恋愛したくない若者たち!7割は恋人なし「面倒、デート疲れる…」 | ニコニコニュース

内閣府「少子化社会対策白書」より
Business Journal

 9月末、筆者の新刊『恋愛しない若者たち ~コンビニ化する性とコスパ化する結婚』(ディスカヴァー21)が出版される。テーマは「恋愛しなくても、結婚はできる!」。実はここ数年、20代男女から、「恋愛は面倒」「コスパに合わない」との声をよく聞く。一方で、9割の若者は言うのだ。「いつかは(恋愛)結婚したい」と。

 この矛盾を解消するためには、「結婚に恋愛は要らない」と、いったんスパッと切り離して考えるしかない。それが本書を執筆したきっかけだった。

 現在、20代の7割が「恋人ナシ」だという。複数のデータで確認してみよう。

 まず、ブライダル情報などを提供するリクルートマーケティングパートナーズの2014年調査によると、現在「交際相手ナシ」の20代は、女性で60%、男性では76%。両者平均で7割に及ぶ。

 また、結婚相談所オーネットの今年の調査で「20歳」の時点だけ切り取るとさらに少なく、女性7割強、男性8割弱は、彼氏・彼女がいない。恋人ナシは、堂々のマジョリティだ。

 これが30年前、「恋愛至上主義」に浮かれたバブルの時代ではどうだったか。

 国立社会保障・人口問題研究所の調査では、バブル予兆期~最盛期にあたる1982年、87年の段階で、若者の「恋人ナシ」(18~34歳)は、女性の35%、男性の43%しかいなかった。裏を返せば、6~7割の男女に彼氏・彼女がいたわけで、今とはほぼ真逆だったわけだ。

 さらに、以前は「恋人ナシ」の男女のほとんどが、「彼氏、彼女がいたらいいのになぁ」と考えていた。クリスマス前になると焦って恋人探しをしたのも、ひとえにそのせいだろう。

 たとえば、2000年。わずか15年前の時点でも、20歳男女のなんと9割が、「恋人が欲しい」と答えていたのだ(00年/オーネット)。

●「恋愛スルー」の現在の20代

 ところが、である。これに対し、今の若者達の驚くべき「恋愛クール」ぶりが明らかになった。

 それが、今年発表された内閣府の「少子化社会対策白書」。ここで、未婚で恋人がいない20代男女の、なんと約4割が「恋人が欲しくない」と回答。さらにそのうち、男女とも半数近く(45%前後)が、「恋愛は面倒」だと答えたのだ。

 08年、私は消費や恋愛に慎重な「草食系男子」に関する本を書いた。ただ、最近は男子以上に、女子の恋愛クールぶりが顕著なのである。先のオーネットの調査でも、「恋人は別に欲しくない」と考える女性(20歳)は4割で、男性の35%を上回り、過去最悪の数値を記録した。

 なぜ、男子だけでなく女子までが、「恋愛は面倒」「できれば無視したい」と、すっかり「恋愛スルー」になったのか。取材してみると男女から、こんな言葉が飛び出した。

 ・「告白って、なんか本気すぎて怖い。『メンヘラ』(精神障害)って感じ」


・「恋愛自体、恥ずかしい。『ネタ』っぽい」
・「デートって疲れる。お金や時間考えると、コスパに合わない」
・「恋人? 別に要らない。ほかに楽しいこと、いくらでもありますから」

  初めは、「本当は彼氏、彼女が欲しいのに、強がりを言っているのかな」と思った。そこで、「ほかに楽しいことって、ナニ?」と聞き返すと、返ってきたのは次のような答えだった。

・「嵐のDVD観るでしょ、友達とショッピング行って、フェイスブックでつぶやくでしょ」
・「AKB(48)のブログチェックや、ネトゲ(ネットゲーム)かな?」
・「ひたすら、LINEで『ツムツム』(ディズニーキャラクターのぬいぐるみを消すパズルゲーム)か、『恋アプ』(ボルテージの、恋愛ドラマアプリ)にハマる!」

 聞けば、なるほど確かにどれも楽しそう。

 私も以前、AKB48のファンを半年間取材したことがあるから、彼女達のブログやSNSにどれほど胸ときめくかは知っている。また、女子が軒並みハマる「恋アプ」も、リアルの男子は絶対に言ってくれなそうなセリフや、「壁ドン」「あごクイ」「頭ポンポン」など、瞬時にキュンとなるシーンが満載だ。

 ハッキリ言って、リアル恋愛はこんなに夢を与えてくれない。特に今の20代は、情報番組や恋愛サイトに慣れた世代で、「恋愛なんて、所詮はこんなもの」という現実も、子どもの頃からイヤというほど見聞きしてきた。

●「チラリズム」がなくなり、恋愛や性行為への憧れが消滅?

 ではバブルの時代、男女はなぜあれほど「恋愛」にこだわったのか。

 私は現40代半ば、「いかにも」なバブル世代だ。思い起こせば20代前半のころ、大学生~社会人1、2年生だった時代(90年代前半)は、ケータイもなければインターネットもない、ゲームも今より遥かにしょぼかった。

 いうなれば、恋愛やデート、せいぜいサークル活動ぐらいしか「楽しいこと」がなかったのだ。

ところが、今の20代は“デジタルネイティブ”で、多くは子どもの頃から、ケータイやネット環境に囲まれて育った。日本初のキッズ用ケータイ(PHS)「ドラえホン」(当時、NTTパーソナル)の登場が98年、ウィンドウズ98の発売も同年。幼い頃から、電話やメールで、いつでも誰かと直接連絡を取れるのが「当たり前」だったのだ。

 その後、さらに便利な時代にはなったが、同時に失われてしまったものもある。恋愛でいえば、「チラリズム」もその一つ。

 昔は、異性の裸体やセックスに興味はあっても、子どもの頃に目にするのは難しかった。見たい、知りたいのにわからない。AVだって、大人になってレンタルビデオ店で身分証明書を見せなければ、借りることができない。そのジレンマが、以前は思春期特有の「恋愛へのワクワク感」を刺激していた。

 マーケティングでは、これを「ツァイガルニク効果」と呼ぶ。人間は完全なものより、「見えそうで見えない」など不完全なもののほうが心に残りやすい、との研究結果(旧ソビエト)もある。テレビ番組で「続きは30秒後」などと一旦CMに入るのも、この手法だ。チラリズムも同じだろう。

 だが今回の取材では、10代のころ、ケータイやパソコンで「エッチな画像」を見てしまったことで、セックスへの憧れを失った男女が大勢いた。

・「中学生の頃、(ケータイ電話の)変なボタンをクリックしたら、いきなり女性の裸がバーッと出てきた。いやらしいポーズばっかりで吐き気がした」
・「小学生のとき、父親のパソコンでインターネットを見ていたら、男女のセックス画像が現れてビックリした。表情が気持ち悪くて、なんかコワいと思っちゃった」

 そして、14年に発表された日本性教育協会の調査では、若い男女の「セックス嫌い」に通じる、さらに驚くべき事実が判明したのだ。これについては、次回詳細に見ていきたい。
(文=牛窪恵/マーケティングライター、世代・トレンド評論家、有限会社インフィニティ代表取締役)