東京ゲームショウ2015会場におけるOculus VRブースでは,Riftの最新版試作機となる「Crescent Bay」(クレセントベイ,開発コードネーム)と,Oculus VRの技術を採用して開発されているSamsung Electronics製のヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)「Gear VR」の体験ができるようになっていた。受付で整理券が配られているのだが,ビジネスデイの時点でかなり早めになくなったので,一般公開日に体験したい人は,早めに動く必要があるだろう。
さて,そんなOculus VRブースでCrescent Bayとして用意されていたデモは7種。うち6種はE3 2015で公開されたものと同じだが,残る1種はコロプラによる新作となっていた。今回は7種すべてを体験してきたので,インプレッションをまとめてみたいと思うが,例によって画面撮影を行えないため雰囲気を伝えにくく,また,仮想現実(以下,VR)的な要素を言葉で説明するのは難しかったりもするので,そこはご了承を。
■●Chronos
「Adventure RPG」とされているが,プレイ感は,三人称視点のファンタジー風アクションアドベンチャー。プレイヤーキャラクターを操作して,マップを進んでいくタイプである。モンスターを剣で切り伏せたり,トラップ解除して駆け抜けたりして,出口までいくと,次のステージへ切り替わるタイプのゲームシステムになっている。下に示したのはトレイラーだが,なかなか雰囲気のあるゲーム画面だ。
カメラの画角はほぼ固定で,背後からキャラクターの移動を追っている。必要に応じてカメラの位置は切り替わるので,特段に横移動がしづらいとか,そんなことはなかった。
■●Fly to KUMA
コロプラによるパズルゲームで,一見して,懐かしき「レミングス」のオマージュ作品だと分かる作品だ。
用意されたパーツを使って,道に橋をかけ,降ってくる爆撃からクマを守るあたりは,まさにVR版レミングスといった雰囲気,クマの鳴き声までレミングスに似ている。
■●Edge of Nowhere
三人称視点のアクションアドベンチャー。画面はリアル志向で,没入感は高めかもしれない。
ゲーム世界は相応に作り込まれており,「ここで下を見下ろしたりしたらすごいんだろうな」と思うような場所もあるのだが,ゲーム中は何かと追い立てられ続けるため,雰囲気を味わう余裕はほとんどなかった。
視線方向は固定ながら,キャラクターの移動に伴ってカメラも動く。そのため,3D酔いするほどではないにしても,横移動時にちょっとした違和感を覚える人はいるかもしれない。
■●HeroBound
Gear VR用にはすでに配信が始まっている,三人称視点のアクションアドベンチャー。3頭身程度のキャラクターを操作して,画面内にある宝石を集めながらマップを進んでいく。戦闘もあり,剣や弓など武器を切り替えながらの攻撃が可能だ。
飛んでくる炎を避けながらタイミングを合わせてジャンプして飛び石の道を進んでいくなど,プレイ感は,本当によくあるタイプのアクションといったところだが,VR対応によって少しリッチな感じになっている。
■●EVE:Valkyrie
宇宙を舞台にしたMMORPG「EVE Online」からのスピンオフタイトルとなる,宇宙戦闘機アクション。Oculus Rift用デモとしては定番だが,個人的には今回が初体験だ。
無重力の宇宙空間でドッグファイトを楽しむゲームだが,操作は予想以上に難しい(※個人の感想です)。誘導ミサイルはともかく,機銃で敵を落とせる気がしない。細かな角度調整は慣れなのだろうか……。コンフィグを確認する時間的余裕はなかったのだが,上下操作を入れ替えるのが先かもしれない。
ゲームは終始,戦闘機のコクピットビューで展開される。機体のほうは,天地お構いなしの機動で飛び回るのだが,コクピットがよりどころとなるのと,プレイヤーキャラクターはプレイヤーの視点操作以外ではぴくりとも動かないのが効いているのか,不快な感じはなかった。開発期間が長いこともあり,完成度はかなり高い印象だ。
■●AirMech VR
おもちゃのような小型メカ「AirMech」を使って,3v3で戦うRTS「AirMech」。そのVR対応版だ。
オリジナルのAirMechは,ある程度広いエリアをスクロールしながらプレイするタイプのゲームだが,AirMech HDは,体験した限り,テーブルトップサイズにまとまった,箱庭ゲームになっている。椅子に座り,目の前のテーブルを見るようにプレイできるかと思えば,立ち上がって上から見下ろしながらも可能。さらに,立ち上がった状態で視点をリセットしてから椅子に座ると,マップの中に入り込んだような視点でもプレイ可能だった。
■●Lucky's Tale
かわいらしいキツネのキャラクターを操るアクションゲームだ。似たようなシルエットで尻尾の数が違うキツネをどこかで見た気もする。
本作は,斜め見下ろし型となっているマップ内を,尻尾を振り回しての攻撃や,ジャンプ(※2段ジャンプ可能)での踏みつけなどを駆使し,また,マップ内のトラップを回避しながら,あちこちにあるコインを集めつつ先へ進んで行くタイプになっていた。
以上,全体に三人称視点かつマップ固定のものが多く,今回,Oculus VRが相当な安全策に出ている印象を強く受けた。まあ,立ち上げの時期にワーストの結果を出さないようにすることも重要ではあろう。
それでもなんとなく,いわゆる「立体視対応テレビ」がブイブイいわせていた頃に「立体視対応コンテンツの正しい作り方」として「目の負担が大きくなるから,大きく飛び出す画像は控えよう!」的な提言がなされていたことが思い出される。言ってることは正しいのだけれども,奥行きがあるだけではあまり楽しくないのが立体視コンテンツというものだ。そんなコンテンツばかりが増えていった結果,立体視がどうなったかは,皆さんもよくご存じだろう。
VRも安全策に走りすぎると,「VRでやる意味あるの?」感が強くなってしまう。ただ,だからといって攻めすぎると,3D酔いの危険度が跳ね上がるため,バランスが重要だ。
PlayStation VR用のデモも似たような感じであり,個人的にはちょっとさみしくも感じる,東京ゲームショウ2015におけるVR界隈であった。
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