2007年の初回公演以来、様々なコンテンツや企業とコラボを果たし、今や誰もが知る大人気イベントにまで成長した「リアル脱出ゲーム」。突き詰めれば“謎解き”というシンプルな遊びである「リアル脱出ゲーム」が、8年もの間ムーブメントを維持し続けられる秘密はどこにあるのだろうか。SCRAP代表にして同イベントの生みの親である加藤隆生氏にヒットの秘密を聞いた。
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加藤氏が初めてリアル脱出ゲームを開催したのは2007年のこと。フリーペーパー「SCRAP」の「脱出ゲーム」特集にちなんだイベントとして開催され、120人ほどを動員した。そのときは 1回15分で1度にゲームに参加できるのはたった5人、というシステムだった。そこから規模を拡大し、現在では1000人単位で動員することも珍しくない。
こうしたリアル脱出ゲームの進化と変化こそが、8年間ブームを維持できた理由であると加藤氏は語る。「謎解きという軸はブラさないようにしながら、リアル脱出ゲームは常に新しいことに挑戦してきました。毎回新しい物語を体験できるからこそ、新鮮さが失われないのだと思います」。
一方で、「軸」そのものも変化していると加藤氏は言う。たとえば少人数で謎解きしていたときは、現在のようなチーム制ではなく、参加者全員で謎に挑んでいた。「謎を解いて部屋から脱出するなら、全員で協力するのが当たり前ですよね。だけど、参加者が100人ともなると、それは不可能です」100人規模のイベントにあたり、加藤氏はチーム制という新たなルールを設けた。
さらに、廃校全体を使ったイベントを開催し、会場を一気に拡大する。「参加者が増えてチーム制にした時点で“リアル”ではなくなったし、廃校や遊園地といった広い会場にした時点で“脱出”でもなくなっているんですよ。だって、本当に閉じ込められて脱出するなら、100人だろうと1000人だろうと一緒に協力するのが“リアル”でしょう?(笑)。 そういう意味ではリアル脱出ゲームという言葉の概念も変化しているんです」。
コンテンツやイベントを拡大する上で、「軸」がブレないようにしながら、それ以外の要素を進化させていこうとすることはクリエイターなら誰もが考えることだろう。しかし、加藤氏はあえて「軸」そのものを変化させていくことで、リアル脱出ゲームを進化させてきた。その結果、TVや映画、ゲーム機などとコラボレーションした新たなインタラクティブ体験も登場している。
『ONE PIECE』や『進撃の巨人』といった国民的コンテンツとのコラボも果たしていることからもわかるように、企業からSCRAPへのオファーはひっきりなしだ。一方ではオリジナルのリアル脱出ゲームにも、初演時と変わらず力を注いでいる。10月17日からは映画館を舞台にした『ある映画館からの脱出』がスタートする。
リアル脱出ゲームが事業として軌道に乗った今、加藤氏はすでに「次」を見ている。「リアル脱出ゲームを教育や医療の分野で使えないか考えています。たとえば主要5教科の次に謎解き科目が入るとか。また、謎解き以外のイベントに関しても今いろいろと動いているところです。今後半年くらいでお披露目できると思います」。
ゼロから新しいエンターテインメントを立ち上げ、一大ジャンルとして育ててきた加藤氏。終わらないムーブメントを支えていたのは「常に新しいことに挑戦し、面白ければどんどん変化していこう」というチャレンジスピリットだった。
東京リアル脱出ゲームVol.15『ある映画館からの脱出』は10月17日(土)~11月13日(金)まで丸の内ピカデリーにて実施。