『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープ演じる鬼上司にしごかれる社会人1年生を演じ、一躍脚光を浴びたアン・ハサウェイが、一転して今度はファッションサイト経営会社でCEOとしてインターンを教育する映画『マイ・インターン』。本作で、70歳のインターンを演じた名優ロバート・デ・ニーロが、意外な弱点を明かした。
“デ・ニーロ・アプローチ”という言葉が生まれるほど徹底的な役づくりを行うことで知られるカメレオン俳優デ・ニーロ。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた『タクシードライバー』(1976)では、ベトナム戦争から帰還した不眠症のタクシー運転手を演じるため、実際にニューヨークで約1か月タクシー運転手として働き、アカデミー賞助演男優賞を受賞した『ゴッドファーザー PART II』(1974)ではマーロン・ブロンドが演じたヴィトー・コルレオーネの青年時代を演じるために、数か月にわたってシチリア島で生活し、シチリアなまりを完璧にマスター。体重の増減はもちろん歯の矯正、額の生え際の髪を全て抜くなど並外れた役者魂で、ハリウッドで一目置かれてきた。
そんな完璧主義者のデ・ニーロだが、新作『マイ・インターン』ではどうしてもマスターできなかったことがあるという。それは、何とFacebook! デ・ニーロ演じるインターンのベンが働くことになるファッションサイト経営会社ではヒロインのCEOジュールズをはじめ、どの社員もSNSを使いこなしているが、ベンは40年間電話帳制作会社の部長として働いたという設定で、何から何までアナログ。
劇中、Facebookのアカウントを立ち上げたもののおぼつかないベンを見かねたジュールズが、彼にFacebookのやり方を伝授するシーンも登場するが、デ・ニーロは「実は年下の親戚がFacebookのやり方を教えてくれたんだ。でも現代のテクノロジーに関してはてんでわからない部分もあって、朝から晩までパソコンに張り付いている人が一体何をしているのか全くわからないよ。何がはやっているという知識はあるけどそういうことには全く疎いんだ」とSNSについていけない現状を吐露。
しかし、そんなベンのアナログ思考が、膨大な情報量が秒単位で行き交うSNS社会で切磋琢磨(せっさたくま)するジュールズに、思いがけない教訓をもたらすこととなる。「この前もセントラルパークにとても面白い人がいて、立ち止まって彼のことをじっと見てしまった。ホームレスの男性で大きな荷物をベンチに置いて座っていたんだけど、悲しそうでどこか興味深い瞬間だったよ」と演技に磨きをかけるために“人間観察”を欠かさず行っていることを語ったデ・ニーロ。SNSに頼らず、あくまで独自のスタイルを貫くデ・ニーロを鑑みると、彼が演じたベンというキャラクターがより深みを増して迫ってくるはずだ。(編集部・石井百合子)
映画『マイ・インターン』は10月10日より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国公開