「きれぎれ」で芥川賞を受賞した作家の町田康氏が9月17日、東京・新宿ピカデリーで行われた、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の8年ぶりとなる新作「黒衣の刺客」(公開中)のトークイベントに出席した。
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町田氏は今作について、「僕たちは感じたことをすぐに言葉にして表すけれど、今作の主人公の女性は言葉をほとんど話さない。自分の与えられた運命を受け入れているところがすごく美しい。このまま4分くらいじっと見ていたいと思った」と大絶賛した。
また、本作に説明のセリフがないことに触れ、「言論で解決しようとか、理性で解決しようとか、論理で解決しようとか。そういうところから脱却しようとしているのかもしれないです。言葉を持っていないっていうのはいじらしい、美しい感じがする」と持論を展開した。
また、町田は「文學界」でホウ監督と対談を果たしており、「映画監督って独善的な人が多いけど(笑)。フレンドリーな方でした」とホウ監督の人柄を明かした。さらに、「監督は『演じている人が本当の人物になって、感情と俳優が一致した瞬間を重視した。その瞬間をつなぐとこうなった』とおっしゃっていた」とホウ監督の言葉に感銘を受けた様子で紹介。「観客としてのイマジネーションを働かせて見ることができる」と魅力を語っていた。
道姑(女性の道士)に少女時代に預けられたインニャン(スー・チー)は、完全な暗殺者に育て上げられていた。暴君テェン・ジアン(チャン・チェン)の暗殺を請け負うが、彼はかつての許婚だった。そして、任務中に窮地に追い込まれたインニャンは、難破した遣唐使船の日本青年(妻夫木聡)に助けられる。