽しみかたが体験できるのではないかと思い、入れ込みました。竹中には相当無茶をさせましたが(笑)。
――『5』のウェスカーというあたりに意外性がありますね。
竹中 理由のひとつとして、『バイオハザード』の歴史を大事にしたかったというのがありますね。S.T.A.R.S.のウェスカーを出すこともできたんですけど、やはり本来流れている歴史と明らかに矛盾しますし、本編でウェスカーが重要なポジションとして登場するので、いくらオマケとはいえ、割り切って見ていただくのは難しいかと思い、本編の時代とはかけ離れたウェスカーを採用しました。ダッシュや、武器を使わずに敵を攻撃するといった、独特のアクションを用意しています。
――『バイオハザード』シリーズにつきもののタイムアタックプレイが、ダッシュのアクションがついたことで、ますますおもしろくなりそうですね。
小田 そうですね。最初はただ単にダッシュさせるだけだったのですが、どうせ走るならタイム短縮を大胆にできるように……と、方向転換ができるようにもしています。
――ウェスカーといっしょにいるレベッカが、これまた見たことのない雰囲気をまとっていますね。赤い瞳と、胸の赤いパーツ(?)が気になるのですが、これはやはり……?
竹中 お察しの通り、『バイオハザード5』でジルが胸につけていたものと同じものです。本編には存在しない設定となります。東京ゲームショウ2015でも、ウェスカーモードのさらなる映像を公開予定ですので、ご期待ください。
――楽しみにしています! 最後に、アピールポイントをひと言お願いします。
竹中 13年前に『バイオハザード0』というタイトルを知っていても、遊んでらっしゃらない方はけっこう多いと思うんですよ。そういう方にはぜひ遊んでいただきたいです。『バイオハザード』を知っているけどやったことがないという方も、これを入門編として、ぜひ遊んでください。
小田 13年前にすでに一度皆さんにお届けしたゲームではありますが、私自身がそうだったように、壁ひとつとっても、エフェクトひとつとっても、つねに新しい気づきを感じてもらえるゲームになっています。ぜひ当時楽しんでくださった方も、そうでなかった方も、もう一度手にとっていただければうれしいな、と思います。
●東京ゲームショウ2015で体験せよ!
東京ゲームショウ2015カプコンブースにて、『バイオハザード0 HDリマスター』がプレイアブル出展! 体験したプレイヤーには、レベッカのS.T.A.R.S. IDカードと黄道特急のチケットをモチーフにした“『バイオハザード0 HDリマスター』オリジナルステッカーセット”がプレゼントされるぞ。
さらに、9月20日(日)13時40分からの“『バイオハザード0 HDリマスター』スペシャルステージ”のゲストに、主人公レベッカ・チェンバースを演じる小清水亜美さんが登場! 『バイオハザード0 HDリマスター』についてのさまざまなトークが予定されている。こちらも要注目だ!
バイオハザード0 HDリマスター メーカー:カプコン 対応機種:プレイステーション4 / プレイステーション3 / Xbox One / Xbox 360 / Windows 発売日:ディスク版は2016年1月21日発売予定(※) 価格:ディスク版は3990円[税抜](4309円[税込])、ダウンロード版は価格未定 ジャンル:アクション・アドベンチャー / サバイバルホラー
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