2011年のこと、スコッチウイスキーの生産地として有名なスコットランドのアイラ島のアードベッグ蒸溜所が熟成していないモルトウイスキーを国際宇宙ステーションに送り込みました。そして、そのウイスキーが3年間の熟成期間を終え、昨年地球に戻ってきたのです。
ウイスキーの原酒は、MixSixと呼ばれるもので、オークチップと共に封され宇宙で時を刻み、同時に熟成の違いを比較するために同じ原酒をアードベック蒸留所では樽にいれて通常通りに熟成させていました。ついに宇宙から帰還したウイスキーは科学者たちによって高圧液体クロマトグラフィーやガス・クロマトグラフィーといった様々な機器で分析され、その結果が発表されました。成分の違いなどの細かい報告もありましたが、個人的に気になるのは、その味!ということで今回はアロマや味の結果にフォーカスしてみました。
地球サンプル:
アロマはウッディー、アードベッグ・スタイルを思わせる香りの中にヒマラヤスギの香りがほのかにする。甘いスモーキーさと熟成されたバルサミコやレーズン、糖蜜のタフィー、バニラ、濃いオレンジを感じる。
「味は、口に含むとウッディ、バルサミコと共にフルーティーさ、炭、かすかな薬っぽさが鼻にぬけます。その後、優しいスモーク、タール、クリーミーなファッジの甘さの余韻が続きます」
宇宙サンプル:
アロマは強烈な殺菌、ゴム、魚の燻製の香りと共に、興味深い香水の香り、例えばスミレかカシスのような。そしてパワフルなウッディーなトーンを感じ、徐々に肉系のアロマへと変化していきます。
「味は、スモークされたプルーンやレーズン、砂糖漬けのプラムやチェリーのような果物、ピートのスモーク、ペパーミント、アニスシード、シナモン、ベーコンかヒッコリーでスモークされたハムを感じる。口の中に長く残る余韻としては、かすかにウッディー、薬用キャンディー、燻されたゴムを感じる」
アードベッグの出した結論としては、ISSで熟成されたのと地球で熟成されたウイスキーの違いは著しく、継続的な分析によってこの異なった風味がどうして生まれたのかを解明していきたいとコメントし、また、今回の実験の結果から新しい風味の発展の可能性を感じたと、未来のウイスキーへの期待に胸を膨らませています。実際のところ、コストや実現性を考えると定期的に宇宙でウイスキーを熟成させるなんてことはありそうもないですが、人間がある日火星にコロニーを作るときがきたら、新しい風味のウイスキーに出会うことができるかも!?
ちなみに、この世界初の試みを祝うための特別なウイスキー「アードベッグ ガリレオ」なんていうウイスキーも発売されていたそうです。また、サントリーもJAXAの協力を得てISSにある日本の実験棟きぼうでお酒がまろやかになる仕組みを研究するべく、ウイスキーを宇宙に送り込む準備を進めていたり、「宇宙はラズベリーのような甘い匂いがするらしい」というウワサを元に「宇宙醤油」なるものが商品化されたりと、未体験な宇宙味への興味がとまりませんね。
source: Ardbeg via BBC via Popular Science
Jamie Condliffe - Gizmodo US[原文]
(junjun)