編集部記:Arun Guptaは、Crunch Networkのコントリビューターである。Arun GuptaはQuartet HealthのファウンダーでCEOである。Quartet Healthは、行動習慣上の健康管理テクノロジー企業で、医療提供者と行動習慣における医療従事者のシームレスなコラボレーションを可能にする。
電子医療記録(EMR)は普及してきているが、まだ必要なことがある。EMRは医療の改善やデータのやりとりを前提に設計されているが、各記録をつなげるレイヤーがまだ欠如している。医療提供者は相変わらず電話やFAXでコミュニケーションを取っている。患者も個人の医療履歴を病院の予約の度に持ち歩いたり、記憶を頼りに伝えている。
しかし、私はヘルスケアに起きるだろう次世代のイノベーションの見通しは明るいと考えている。EMRの上を横断するアプリができるだろう。EMRは「閉鎖的」であるべきだと多くの人は考えているが、サードパーティーのソリューションと上手く連携することができると証明した者もいる。Athenahealthはその内の一社だ。彼らは外部のアプリとEMRを連携させた先駆者だ。更には、医療提供者のパートナー向けのサードパーティー・ソリューションのマーケットプレイスを構築している。
アプリがiPhoneをタクシーを呼んだり、心拍のモニタリングをしたり、食料品の配達依頼をしたりするツールに変えたようなことがEMRでも起きる。EMRの上に広がるアプリは、医療提供者が自身のワークフローを管理し、情報共有を円滑にすることで、患者に遅滞なく整った医療を提供することが可能となる。インターネットに接続したヘルスケアのテクノロジーで最も重要な部分は、医療関係者同士のコラボレーションが可能になることだ。
医療提供者のコラボレーションは医療のどの分野においても重要なことだ。しかし、行動習慣の健康管理(メンタルヘルス、そしてアルコール依存などの物質使用障害)の分野においてもそれは揺るぎない事実だ。コラボレーションの欠如がもたらすコストは非常に高くなる。その理由は、多くの場合、人の行動習慣の状態と身体の健康状態が密接に関連しているからだ。
いくつかの企業は、スマートフォンで行動の変化を検知する方法を開発した。行動の変化からユーザーの精神状態について多くのことが分かる。
最近の研究で、喘息を持つ人がうつ病を発症する確率は2.5倍になることが分かった¹。別の研究では、タイプ1と2の糖尿病患者は、生涯の内に大うつ病を患う確率が2倍高いことを示唆した²。
他にも多くの証拠が、行動習慣の状態と身体の健康状態が相互に関連することを裏付けている。身体的な疾患はメンタルの不調を引き起こすことがあり、メンタルヘルスの悪化は病を発症するリスクを高めるのだ。
慢性的な病の患者で、更に行動習慣上の疾患を持つ者はヘルスケアシステムに大きな影響を与える。医療費にかかる金額は、行動習慣に問題のない同様の慢性病の患者より平均で50から175%以上増加する。これは患者にとってもヘルスケアシステム全体にとっても負担となる。また、現在アメリカにおけるうつ病と認められるケースの半数近くは治療を受けていない。プライマリーケアの場面で病に気づき、指摘された場合でも、診断が混同される場合もある。
一方、私たちの研究分析では、行動習慣分野の医療提供者から治療を受けた患者の場合、総額の医療費は最終的に低くなることが分かった。またMillimanは、身体面の医療と行動習慣のヘルスケアサービスを統合した商業マーケットには年間で合計1620億ドル規模のビジネス機会 があると予測している。重要なことは、業界がテクノロジーの力を借りて、フィードバックのあるコラボレーションを促す時が来たということだ。
メンタルヘルスの治療を求める患者はこれまで高額で手続きが面倒な上、偏見の目で見られるシステムを利用しなければならなかった。しかし、遠隔医療のイノベーションが市場の力学を変えている。1DocWayは、遠隔の精神医療のプラットフォームをブラウザベースで提供し、イノベーションを促進している。
