9月19日(土)から12月23日(水・祝)まで、東京都文京区にある美術館・永青文庫にて、ユーモアあふれる性風俗の浮世絵を集めた「春画展」が開催されています。
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本展は、大英博物館での開催をはじめ、海外で高い評価を得ていたものの、過激な性的な表現を理由に日本における開催が見送られていたことでも話題となっていました。
待望の日本初開催となる今回は、18歳未満の入館は禁止という制約のもと、イギリスの大英博物館やデンマーク、さらに日本の美術館や個人コレクションから集めた、芸術性の高い名品133点を展示。
人の手によって描かれる「肉筆」をはじめ、大名歌の作品が数多く残された「版画」、庶民にも広く愛された「豆判」などが、5つの章にわたって紹介されています。
本格的な春画展、日本初開催へ
「春画展」は、これまでフィンランド、スペインをはじめ欧州の各地で開催。イギリス・ロンドンの大英博物館では「春画 日本美術における性とたのしみ」展として開催され、多くの来場者から好評を博しました。
しかし、春画の生みの親であるはずの日本では、本展を開催できる会場の確保が困難を極めたそうです。書籍や雑誌としては市場に流通していて、複製品であれば無修正でも出版は可能であるのに対し、オリジナル作品は鑑賞出来ないという奇妙な状況になっていました。
そうした中、東京・目白台の一画に建つ、元内閣総理大臣である細川護煕さんが現理事長をつとめる細川家所有の美術館・永青文庫にて、国内初の開催が決定。9月19日(土)から11月1日(日)までの前期と、11月3日(火・祝)から12月23日(水・祝)までの後期、全2期にわたって行われる運びとなりました。
プロローグ、肉筆の名品
本展の導入部にあたるプロローグでは、春画展開催にあたっての挨拶と、男女が愛を交わす以前の2人の触れ合いを描いた作品数点を展示。複数の絵で1つの作品を構成するものもある春画の中で、最初に描かれる控えめな表現の作品が集まっています。
モダンな雰囲気の廊下を抜けると、人の手で描き出された肉筆の作品が並ぶ大広間へと続きます。
鎌倉時代に制作された春画のほか、室町時代の末期から江戸時代初期にかけて、徳川将軍や大名家に仕えた狩野派の作品なども展示。
男女の大らかな性愛文化を描いた絵巻や屏風作品、そして同姓愛、妖怪画など、百花繚乱の名品が並び、性にオープンだった当時の大衆文化の背景を感じることができます。
版画の傑作
階段を降りて登場するのが、版画作品の傑作を集めたフロア。
鈴木春信さんや月岡雪鼎さん、鳥居清長さん、喜多川歌麿さん、葛飾北斎さんといった日本が誇る浮世絵師たちによる作品をはじめ、庶民から大名まで広く愛された作品の数々が展示されています。
中には、医学書や解剖図、世界図、歌舞伎など多種多様なジャンルのパロディからなる春画まで登場し、浮世絵師たちの旺盛な創作意欲を垣間見ることができます。
豆判の世界
さらに階段を下りた第1展示室に展示されているのが、縦9センチ、横13センチ弱の版型「豆判」の作品。豆判は、膨大な数が制作されたことでも知られ、研究もほぼ手つかずと言われている作品群。展示されている作品はすべて今回が初公開となり、貴重な作品の数々が並んでいます。
入ってすぐの中央部にそびえる柱には、色鮮やかに描かれた豆判作品が展示。現代でいう「ポケットサイズ」の版画となっており、大判の錦絵作品を縮小したものも含まれています。
そのまま展示室の中を進むと、本展の締めくくりともいえるエピローグのコーナーへ。ここでは、展示の最後に、会場である永青文庫が所蔵する桃山時代の肉筆画巻と、江戸時代後期(天保6年)頃の判本が展示され、春画が長い日本の歴史の中で人々とともにあったことがわかる構成になっています。
春画が描かれたポップなグッズも登場!
入り口を出て向かい側にある第2会場では、春画をモチーフにしたグッズも販売。
過激な描写部分が胸のポケットで隠されたTシャツや、表は控えめな男女の触れ合いを描き、中には大胆な交合図が入ったトートバックや男性用トランクスなど、粋なデザインのグッズが数多く展開されていました。
Tシャツやトートバックは、会期中に異なるデザインのものが順次展開されていく予定とのことなので、行く度に違ったデザインが楽しめそうです。
そして、販売所で一際存在感を放っていたのが、本展の作品はもちろん、春画の歴史や情報を事細かに紹介した展覧会図録。中身の充実度はもちろんですが、展示用につくられたというポップな包み紙にも注目してほしいところです。
今後は、10月10日(土)には「江戸文化と春画」をテーマにした講演会、11月28日(土)には「春画展開催記念シンポジウム」が行われるほか、11月7日(土)と12月5日(土)には着物を着て来場すると男女問わず入場料が800円になる「着物DAY」も開催されるなど、より春画を身近に感じられるイベントも予定されています。
作品は、前期・後期と作品を順次入れ替えながら展示されていく予定。日本の文化である「春画」に日本で触れる貴重な機会となっています。