今月9日、株式会社オーシーシーが破産開始決定を受けた。なお、負債総額は4,260万円……と、何のことだかよくわからない話かもしれないが、実は同社、かつて秋葉原でアニメ専門の映画館を運営していたのだ。
もともとは独立系ミニシアターの支配人だったという千田浩司氏が、自身の経験をもとに2004年5月、秋葉原に世界初のアニメ専門の映画館「秋葉原オリエンタルコミックシアター」をオープン。
“オタクの聖地・秋葉原”で、“世界初のアニメ専門の映画館”ということで期待され、オープン当日は気合いを入れて、TYPE-MOONの人気ゲーム『月姫』を原作とするアニメ『真月譚 月姫』をマラソン上映。その後も最新TVアニメなどの上映を計画していたが、観客を継続的に集めることができず、オープンからわずか半年で閉館してしまった。そして、05年8月に商号を株式会社オーシーシーへ変更したものの、そのオーシーシーもついに破産へ……。
破産開始決定のニュースを受け、アニメファンからは「そもそも存在を知らなかったんだけど」「宣伝不足だろ、明らかに」「もっと宣伝してくれよ!俺、知らなかったぞ」といった声が多く上がった。肝心のアニメファンが存在を知らないのだから、潰れてしまうのは当然かもしれない。
また“『真月譚 月姫』マラソン上映”というのも、アニメファン的には疑問を感じるポイントらしい。「吹くわ」「何でよりによってそれやねん!明らかにマーケティング知らんだろ」「経営陣がオタ業界のことを全然知らないということだけはわかった」「古い名作アニメ映画の24時間マラソンとかにしろよ」と、チョイスミスを指摘する意見が散見された。
確かに『真月譚 月姫』は03年の放送当時から、「設定変更が酷い」「原作に対してボリュームが少なすぎる」「アニメのオリジナル展開が多すぎる」と、原作ファンから酷評された作品だ。劇場運営のカギを握るオープニング作品が、なぜ『真月譚 月姫』だったのか。疑問は残るが、話題にしているうちに怒りがぶり返してきたのか、TYPE-MOONファンの関心は“世界初のアニメ専門の映画館”破産から、いつの間にか話題は『真月譚 月姫』へと飛び火。
「つうかアニメ化なんてしてないし」、あるいは「弓塚ルートはよ」と、作中で不遇な扱いを受ける弓塚さつきの“幻の弓塚さつきルートノーマルエンド”をアニメで求める声、「『月姫』もufoで作ってくれ!」「ufoでやるのが一番」と、アニメ制作会社ユーフォーテーブルによるリメイクを懇願する声が改めてあがっている。これはTYPE-MOONの奈須きのこが原作の伝奇小説、『空の境界』の連作アニメ映画化、TVアニメシリーズ『Fate/Zero』、『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』を、ユーフォーテーブルが手がけたのを受けてのこと。今やTYPE-MOON作品はさまざまなメディアで幅広く展開され、名作・人気作となったコミックや小説も多いが、やはりファンたちにとって、初期の代表作『月姫』への思い入れは強いようだ。
なお、秋葉原オリエンタルコミックシアターの閉館理由を、東京商工リサーチの担当者は“アニメファンは自分でアニメDVDを所有しているケースが多いため”と分析しているらしい。このコメントにも、アニメファンからは突っ込みが殺到している模様。ちなみに、ユーフォーテーブルが運営する「ufotable CINEMA」(徳島県・徳島市)は、自社製作アニメを中心に、人気アニメや特撮作品の上映などで、人気を博しているようだ。