クラウドファンディング詐欺がこれで防げるか。
クラウドファンディングキャンペーンを立ち上げるためのハードルがひとつ上がりました。Kickstarterでプロジェクトを立ち上げたある会社が、この種のサービスのクリエイターとしては初めて、支援者への払い戻しを命じられたんです。
ワシントン州裁判所は、2012年にKickstarterでプロジェクトを立ち上げたAltius Management社に対し、約束の商品を実現しなかったとして払い戻しと罰金を命じました。同社は限定版トランプ制作プロジェクトで、目標1万5000ドル(約180万円)に対し2万5000ドル(約300万円)の支援金を集めたのですが、罰金と払い戻し金で合計5万ドル(約600万円)以上を請求されることになりました。
Altius社は2012年、「レトロ・ホラー」デザインのトランプを作るキャンペーンを開始し、資金を募りました。800人以上がこのプロジェクトを支援し、トランプが送られてくるのを待っていましたが、約束の期日である2012年12月になってもなしのつぶてでした。Altius社とその責任者・Ed Nash氏は支援者に曖昧なメッセージを送り続け、2013年7月以降は音信不通となってしまったんです。
「ワシントン州はクラウドファンディング泥棒を許さない」と州司法長官のBob Ferguson氏は言っています。「消費者から金銭を受け取っておいてその義務を果たさない者は、司法がその責任を追求することになる」と。
この判決によって、プロジェクト支援者のうちワシントン州在住の31人には、合計668ドル(約8万円)が支払われることになりました。Altius社が支払う残りの金額は、州に対する罰金や裁判費用です。
これまでにクラウドファンディングキャンペーンが失敗しても、裁判所がクリエイターに払い戻しを命じた事例はありませんでした。でも今回の件で、支援者がだまされた場合は法的支援を求めることができると示されました。
Kickstarterの利用規約にも、プロジェクトがうまくいかなかった場合について書かれています。いわく、クリエイターは「プロジェクトの結果が支援者にとって極力最良となる別の手段を見つけるべく、あらゆる合理的な努力を行わなければならない」としています。
とはいえ、これはたいてい単なるリップサービスに過ぎず、Kickstarterも責任を問われません。支援者はお金を出しても「出資者」としては扱われず、どんなキャンペーンでも成功は保証されていません。KickstarterでもIndiegogoでもGoFundMeでも、支援者が払うお金は何か確実なものへの対価ではなく、夢を追う人への援助として差し出しているだけなんです。要するにクラウドファンドサービスでは、人から簡単にお金をだましとれるようになっているんです。
ただ、Altius社が最初からお金をだましとるつもりだったのか、プロジェクトの途中で問題が起きて頓挫してしまったのか、単にめんどくさくなったのかはわかりません。ただ一部の支援者からは「商品が届いた」という報告もあがっているし、そもそもプロジェクト立ち上げ時にはかなり詳細なデザイン案が提示されていました。それでも、ほとんどの支援者が商品を入手できないままであるという現状が厳しく評価されて今回の判決に至ったものと思われます。つまり当初の意図にかかわらず、プロジェクトが結果的に失敗と見なされれば罰が与えられるという前例ができたんです。
これによって慎重なクリエイターがクラウドファンディングを敬遠してしまったり、多少デメリットはあるのかもしれません。でもやっぱりお金を出す側としては「できなかったてへぺろ」で済んでしまう状態は不安ですもんね。
Screenshot via Kickstarter
source: UberGizmo
Kate Knibbs-Gizmodo US[原文]
(miho)