タモリが自由気ままに街をブラブラ散歩する番組『ブラタモリ』(NHK総合、毎週土曜夜7時30分〜)。派手な演出もなければ、人気芸能人が次々と出てくるわけでもないのに大人気となっているこの『ブラタモリ』の裏側を、チーフ・プロデューサーの中村貴志さんに教えてもらった。
──現在放送中の『ブラタモリ』の新シリーズでは東京だけでなく、全国の街を回っていますが、ロケ地はタモリさんの希望もあるんですか?
中村:タモリさんが選ぶわけではないです。タモリさんは、どんな場所にでも行きたいとおっしゃるので比較的こちらにお任せいただいています。それで、ロケ日が近づいた所で「次は○○に行きます」とお伝えするという感じですね。
──ロケ地を選ぶ基準は?
中村:一応タイムリーな場所に行こうと思っています。「やっぱり夏なので軽井沢行きたいよね」といったように、単純に旅の要素も強いですね。なので、視聴者のみなさんが行きたくなるような場所を選びたいと考えています。たとえば、8月1日放送回の島根県松江市などは、7月に松江城が国宝になったばかりだったということもあって選びました。タイムリーな場所や今話題の場所にタモリさんが行って、普通の旅番組ではない視点でその街の魅力を掘り起こしていけたらいいと思います。
──『ブラタモリ』といえばカメラ使いも大きな特徴だと思います。
中村:今も担ぎのロケカメラ1台と、「タモカメ」という棒の先についたカメラの2台で撮っています。「タモカメ」は、手動ですけど結構伸び縮みしますよ(笑い)。
──結構スタッフの方々も映り込んでいますよね。あれは意図的にやっているのですか?
中村:いや、もう映ってしまうのですよね(笑い)。本編のカメラに映り込んでいないと思っていても後ろにいるタモカメには映ってしまったり、スタッフが同行する限り、必ず映り込んでしまうんですね。
──台本というものはあるんですか?
中村:スタッフ間では、きちんと決めて収録に臨んでますが、タモリさんには台本のようなものは一切渡していません。だからタモリさんはどんなテーマのロケなのかもよくわからない状態で収録に臨んでるんです。そして、「タモテバコ」に入っている巻物を見て、タモリさんは初めてその日のロケのテーマを知るんです。
──「タモテバコ」は、新シリーズからの登場ですよね。
中村:番組をわかりやすくするためのアイテムだと思っています。ただブラブラするだけの旅もいいですが、“旅のしおり”のようなものがあれば、目的意識を持つことができると思うんですよ。そういう意味で、「タモテバコ」があることで番組の方向性も見えやすくなると思います。
ロケ開始時点でタモリさんも「タモテバコ」の内容を知らないので、そういう意味では視聴者のみなさんとまったく同じ状態だといえます。もちろん、タモリさんは物知りな方なので一般常識としてその土地についていろいろとご存知です。でも、そんなタモリさんでも知らないような情報を先生などが少しずつ解説していく。そうしてタモリさんが知識を積み重ねていくのを、視聴者も同じように体験できるというわけです。
──同行されている桑子真帆アナは台本を読んでいるんですか?
中村:桑子アナにも、全く見せてません。おそらく桑子アナは完全に視聴者と同じ感覚だと思います。桑子アナがわからないことは、視聴者の方も難しいと思うことであって、視聴者のみなさんが置いてけぼりにならないように、桑子アナにはどんどん質問してほしいですね。
──ちなみに、収録のスケジュールはどんな感じなのでしょうか?
中村:だいたい1日で番組1本を収録します。朝の9時くらいに「タモテバコ」のシーンを撮影して、そこから4か所から5か所を回ることが多いですね。適宜休憩を取りながら、夕方くらいにロケは終了します。
──番組ではほとんどグルメが出てこないですよね?
中村:ぼくは個人的にはあってもいいと思いますけどね。でも、タモリさんがあまりグルメには興味がないとおっしゃっていますからね。そのロケに必然性があれば入ってきますが、あえてグルメを入れることはしない予定です。
【ブラタモリ】
NHK総合。毎週土曜19時30分~20時15分。街歩きの達人・タモリが、ブラブラ歩きながら知られざる街の歴史や人々の暮らしに迫る。2008年12月に単発番組として放送したところ、好評だったため2009年10月よりレギュラー化し、半年ごと2012年まで放送。今年4月に3年ぶりにレギュラー番組として復活した。10月3日の放送では、地元・福岡でブラブラ歩きする。