"古着の街"、"サブカルチャーの聖地"として有名な東京・下北沢。最近では、話題の最新グルメやオシャレなカフェの集まるトレンドスポットとしても注目を集めている。しかし、この街の魅力はそれだけではない。今回は、ちょっと意外な、素朴な下北沢の楽しみ方を紹介しよう。
○まずは"しもきた名物"「みそパン」を味わう
下北沢駅の南口を出ると、左右と正面に1本ずつ道が通っているのが見える。ゆるい下り坂になっている右側の道に入って、商店街を少し行くと現れるのが、ベーカリー「アンゼリカ」だ。レトロでこぢんまりとした佇(たたず)まいが特徴のこの店でぜひおさえておきたい商品が、"しもきた名物"と銘打った「みそパン」(170円・税別)である。
ゴマを練り込んだ生地にバターとみそのルーをかけた同商品は、深みとほのかな甘みのある素朴な味わい。「みそパン」という商品名ながら、みその主張はそこまで強くなく、小腹がすいたときに気軽に食べられる。
同店ではほかにも、「ちくわドーナツ 鯛みそ味」(160円・税別)などの一風変わった総菜パンや菓子パンがそろう。下北沢だけの味わいを求めて、週末には行列ができることも珍しくない同店。この街に来たら、一度は立ち寄っておきたい店だ。
●information
アンゼリカ
住所: 東京都世田谷区北沢2-19-15
○散歩のお供に大豆香るドーナツを
「アンゼリカ」のある商店街の坂を下りきり、左に折れてしばらく進むと、高架下を越えたあたりで「いっ久どーなつ 下北沢店」が姿を見せる。荻窪と下北沢に店舗を構える同店のウリは、屋号にもなっているドーナツ「いっ久どーなつ」(160円)だ。
同商品は、山形産の枝豆「秘伝豆」のおからと豆乳から1つひとつ手作業で作られており、風味豊かでほんのりと甘い。店がすいている時であれば、揚げたてを購入することもできる。
「いっ久どーなつ」の特徴は、持ち帰った後も、温め直して揚げたての味わいを楽しめることだ。オーブントースターで2分~2分30秒ほど温めれば、外はサクサク、中はフワッとした食感と、優しい香りが復活する。食べ歩くにも、おみやげにもぴったりのドーナツなのだ。ちなみに、おみやげには「いっ久どーなつ箱入り」(5個800円~)がおすすめ。
また、同店ではソフトクリーム「ソイソフト」(250円)や、8等分にカットしたドーナツの上にソフトクリームをのせた「ソイソフト&どーなつ」(400円)なども販売している。大豆の香りがほんのり漂う優しい味わいを楽しんでほしい。
●information
いっ久どーなつ 下北沢店
住所: 東京都世田谷区北沢2-7-5 下北沢プラッツビル1F
営業時間: 10:00~22:00
定休日: 年中無休
○「駅前広場」は穴場スポット
パンやドーナツを買ったら、食べ歩きつつカフェを目指してコーヒーを買ってみるのも良い。「STARBUCKS 下北沢店」や「やなか珈琲店 下北沢店」などのコーヒーチェーンのほか、「Bear Pond Espresso」といったこだわりのエスプレッソ専門店など、下北沢にカフェは数多い。自分好みの一杯を見つけてみよう。
天気が良ければ、下北沢駅北口を出てすぐの「駅前広場」でベンチに腰を下ろしながら、パンやコーヒーを楽しんでみるのもおすすめだ。駅近くの踏切跡を突っ切れば、広場までは「アンゼリカ」や「いっ久どーなつ」から歩いても5分とかからない。
「駅前広場」は広々とした空間に数個のベンチが置かれたシンプルな広場で、人でいっぱいになることはほとんどなし。日によってはイベント会場として使われることもあるが、休日になると狭い道は人でいっぱいになるほど賑(にぎ)わう下北沢の街にあって、この広場はひとつの"穴場"とも言えるだろう。
○天狗が守る「真龍寺」で過ごす静かな時間
さらに散歩を続けるなら、駅北口から徒歩5分ほどの「曹洞宗大雄山真龍寺(そうとうしゅうだいゆうざんしんりゅうじ)」まで足を伸ばしてみよう。同寺が本尊として祀るのは、「道了大薩○(どうりょうだいさった・○は土へんに垂)」。衆生救済を誓って天狗となったという言い伝えが残されている、室町時代の修験道の僧だ。
下北沢で毎年節分の時期に行われる「しもきた天狗まつり」は、この「真龍寺」が中核となっている。祭りの際に担ぎ出される高さ3m・幅2mの天狗面も同寺に安置されており、一見の価値ありだ。この寺も下北沢の街なかにあるとは思えないような静けさで、時間がゆっくりと流れるような空間を楽しめる。
街の見せる顔はひとつではない。"若者の聖地"というイメージのある下北沢でも、派手ではないが趣深い楽しみ方ができるスポットが数多く存在するのだ。秋の深まりつつあるこの季節、休日にはそんな街の歩き方をしてみても良いかもしれない。
※記事中の情報・価格は2015年9月取材時のもの。税別表記のあるもの以外、価格は全て税込
(諫山大樹)