音楽がテクノロジーをリードする。
先月開かれた、"音楽の未来を発想する"ハッカソン、「Music Hack Day Tokyo 2015」。世界中で開かれている音楽ハッカソンの代表的な存在で、東京での開催は今年で2回目です。130人、27チームが参加し、gracenoteやSpotify、J!NS MEMEなど企業が提供するAPIを使って、さまざまなサービスやデバイスを開発しました。
優勝したのは、チームGoGyoの「Squeeze Music」。曲のムード成分に合わせたミックスジュースを作るプロダクトです。
gracenoteの楽曲解析APIで、曲のムードをリアルタイムに切り取っていきます。ムードは5つ、Happy(=甘み)、Exciting(=酸味)、Romantic(=渋み)、Sentimental(=しょっぱみ)、Sad(=苦味)。それぞれのムードに近い味が割り当てられてます。
デモで使われた、Queenの「Don't stop me now」だとこんなジュースができるみたいです。半分くらいHAPPYです。合ってる気がしますね。
彼らの目指すところは、音楽の「味覚化」。視覚や聴覚だけでない音楽の体験を作る試みです。
Squeeze Music、いろいろな楽しみ方ができそうですよね。ライブやフェスで演奏中の曲に合わせたドリンクを飲むのも良し、味に合わせた曲を作ってみることもできるかも。そのうちみんなExciting(酸味)な曲を聞くとツバが出てくるようになるかもしれません…?
でもいちばんすごかったのは、とにかくみんなに「飲んでみたい」って思わせてしまうところでした。審査員のきゅんくんもデモ後の質問タイムに「飲んでみてもいいですか?」と試飲してました(美味しかったそうですよ)。
以前ギズモードでも紹介したOrpheを使った、チーム-Dの「Route Music」。マップを移動しながら各国出身のミュージシャンの音楽を再生するアプリです。
Orpheで現在地と歩いている方角を取得してグーグルマップに読み込み、マップ上でその先にある国を選択。その国出身のミュージシャンの音楽が流れます。デモでは、日本から北の方向、ロシア出身のストラヴィンスキーの曲が流れていました。
このアイディアは茅ヶ崎駅に降り立ったときに、サザン・オールスターズ(メンバーの桑田佳祐さんが茅ヶ崎出身)の曲が流れていた、という体験から思いついたんだそうです。ミュージシャンのルーツをたどるのとは反対に、場所からミュージシャンと音楽に出会うというのもおもしろいですよね。
ストラヴィンスキーの次には、南の方向、オーストラリア出身のAC/DCがちらっと流れかけてましたが、残念ながらデモの時間はそこで終了。もっと試してみたい、自分で歩いてみたいと思わせる作品でした。
チームdj takaakiの「DJ Faces」は、顔でDJするという試み。オムロンの人認識APIを使って、顔の動きや人物の入れ替わりなどで曲をつないでいきます。
曲に合わせて踊っているときに、上や横を向いたり、カメラに近づいたり遠ざかったりすることでテンポなどを変えていきます。
2人いれば、
こうなる。
デモの時点では音の細かい調整などは難しいとのことでしたが、どうせ踊るんだったら踊りでDJやっちゃおう!という発想が楽しいですよね。音楽に合わせて身体を動かしたら、それによって音楽も変わっていく。人と音楽が絶え間なくインタラクションし合う関係は、外から見ていてもおもしろい(デモでは会場爆笑でした)ですし、踊ってる人も気持ちよくなっていくんじゃないでしょうか。
最近ハッカソンはいろんなところで開催されるようになってます。ジャンルも、アートやビジネスなど多岐にわたります。この「Music Hack Day Tokyo 2015」も、普段から音楽を作っている人、演奏している人など、音楽好きが集まったハッカソンでした。そのためか、技術的な完成度に凝り過ぎるよりも、発想やエンターテイメントを大切にした作品が多かったように感じます。
サブスクリプションサービスのブームとともに、グーグルやアップルなどのテック企業がどんどん音楽へ参入してますよね。テクノロジーに引っ張られて音楽は進化していくかもしれませんが、同時に、こういった音楽好きハッカソンから、音楽がテクノロジーをリードしていく未来も見えた気がしました。
source: Music Hack Day Tokyo
(斎藤真琴)