首都東京の鉄道の大動脈に大きな影響を与えたJRの連続不審火事件。うち1件に関与したとして逮捕された野田伊佐也容疑者(42)は、赤い自転車に乗り、特徴のある帽子をかぶったまま不審火の現場を移動していたとみられる。インターネットに事件への関与を示唆するような画像も投稿していた。いずれも周囲の関心を引くような不可解な行動で、専門家は「自己顕示欲が強く、社会の中で自分が評価されないという不満も背景にあったのではないか」と指摘する。
警視庁の調べに、野田容疑者は「大量の電力を消費するJRが許せなかった」と供述。同庁は詳しい動機の解明とともに、他の不審火にも関与した疑いがあるとみて着火方法などを調べている。
関係者によると、野田容疑者は大学名誉教授の父を持ち、ロックバンドのボーカルなどの音楽活動をしていた。都内のあるライブハウスの関係者は、「15年ほど前にライブをしているようだが、今は知っている者は誰もいない」と話す。
東京・吉祥寺の家賃約6万円の2階建てアパート1階で1人暮らしをしていたが、住民は「常にカジュアルな服装で、昼の仕事をしている感じではなかった」と振り返る。
臨床心理士で犯罪心理に詳しい長谷川博一氏は「ミュージシャンとして世間に認められず、権力への不満に変わり、反権力的な運動に関わるようになっていったのではないか。自己顕示欲の強さもうかがえる」と分析する。
ネットの写真共有サービス「インスタグラム」には、線路の陸橋からペットボトルを何かでつるし、架線の滑車に載せた場面や、黄色のテンガロンハットをかぶり、燃料用のアルコールを手にする画像や赤い自転車を掲載していた。
防犯カメラには、同じような帽子をかぶり、赤い自転車に乗った男の姿が写っていた。警視庁は投稿された画像を容疑者特定の手掛かりの一つにしたという。