歯も爪も毛もない「無毛のファッションモデル」 ― 独創的な異型の美 | ニコニコニュース

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TOCANA

 海外のメディアが、重度の遺伝子疾患に悩まされながらも活動を続ける、異色モデルに注目している。

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■障害、中傷、虐待......苦難の日々

 メラニー・ガイドス(Melanie Gaydos)さんは、生まれながらにして難しい障害を抱えていた。

 それは、外胚葉形成異常(がいはいよういけいせいしょう)といい、皮膚、毛、爪、汗腺などに関連する遺伝性疾患の総称だ。そのため、彼女の頭や顔面には体毛が見当たらず、口内には、たった数本の乳歯があるだけで、永久歯が生えることもない――。

 また、外見に現れないところにも障害の影響は及んでおり、彼女の体内では軟骨や小さな骨が異常に発達しており、角膜は部分的な失明状態にあるという。メラニーさんは成長の過程でこのような身体の異変に対処するため、これまでに少なくとも30回を超える手術を重ねていた。

 また困難は障害だけではなかった。心無い人々から相次ぐ中傷や、アルコール中毒だった保護者の虐待に苦しんだ壮絶な過去を、彼女はメディアのインタビューに対して語っている。

「このまま大きくなって、18歳(成人)を迎えることはないだろうと考えていました。自殺しようと思っていたわけじゃありません。だけれども、年を重ねてゆくうちに、いつか私は自殺してしまうだろうと考えていたんです」


■人生の転機

 メラニーさんの人生に光が指したのは、ファッションモデルという天職にめぐり合ってからだ。モデルになることは、彼女にとって長年の夢でもあった。

「いつだって大きな魅力にとりつかれていました。看板や映画のスクリーンに登場したかったんです」

 ニューヨークに移り住んでモデルとしての活動を開始した彼女は、ドイツのヘビーメタルバンドであるラムシュタイン(RAMMSTEIN)のミュージックビデオに出演し、その後大きな成功を収めることとなった。

 彼女の容姿についての印象を最も端的に、かつ悪意に基づいて表現するならば、"醜怪"という表現を用いざるを得ない。事実、ロシアの新聞が発表した『TOP25 醜い有名人ランキング』の中に、彼女の名前が含まれていた。

 それにもかかわらず、メラニーさんがモデルとして評価を受けた背景には、彼女の容姿に宿る独創性が影響しているという。

 メラニーさん曰く、「山ほど仕事をこなしつつも、ステレオタイプに飽き飽きしていたファッションフォトグラファーたち」が、最初に彼女に対して興味を示した。美術学校に通いつつも、週末は撮影に明け暮れる日々。雪だるま式に彼女のキャリアは膨らんでいった。


■彼女の独創性――常識を超えた美

 衆目を集めることを目的としてビジネスを展開する人々は、しばしば常識とかけ離れた外見の演出に固執する。ファッションの聖地ともいえるパリのモデルたちは、極限のダイエットを通して、それを実現しようとした。

 そのひとつが、ひじや腰の骨が浮き出てしまうほどのダイエットを行った上での、普遍的な美や健康というものに逆行した外見の追求である。最高4万人が拒食症を患っているフランスではこうした風潮を戒めるため、「痩せすぎ」とみなされるモデルを雇用しているモデル事務所に禁固刑や罰金刑を科する法案を、今年4月に可決した。

 モデルたちを過度のダイエットに駆り立てるのは、衣装を提供するデザイナーたちの責任も大きい。大胆というよりも過度に絞られたカッティングの衣装は、棒切れのようにやせた人間でなければ着こなせない。さらに、モデルの足元を支える履物にしても、たった数十メートルの舞台の往復さえ難しくさせるような無茶なデザインの"芸術品"は珍しくない。

 ことの功罪はさておくとして、ファッションの先駆者たちが風変わりな外見に飢えていることは明らかだ。鑑賞者の好奇心を惹きつけることが、何よりも優先される世界なのである。

 メラニーさんは――決して幸運なことではないにせよ、無理なダイエットも撮影用の特殊メイクも必要とせずに、前衛性を志向する業界人が欲する素地をそなえていたわけだ。


■ありのままを愛するということ

 様々な事柄を経験した、メラニーさんは長年苦しんだ障害とも折り合いをつけつつある。

 それが、歯科矯正の一件だろう。今年の上旬、メラニーさんはある医療トークショーに出演したことがきっかけで、上下ともに綺麗に並ぶ"歯"を手に入れる機会に恵まれた。彼女ために、精巧な入れ歯が用意され、ショーに出演する医師たちの拍手の下、彼女は生まれて初めて、鮮やかな白い歯を輝かせて微笑んだ。

 しかし、番組が放送されてわずかに8カ月後、彼女はこの入れ歯を装着することをやめてしまった。入れ歯を装着することは、自分らしくないと考えたのだという。

「歯が無いのにどうやって食事をとっているの? と、人に聞かれることがあります。うーん、足が無い人だってマラソンをしますよね。つまり、考え方ひとつなんですよ」

 障害と無縁の肉体、あるいは別の人生が与えられると仮定しても、メラニーさんはそれを拒絶するという。

「皆さんが生きるうえで、自分の身体は最も素晴らしい居場所なんです。生きて行けるたったひとつの場所なんですから」

 メラニーさんは自らの活躍を通して、ありのままの自分を受け入れ、愛することの大切さを訴えている。

※画像は、YouTubeより