税務調査に来た若い税務署員と意気投合した話 | ニコニコニュース

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皆さんは自分の勤めている会社に、税務署から「税務調査」が入ったことはありますか? 経理部に配属されている人ならそんな経験を持っているかもしれません。税務調査に来られると、特に後ろ暗いことがなくても嫌なものです。今回は「税務調査」にまつわる話です。

K氏は、小さな編集プロダクション会社の社長でした。たまたまご縁があって、某大手通信キャリアから大きな仕事を受注し、その年は売り上げが3億円以上も立ってしまいました。決算のときに税理士の先生から「このままだとまずいですよ。税務調査が来るかもしれません」という話があったのですが……。

税務署というのは、急に売り上げが上がった企業を見逃さないそうです。また、だいたい3年に1回は税務調査がやって来ると思っていないといけないとか。

……果たして、その次の期、税務調査がやって来るという連絡がK氏の元にあったのです。税理士に相談したところ、

「もちろん私も立ち会います。危ないところはないと思いますが、さっさと帰ってもらいましょう。お茶なんか出さなくてもいいですよ。資料が見にくいように、腰が沈んでしまうようなソファに座らせましょう」

などという頼もしい返事でした。

当日やって来たのは、若い税務署員とベテラン風の年配の署員でした。眼光鋭いベテランのおじさんは、資料に目を光らせていますが、若い調査員はどこか所在なさげです。まだ経験値が低いためでしょう。

K氏は、ベテランから質問される以外は暇ですので、若い調査員とすっかり話し込んでしまいました。きっかけは当時話題になっていた、某金融会社の脱税事件です。

「それにしてもすごい金額ですね。新聞などを読んでいても具体的な手法がよく分からないのですが、後学のために教えてもらえないでしょうか」

とK氏は水を向けてみました。最初は、

「いえ別件なので詳しくは……」

などと言っていた若い調査員も、K氏がなだめすかしている間にすっかり冗舌になっていきました。最後には、

「こういった法の抜け穴を突いたような脱税は絶対に許すべきではありません。そのために私たちは仕事をしているわけです。税がきちんと徴収できないと国が回らないのです」

などと熱弁を振るう始末。税理士の先生も、ここを乗せてやれ!とばかりに自分の経験談を熱く語ります。税務調査の場は、すっかり「正しい税の納入とは? その方策」ディスカッションとなり、ベテラン調査員は口を挟めなくなってしまいました。

熱いディスカッションの間に時間は過ぎ、K氏と意気投合した若手調査員は「きちんとたくさん税を納められるように頑張って事業を続けてください」と握手して帰っていきました。ベテラン調査員が暗い顔だったのは言うまでもありません。


税務調査員が帰った後、税理士の先生がこう言いました。

「あの若いの、帰ってから怒られると思います(笑)」

(高橋モータース@dcp)