ほぼ1年のスパンで新型が発表されてきたiPhoneシリーズ。今年も9月25日に、世界12カ国で最新機種であるiPhone 6s/6s Plusが発売された。iPhoneシリーズ最新作に沸いているのは日本だけではない。国民の81.3%がスマホを所持し、スマホ普及率世界第4位であるお隣・韓国でも、iPhoneシリーズの最新作に対する期待度は高い。
韓国のスマホといえば、Galaxyでおなじみのサムスン電子のイメージが強いのだが、最近では、そのブランド力も崩壊気味だ。なんとか巻き返しを図りたいサムスンだが、世界のスマホ市場シェアに多大な影響を持つ中国市場ではすでにiPhone 6sの販売台数が1,000万台を突破する予想であり、苦境はまだまだ続きそうだ。
こうした苦境を乗り越えようとサムスンは、iPhone 6sの9月発売に先駆け、8月に最新機種Galaxy S6 edge+とNote 5の販売を開始。アップル社との全面対決に乗り出した。この対決の行方は、スマホ市場では大きな注目を集めている。ネット上でも、発売前から、両機種の機能面を比較するような話題が多く上がっていることは周知の通りだろう。
しかし、サムスンの苦境は、ホームグラウンドである韓国でも顕著だ。韓国国内で絶大なブランド力を誇ったGalaxyも、最近ではiPhoneに押され気味。実際、昨年10月までは、韓国でのiPhoneシリーズの市場シェアは15%にも及ばず、サムスンによるスマホが60%以上を占めていた。
だが、iPhone 6が昨年10月に発売されると、その月のスマホ市場のシェア率に大きな変化が。なんと、iPhone 6の市場シェアが33%と大幅に上昇する半面、サムスン製のスマホは46%にまで落ち込んでしまったのだ。
ちなみに、韓国スマホ産業で海外企業が市場シェアの20%を超えたのは史上初のこと。これまではサムスン製のスマホが50%以上を独占していただけに、iPhoneシリーズの躍進が同社に大ダメージを与えたことは間違いない。
昨年、iPhone 6が大幅な躍進を遂げた裏には、サムスンが同年に発表したGalaxy S5の不振が大きかった。S5の販売台数は、好評だったS4の販売台数4,600万台に届かないばかりか、12年に発売したSIIIの3,250万台にすら達していない。韓国人ユーザーの酷評も多かった。
「デザインも性能も、これといった目新しいものがない」
「何も驚くような点がなくて、Galaxy S5には失望した」
ユーザーの意見の多くに見られたのは、「進歩のなさ」を非難する声だ。これは、国内シェアの半数以上を独占していたことによる怠慢だと思われても仕方ない。一部からは、サムスンはアップルの物真似をしてシェア1位になったが、先頭に立ったことで真似をする相手がいなくなったとの陰口も聞こえてくる。
こうした問題提起にサムスンの経営陣は、一から出直すことを決意。「プロジェクト・ゼロ」を立ち上げ、今年3月にはデザインなどを一新したS6の販売台数向上に努めたが、結果として販売数は低い水準での回復にとどまっている。一度失った人気を回復するのは並大抵のことでなく、ライバルであるiPhoneの力が大きすぎるのも原因といえるだろう。
今回のiPhone 6sの発売は、韓国スマホ市場のパワーバランスを揺るがす結果になるとの見方も少なくない。サムスンの未来を占う上でも、iPhone最新作に注目したい。