ウェブカメラとインターネット接続さえあれば、患者はプラットフォームにアクセスしてメンタルヘルスの医療提供者とつながることができる。患者が望む形で、彼らが最も安心できる環境から利用できる。また、医療環境が整備されていない場所や郊外のコミュニティーにいる患者にとって、そもそも治療を受ける術がないということが問題で、それが医療を受ける際の障害になっていた場合が多い。
また、医療提供者の視点からも、テクノロジーを採用するコストはその効果に見合うものだと言える。サウスカロライナ州のメンタルヘルス部門でジェネラル・カウンセルを務めるMark Binkleyは、US Newsに多くの緊急救命の患者は、対面で精神科医とのコンサルティングを行うまで、そこに留まることが許可されることについて詳しく説明した。
どの緊急救命医に尋ねても、これは大きな課題であると答える。この問題を解決するためにサウスカロライナ州は、インターネットで精神科医との面会を行うリアルタイムの診察を導入し、成果を上げてきた。これまで2万2000回の診察が行われ、参加病院の医療費の累計削減額は、患者の一つの病の治療につき1400ドルになった。また多くの場合、実際の面会より、遠隔医療の方が患者の満足度が高いことが分かった。
他にも多くの証拠が、行動習慣の状態と身体の健康状態が相互に関連することを裏付けている。
もう一つ、行動習慣のヘルスケアテクノロジーで進化した部分はツールだ。スマートフォンのアプリ、ウェアラブル端末、オンラインの自助コミュニティーなどが挙げられる。患者はこれらを利用することで、自分の行動習慣の状態と慢性的な疾患の健康状態を管理することができるようになった。認知行動療法(CBT)は、これまで面会する形式のセラピーを行ってきたが、myStrengthのような企業は近年、この治療法をコンピューターからでも利用できるようにした。
CBTは、患者に自身のネガティブな思考や行動を認識して再構築する技術を教えるもので、うつ病、不安や不眠症の改善に高い効果を発揮する。病への偏見や地理的な理由で対面での治療を躊躇していた患者は現在オンラインCBTといった治療に向かっている。多くの保険会社もこれらの治療法に対応し始めている。
いくつかの企業は、スマートフォンで行動の変化を検知する方法を開発した。行動の変化からユーザーの精神状態について多くのことが分かる。Ginger.ioは、動き、テキストや電話のやりとりのパターンといった情報をユーザーのモバイル端末のバックグランドで収集 する。その情報から、特定のメンタルヘルス障害につながる危険性のある行動を検出することができる。
例えば、ユーザーが他の人と連絡せずに孤立するパターンを示したり、何日か続けて仕事を休み自宅から離れなかった場合、会社はその人がうつ病のリスクに晒されていることを検出できる。それを元に、治療のために適切な処置ができるように介入することができる。
特定の市場に向けた電子健康記録(EHR)システムの登場により、行動習慣のヘルスケア提供者はテクノロジーの恩恵を受けている。行動習慣の医療機関は、他のプライマリーケアを提供する医療機関とは異なるワークフローで運営しているため、既存のEHRのベンダーはこの分野の医療従事者のニーズを満すほどには成熟していなかった。Qualifactsといった企業は、行動習慣医療に特化したEHRのソリューションを牽引し、メンタルヘルスケアの対応や医療サービス管理の市場に変化をもたらしている。
簡単に言えば、医療が価値を主軸とした方向に転換することで、ヘルスケアのステークホルダーは、医療機関が協力しないがためにかかるコストを受け入れることができなくなったということだ。遠隔医療のソリューション、モバイルアプリ、EHRといった行動習慣向けのテクノロジーがそれぞれをつなぐことになるだろう。
中核となるシステムを設置し、絶えず進化を促していくことで、テクノロジーは医療システムが患者と向き合う方法を再構築する強大な力となるだろう。行動習慣上の健康と慢性疾患の治療のためのマネジメントは今に統合することになる。患者の生き方、そしてそれぞれの組織は、それを必要としている。
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